其の484:PTA最新作「ザ・マスター」

 毎度のことながら多忙で間があきました(汗)。
 そんな先日、これまた毎度のことながら命を削って“PTA”ことポール・トーマス・アンダーソン監督最新作「ザ・マスター」を鑑賞(←試写会よん)。前作「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」が2007年の作品だから・・・日本的には6年前!早っ!!・・・筆者も年食う訳だ(苦笑)。公開前なんで、書くのはちょっとだけよ♪



 第2次世界大戦に従軍した元海軍兵士のフレディ(→「グラディエーター」のホアキン・フェニックス)は重度のアルコール依存症。戦後、デパートでスチールカメラマンの職を得たものの、酒を断ちきれず客に暴力をふるった挙句、職場を放棄。以後、職を転々とした結果、婚礼パーティーの準備をしている船に密航する。出航した船内で彼は<ザ・コーズ>という新興宗教団体の教祖と出会う。“マスター”と呼ばれる彼・・・ランカスター・ドッド(→「カポーティ」でオスカー受賞のフィリップ・シーモア・ホフマン)はフレディを咎めることもなく受け入れる。フレディはドッドと行動を共にするようになり、ドッドもフレディを一目置くようになる。だが、ドッドの妻・ペギー(→「魔法にかけられて」のエイミー・アダムス)ら近親者は暴力的なフレディを快く思ってはいなかった・・・。



 欧米ではPTAが“新興宗教サイエントロジー(→トム・クルーズとかジョン・トラヴォルタが信じてるアレよ)」の創始者L・ロン・ハバードをモデルにしている”・・・と、ちょっとした騒ぎ(?)になったようだけど・・・映画自体は決して“実話の映画化”ではなく、PTSDの元兵士と教祖という2人の男の関係を描いた“ヒューマン・ドラマ”っす。まぁ、L・ロン・ハバードのことは脚本を書く初期に“参考”にはしたようだけど。

 筆者的には「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」のクラシックかつハードな映像タッチを踏襲しつつ、内容はかの傑作「ブギーナイツ」に似ていると思った。「ブギー〜」の主人公と映画監督の間にあった<上下関係>、<同志としての連帯>、<疑似家族>・・・といった要素が全て当てはまるからだ。おまけに全編にエロ満載なのも一緒!但し、今作では「ブギー〜」と異なり、老女のオールヌードも・・・。いくらなんでも、おばあちゃんまで脱がさないでほしかったな〜(苦笑)!以前「セックスが好き」と公言していたPTAだけに、年食って“熟女好き”に趣味が変わったかもしれない(笑)。

 タイトルにもなっている教祖の“マスター”役、フィリップ・シーモア・ホフマンはPTAが脚本を当て書きしていることもあり、この役にピッタリ!以前からPTA作品(「ブギーナイツ」、「マグノリア」)に出演しているので監督もイメージしやすかったのだろう、無茶苦茶言ってるんだけど、妙なカリスマ感を放つ男を怪演。一方、粗野でアル中の主人公を演じるホアキン・フェニックスは、ご存じのように故リバー・フェニックスの弟だが・・・兄貴ほどイケメンではないし、大分老けた印象(ホアキン、メンゴ)。今作では砂で作った女の裸に興奮して海辺でオ●ニーする、ある意味、大馬鹿の役だが・・・ホフマンがPTAに「フレディ役はホアキンがいい」とアドバイスしたそうなので、オファーを断れなかったのかもしれない(そんなことはないか^^)。この男2人の演技合戦が今作、最大の見所。 
 女優陣は・・・エイミー・アダムスは「魔法にかけられて」や「ナイト・ミュージアム2」では可愛らしい感じだったけど・・・今作はなかなか嫌な役を上手く演じてた。さすが売れっ子ハリウッド女優である。そうそう、「ワイルド・アット・ハート」のローラ・ダーンもちょこっと出てた。彼女を久々に観たけど・・・さすがにちょっと老けてたかな(苦笑)。

 
 ただね・・・ちょっと話が中盤以降、分かりにくいんだよね。台詞としても、映像としても。「多分、こういう事なんだろう」と推測しながら補完していく部分が多々あった。それはPTAの“狙い”でもあるわけだが・・・。玄人ウケはしても、一般ウケはしないと思うから・・・ヒットとはいかなさそうだな、これは(宣伝会社の皆さん、ごめんネ)。ただ作風としてはマエストロの域に達してきましたね!ポール・トーマス・アンダーソンの次回作に俄然期待しよう^^!ただ、次の作品は・・・寡作な作家になっただけに・・・いつ公開されるのかね(苦笑)?



 <どうでもいい追記:1>“巨匠”ロマン・ポランスキーの新作「おとなのけんか」は実力派俳優4人による室内劇。尺は超短いが、ここでも濃密な演技合戦が観られるよ!まじゲロ吐くケイト・ウィンスレットは凄いぜ!もう「タイタニック」のイメージは完全に棄てたネ。みんな知ってたけどレズをカミングアウトしたジョディ・フォスターが大分老けてたのが個人的には悲しかったな(今回、この記述ばっか)。

 <どうでもいい追記:2>今年の「東スポ映画大賞」は皆の予想通り「アウトレイジ ビヨンド」が総ナメ!<北野武による北野武のための表彰>は健在(笑)。