其の485:都会の恐怖「不意打ち」

 先月1月は・・・試写会こそ行ったものの、ついに映画館へ足を運ばなかった。今年の「正月映画」は・・・特に観たいものなかったからなぁ!その代わりではないのだが、初めて「TSUTAYAオンデマンド」でDVDを発注&鑑賞した。その作品の名は「不意打ち」(’64・米)。町山智浩著「トラウマ映画館」(集英社刊)で紹介されたサスペンス映画の秀作だ。「ゴッドファーザー」のアル・パチーノの兄貴役で有名なジェームズ・カーンの<出世作>でもある。


 
 ロサンジェルス、ある夏の週末の午後ー。未亡人のヒルヤード夫人(=オリヴィア・デ・ハヴィランド)は息子と2人、大邸宅で暮らすブルジョア。彼女は腰を痛めていた為、松葉杖を使用している。息子が休暇旅行に出かけるのを見送ったあと、鳥籠のような室内エレベーターで2階へと移動する夫人。ところが電線の接触不良でエレベーターが上空で止まってしまう!非常ベルを鳴らしたものの、誰も助けにきてくれない。そのうちアル中のホームレスがベル音に気付いて邸に入ってきたものの、彼女を助けようとはせず、トースターを奪って行く。トースターを換金して味をしめたホームレスは、知り合いの売春婦を誘って再び邸へ。その様子を目撃していた3人の愚連隊(=リーダーのランダル役がジェームズ・カーン)も邸内に侵入、略奪を開始する。エレベーターに閉じ込められたヒルヤード夫人の運命は!?


 
 デヴィッド・フィンチャーの「パニック・ルーム」や「ファニーゲーム」にも影響を与えたと言われる今作。いま観ると、モノクロはさておき、“オープニング”はソウル・バス風、音楽もどことなくバーナード・ハーマン風・・・(苦笑)。どう観てもヒッチコックの「サイコ」(’60)の影響大。但し「サイコ」とは異なる“怖さ”が今作にはある。

 原題は「籠の中の女」。何といっても見所はタイトルロールの“女”を演じたのオリヴィア・デ・ハヴィランドの演技!この人、「風と共に去りぬ」のヒロイン、スカーレット・オハラの親友:メラニー役で知られ、「遥かなる我が子」(’46)と「女相続人」(’49)で2度のオスカーに輝いた超実力派大物女優。見た目は優しそうな顔してるんだけど、実妹ジョーン・フォンテインが先にオスカーを受賞した時(→ヒッチコックの「断崖」で獲得)、めちゃめちゃ嫉妬して“姉妹不仲説”が流れたほど勝気な人(「暗い鏡」で殺人狂(’46)、「蛇の穴」(’48)で精神異常者という難役にチャレンジしたのは妹への対抗心からと言われている)。今作は当初ジョーン・クロフォードにオファーがあったそうだが彼女が断り(→既に「何がジェーンに起ったか?」、「血だらけの惨劇」で似たような役を演っていた為)、その結果オリヴィアがキャスティングされた(撮影当時48歳)。それを彼女が知っていたかどうかは定かではないが、文字通り“鬼気迫る演技”を見せる。ネタバレになるんで詳細は書けないけど・・・いや〜、大女優なのに、ここまで演るのは・・・凄いっ!!

 何より怖いのが・・・さんざん非常ベルを鳴らしても通行人誰もが無関心で、邸に来た人全てが夫人を助けようとはこれっぽっちも思わず、金目の物を盗むことしか頭にない!!以前紹介した「ある戦慄」は列車内で“人間社会の縮図”を展開していたが、今作は“隣近所に関心のない都会の人々”や金持ちと貧乏人という“格差社会”を描いている。ヒロインにもちょっとしたおぞましい点が実はあって、邸の中で人間の暗黒面(物欲、金銭欲から始まって、遂には●●も!)がこれでもかとばかりに繰り広げられる。いや〜・・・ホント、人間って恐ろしいわ!

 ところがいざ今作が公開されると内容が内容だけに“良識ある”マスコミから大バッシングが起こり、企画・製作・脚本のルーサー・デイヴィス、監督したTV演出家のウォルター・E・グローマンはほとんど映画界から消え、作品も永らく“封印”されてしまう(哀)。
そんな中「TSUTAYAオンデマンド」で“復活”した「不意打ち」、サスペンス・スリラー映画のファンの方は是非観て欲しい(レンタルしてないから少々お金はかかりますけど)。あと“熟女マニア”の人にもいいかも(笑)。


 
 <どうでもいい追記>J・J・エイブラムスが「スター・ウォーズ エピソード7」の監督を務めることが明らかに!「スター・トレック」に続いて「スター・ウォーズ」まで・・・(驚)!!下手な監督より彼がやる方が信頼が置けるけど・・・やはり小説のようにハン・ソロとレイアの子供の話になるのか?!今後の推移を見守っていかねばならない・・・。

 
 そうそう、幻のスリラー「生きていた男」も是非DVD出してくれ〜!頼むから!!