<其の722>ベルモンド!メルヴィル!!フィルム・ノワール「いぬ」

 お盆も過ぎ、灼熱の気温が続いております・・・。コロナと暑さで二重苦だわ!

 

 そんな8月中旬ですが・・・筆者は相変わらず時間が出来ると昔の犯罪映画を未だ観続けています。ジョーン・クロフォード主演の「突然の恐怖」(’62)には若き日のジャック・パランスが出演!フレッド・ジンネマン監督の「暴力行為」(’49)にはロバート・ライアンのほか、デビュー2年目頃のジャネット・リー(「サイコ」)が初々しい若妻役を演じていたり・・・ホント、“人に歴史あり”だわ^^。

 そんな流れで今回はハリウッドを離れて、フランス映画の「いぬ」(’62)を取り上げます。俗にいう<フィルム・ノワール(暗黒街映画)>ってやつ。監督・脚本は当ブログでちょいちょい取り上げてるジャン=ピエール・メルヴィル。この方、コアな映画ファン以外では認知度低いけど、タランティーノジョン・ウー北野武も影響受けてる凄い人!そして主演は「勝手にしやがれ」の大スター、ジャン=ポール・ベルモンド!日本ではアラン・ドロンの方が人気あったけど、本国フランスではベルモンドの方が人気あったそうよ(マジ)。

 

 強盗の罪で服役中、何者かに妻を殺害されたモーリス(=セルジュ・レジアニ)。出所した現在は新しい恋人や仲間のジルベールの所に身を寄せて暮らしていた。新たな盗みを計画したモーリスは金庫破りの道具を友人のシリアン(=ベルモンド)に借り、仲間のレミと共に実行に移す。ところが金庫破りの最中、何故か警察が駆けつけた為、2人は逃走。レミは射殺され、モーリスだけが命からがら逃げのびた。“何故、警察が来たのか!?誰かが警察にタレこんだのではないか!?”。計画を知っていたシリアンをモーリスは“警察のいぬ”として疑い始めて・・・!?

 

 今作のフランス語原題は「帽子」の意。同時に暗黒街の隠語<密告者>、<警察のいぬ>を指す。邦題の「いぬ」は、ここから来てる。かねてより原作小説を気に入っていたメルヴィルがベルモンドと初めてコンビを組んだ前作「モラン神父」(’61)に続いて再タッグ&メルヴィル初の犯罪映画が今作である。「サムライ」や「影の軍隊」を撮るのはこの後よ🎵

 冒頭、モーリス(=セルジュ・レジアニ)が延々歩いてて(←タイトルバックやスタッフロールを兼ねる)、ジルベールの家にいって会話するところから、ようやくドラマ部分になるんだけど・・・まだこの2人しか出てきてないのに、いろんな人の名前が出てくるし・・・ストーリーの中盤までの内容が非常に分かりにくい(困)!!レジアニ扮するモーリスが主役だと思っていたら、後半からベルモンドの出番が急に多くなって・・・一見どっちが主役なんだか(苦笑)。でも、この作劇の分かりにくさはメルヴィル自身も認めているそうで“確信犯”でやっているようだ(→話が見えない分、理解しようと観客は意識を集中させるので)。これが市川崑監督だったら、全てインサートを入れて観客に分かるようにしただろう。その分、全ての謎が明かされた時には「そうだったのか!」と超スッキリ(笑)❤

 頭から映画の欠点(?)を書いたけど、今作では中盤、ベルモンドが警察で尋問されるシーンがあるのだけど・・・これがすげ~長回し!話ながら室内を回る刑事にあわせてカメラが移動しまくってる!!まさにヒッチコックデ・パルマの如し(笑)。なんでも15テイクは撮影したそうで・・・。後年、メルヴィルはこの長回しと「影の軍隊」の冒頭が「気にいっているカット」してコメントしたそう。この何気ない・・・でも凄い長回しは必見!!

 

 メルヴィルとベルモンドのコンビは次作「フェルショー家の長男」(’62)の計3本で終わりを迎える。一説には「いぬ」の撮影中、モーリス役のセルジュ・レジアニをメルヴィルが誉めまくった為、ベルモンドがへそを曲げて「フェルショー家の長男」をもって出演しなくなったという説がある(これが真実だとしたら・・・子供か)。「いぬ」で渋~い演技を披露していたベルモンドだけに残念!その後、メルヴィルアラン・ドロンを起用して「サムライ」、「仁義」、「リスボン特急」(←メルヴィルの遺作)でコンビを組む。ドロンとの仕事もベルモンドと同じく“3本”であった。

 

 これは以前にも書いた記憶があるけど・・・日本ではメルヴィルの「ギャング」(’66)が未だにVHS発売止まり!ブルーレイとは言わないから、せめてDVD出してほしい!!

 あとはバーホーヴェンの「危険な愛」、「女王陛下の戦士」のDVD再発売に、ちばあきおの野球アニメ「劇場版キャプテン」の再発売とか・・・メーカーさんにお願いしたい事は令和になってもまだまだあるぞ!!