其の288:「夕陽のガンマン」の真実^^

 いまホール(=俗にいう「パチンコ屋」)に新台として「CR夕陽のガンマン 荒野の仕掛人(すげー副題!)」が導入されていますが、もちろん元ネタの映画は「マカロニ・ウエスタン」の1本よん(作られたのは1965年!!で、このタイトルつけたのは故・水野晴郎センセ^^)。
 クリント・イーストウッドのCGキャラは雰囲気出ていますが(声優が無理矢理山田康雄の真似してるのには爆笑。似てね〜)彼以外のキャラ設定が全然違う(&巨乳の女賞金稼ぎとか出ないし)!
 さらに「大当たり」すると今作のテーマ曲(=作曲は勿論、言うまでもなく天才エンニオ・モリコーネ御大)以外に「荒野の用心棒」のテーマ「さすらいの口笛」や(苦笑)「続 荒野の用心棒」の「♪〜ジャンゴ」まで流れる訳のわからなさ!「続〜」はフランコ・ネロ主演ですから!!
 というわけで作り手が知っててやったのかどうかは定かではありませんが(21世紀だというのに、ホールに響く音楽だけは60年代)、年配の方と「マカロニ映画おたく」以外の人がこの台やったら、元の映画そのものも勘違いされそうなので急遽筆をとった次第!以下の内容が真実の「夕陽〜」だ!!

 
 凶悪殺人犯にしてマリファナ狂いの悪党インディオ(ジャン・マリア・ボロンテ)を捕まえるべく、射撃の名手で通称「大佐」と呼ばれる賞金稼ぎモーティマー(リー・ヴァン・クリーフ)と、若いながらも凄腕の賞金稼ぎモンコ(イーストウッド)はエルパソの街を訪れる。ひょんなことで出会った2人は、賞金の山分けを条件に共闘。インディオ一味に潜入すべく、ある作戦を決行するのだが・・・!?


 公開当初から今日まで「マカロニ・ウエスタンの最高峰」と称される本作。監督は勿論、前作「荒野の用心棒」で世界的大ヒットをおさめ、このジャンルの始祖になったセルジオ・レオーネである(=「荒野〜」以前から少数ながらイタリアはニセ西部劇を製作してはいたがヒットには至らなかった)。「荒野〜」が黒澤明監督作「用心棒」のパクリで東宝から訴えられた話は余りにも有名なので詳細は割愛するが、その大ヒットにもかかわらず大してギャラをもらえなかったレオーネが周囲の助言もあって(イーストウッドも「もう1本作ろう」と言ったそうな)今作に取り掛かった。
 ちなみに「荒野の用心棒」の原題は「一握りのドルのために」。そして今作が「もう少しのドルのために」ゆえ、邦題と異なり「夕陽〜」が「荒野〜」の正式な続編である(但しイーストウッドの名前は変更されている)。この後製作された「続 夕陽のガンマン/地獄の決斗(DVDはサブタイ略されてる)」の原題は「いい奴、悪い奴、ズルい奴」なのでホントは別物!この時代の邦題はややこしいんで御注意^^。


 アメリカに深い憧憬を抱いていたレオーネは低予算だった前作と異なり、潤沢な製作費を手にした事で本格的な西部劇製作を目指す。まず主演俳優陣にはイーストウッドに加え(=演技的にもビジュアル的にも前作を踏襲)さらにもう一人、本場アメリカ人俳優を雇うことを決意。ヘンリー・フォンダチャールズ・ブロンソン(「う〜ん、マンダム」)らに断られ(=後に「ウエスタン」で2人まとめて実現)リー・マーヴィンとは契約寸前までいったがポシャる(=「キャット・バルー」の撮影と重なったため)。
 困り果てたレオーネは「俳優年鑑」を見て、昔見たことのある俳優ークリーフにアポをとる。当時、彼は俳優業に見切りをつけて画家として暮らしていたものの、自動車事故のリハビリ中でもあり生活は困窮していた。そこでレオーネはアメリカへ飛び、クリーフに現ナマを見せてローマに呼び出した(笑:でもホント)。当然、身体の具合が思わしくないので動きがスローなのだが、これが逆に貫禄たっぷりに見えたのだから人間なにが功を奏するのか分からない(笑)。
 

 悪人のボス役にはイーストウッド同様、前作に続いて登板したジャン・マリア・ボロンテ。演技派として知られ、かつ社会派作品の多い彼にとってこのインディオ役はーあまりにも凶悪で本当はやりたくなかったのでーめちゃめちゃオーバーな演技した。困ったレオーネはNG出しまくって、彼がヘトヘトになったテイクで(=演技が大人しくなる)OK出したそうな。いま彼のマリファナ吸ってラリパッパする場面は・・・映像的にも表現がオーバーでウケる(=マリファナ経験のないレオーネが想像で演出したせい)。


 「凄腕ガンマン2人」プラス「凶悪犯集団」の人物配置に、マカロニに欠かせない要素ー金、復讐、リンチにドンパチ(今作では爆破もあり)を盛り込んだストーリー、スケールアップした美術(リアルな街並みに鉄道まで)・・・「イタリア製のインチキ西部劇」と揶揄された部分がしっかり構築されていたのでアメリカでも「レオーネ作品だけは違う!」と別格扱いされることとなる。そういうところより、むしろ銃撃戦で「銃口むいてないところの人も倒れる」というデタラメさがいいと思うけどな〜^^


 公開された映画はまたまた大ヒットを記録!レオーネは今作で「顔を風景のようにアップで撮る」ほか独自の作風を確立、以後ますます本格路線を追及していく(=「続 夕陽〜」では南北戦争も再現)。そしてクリーフは今作の演技が高く評価され(=主役を食ってしまった)マカロニ作品には欠かせない俳優のひとりとなった(「続 夕陽〜」でもイーストウッドと共演)。肝心の主役イーストウッドも3本目の「続 夕陽〜」に出たあとはアメリカへ凱旋帰国。その後の活躍(監督業含む)はご存知の通り。


 とまぁ、長々と書きましたが(個人的にはレオーネの最高傑作は1968年の「ウエスタン」だと信じて疑わないけど)映画「夕陽のガンマン」は面白い!パチンコ台にはそのほんの一旦が入っているだけなので勿体ない気がしますわ。でも「大当たり」すると何故かローリング・ストーンズの「サティスファクション」や長山洋子の演歌が流れる(なんでやねん)「CR七人の侍」よりはマシか。あと三池崇史の「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」よりも(苦笑)!


 <ちょっといい話>現在発売されている今作のDVDには「日本語吹き替え版」も収録されていて、イーストウッド山田康雄、クリーフ=納谷悟朗、ボロンテ=小林清志が担当。つまり「ルパン三世」、「銭形警部」、「次元大介」とルパンファミリーが集結してるゾ^^ファンは要チェック!