其の496:深いテーマの娯楽作「藁の楯」

 ゴールデンウィークも終わりましたが・・・まともなテレビマンには関係なし(苦笑)。
 そんな中、三池崇史監督最新作「藁の楯 わらのたて」を観ました。絶賛上映中なので、ネタバレさせずにさくっと書きます!個人的にはこの映画好きだワ♪


 犯罪歴のある清丸国秀(=藤原竜也)は出所早々、少女を暴行した上、殺害する。彼女は元経団連会長で経済界の大物・蜷川隆興(=山粼努)の孫娘だった。病気で余命いくばくもない彼は全国紙の全面広告やインターネットサイトで「清丸を殺した者に懸賞金10億円を払う」と全国民に依頼する!それを受けて福岡に潜伏していた清丸は匿ってもらっていた男に襲われ、命惜しさに出頭。そこで警察庁上層部は日本警察の威信を守るため警視庁に移送する間、銘苅一基警部補(=大沢たかお)と白岩篤子巡査部長(=松嶋菜々子)を清丸の<SP>としてつけることにする。警視庁に移送するタイムリミットは48時間!警視庁捜査一課の奥村武警部補(=岸谷五朗)と神箸正樹巡査部長(=永山絢斗)と共に福岡に発った銘苅だったが、清丸の命を狙う人々が次々と現れる!果たして銘苅たちの運命はー!?


 「ビー・バップ・ハイスクール」で知られる漫画家&映画監督のきうちかずひろが本名の“木内一裕”名義で執筆した同名小説の映画化(→元々は自分の監督作品として書いたものが小説家デビューのきっかけとなる)。“護送もの”はハリウッド映画にもなくはないが、遺族たちにも焦点を当てた分、東野圭吾の「さまよう刃」に近いテイストだと感じた。<犯人に懸賞金を懸ける>アイデアは、メル・ギブソンの「身代金」でもあったけど。

 ホントに藤原竜也演じる男が最低最悪の奴で(劇中の言葉を使うなら“人間のクズ”)何度、スクリーン世界に入っていって殺してやろうと思ったことか(怒)!!警察サイドに生じる「人間のクズを守るために、何故命を懸けなければならないのか?」・・・職業倫理と人間としての率直な感情・・・そして各個人も様々な事情を抱えている・・・矛盾する深〜い要素(これも人類の永遠の命題のひとつかもしれない)を抱えながら物語は展開していく。

 <サスペンス映画>ながら多分に“アクションシーン”もあって、不特定多数の人々から清丸を守るために(ダミー車両含む)大量に導入されたパトカーの行進シーン(高速道路封鎖しての撮影)や新幹線内での銃撃戦等、日本映画にしてはすげー頑張ってる!なんでも新幹線はJRの許可が下りないので、台湾で走ってる新幹線を使ったとか。三池は元々アクション演出の上手い監督なんで、この辺りが主人公たちの行程も含めて最大の見所^^

 三池組初参加の大沢たかお松嶋菜々子(→ショートカットにしたのは今作の為)も役にハマってるし、藤原竜也は先述した通り、最凶のクズを怪演!三池版「十三人の刺客」の狂人の殿様(稲垣吾郎)といい、「悪の教典」のサイコパス教師(伊藤英明)といい、三池さんは“極悪人”の演技指導に長けているのかも(笑)。名優・山粼努の大物っぷりは言うまでもなかろう。

 リアルに言えばさ・・・いくら48時間のリミットはあるというものの、途中で飯も食わないし(笑:「ダ・ヴィンチ・コード」か)、誇張された描写もあるので、その辺りで評価が別れるかも。正式出品が決まったとはいえ、作品の性格上、今度のカンヌで賞までは獲れないとは思うけど、人間社会に生きる以上、皆がそれぞれ考えなければいけないことをテーマに持つ作品を創ったことは良いことだと思う。
 近年、漫画原作の恋愛ものやオフビートなコメディが邦画には多いけど、今作のような社会的深い&重いテーマを持つエンターテイメント作をもっと創って欲しいし、個人的にも観たいと思った。勿論、頭使わずに観られるハリウッドアクションも大好きだけどサ^^