其の366:格調高くもアブない映画「さらば美しき人」

 「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのピーター・ジャクソン監督最新作「ラブリーボーン」を観た(製作はスピルバーグ)。一言でいえばスピリチュアルなファンタジー映画、あるいはピー・ジャク版「大霊界」!幼女殺人がベースにはあるけれど<家族愛>を描いたいい映画でしたよ^^。役者陣も「ブギーナイツ」のマーク・ウォールバーグに、筆者贔屓の美人女優レイチェル・ワイズ。そして常に煙草吸ってる豪快な祖母にスーザン・サランドンという超豪華メンバー!殺人犯役は・・・気持ち、津川雅彦に似ていて笑いそうになったけど(そういやピー・ジャクもエキストラ出演してたな)^^。ただラストも含めて、もう少し巧く脚色すればもっといい映画、感動的な映画になった気がする(→特にラストが欲求不満)。そこが惜しかったかな〜。

 
 冒頭から<幼女殺人>という目を背けたい語句を書いてしまいましたが、1971年のイタリア映画「さらば美しき人」で描かれるのは兄と妹の<近親相姦>!・・・筆者は幼女にも、そのテのタブーにも全く興味はないのだが、今作の監督ジュゼッペ・パトローニ・グリッフィ(ラウラ・アントネッリ主演作「スキャンダル 愛の罠」の人)はどうでもいいんだけど(笑)、音楽担当はーこのブログに何度も登場している大巨匠エンニオ・モリコーネ!そして撮影監督には「地獄の黙示録」や「1900年」ほかで知られる名手ヴィットリオ・ストラーロだぜ〜!!これは観るっきゃないでしょう、映画オタクなら(笑)!

 舞台は中世のイタリア。久方ぶりに故郷に帰ったジョバンニ(=オリヴァー・トビアス)は、美しく成長した妹アンナベラ(=「愛の嵐」のシャーロット・ランプリング)に一目で心を奪われてしまう。禁断の愛ゆえ悩みに悩むジョバンニだったが、ある日、意を決してアンナベラに告白!なんと彼女もジョバンニを愛していた。結ばれる兄妹。だが、2人の幸福は長くは続かなかった・・・。果たして2人の運命は!?

 原作はウィリアム・シェイクスピアと同時代(17世紀頃ですな)の劇作家ジョン・フォード(→勿論「西部劇の神様」とは同姓同名の別人)の「あわれ、彼女は娼婦」。今作の10年前(’61)にかのルキノ・ヴィスコンティが舞台で上演してます(出演はアラン・ドロンロミー・シュナイダー)。いかにもヴィスコンティが好みそうな題材だわ^^。

 出演俳優として誰もが知ってるのは妹アンナベラを演じたシャーロット・ランプリング(近年もフランソワ・オゾンとかの映画に出てますな)。彼女の代表作「愛の嵐」(’73)における上半身裸+サスペンダーというビジュアルが「ナチ=エロ」という図式を定着させたことでも映画オタクの間では有名である(笑:でも本当)。彼女は1946年生まれなので、この映画撮影時は24、5歳。さすがに若いわ^^!すでに先述のヴィスコンティによる「地獄に堕ちた勇者ども」(’69)に出演し<退廃の匂いを感じさせる稀有な女優>の評価を得ていたことからキャスティングされたのだろう。今作でも乳出し(&腋毛出し)で熱演しとります(彼女自身もお気に入りの作品だそうで)。

 ヴィットリオ・ストラーロによるカメラ芸術は今作でも存分に堪能できる。大胆にあおった冬枯れた森の場面は思わず息を飲む美しさだし、主人公が乗る馬の並走や、少々トリッキーなベッドシーンでの移動撮影も完璧!<中世の雰囲気(→といっても奇妙なオブジェなどあえて時代考証に即していない部分も多々あり)>に加えて<ひたすら美しい映像>を目指したゆえ非常に格調高い作品に仕上がっている。いかにも60〜70年代のイタリア映画ってゆー感じ(笑)。同じテーマとはいえ、アニメの「くりいむレモン」とはアプローチが異なるのでお間違いなく(笑)!

 加えてエンニオ・モリコーネのスコア!・・・今作でのマエストロのスコアは、クラシック的且つ美しく甘美だが、かなりリリカル。モリコーネ音楽の良さのひとつに「一度聴いたら忘れられないメロディー」があると思うが、今作の劇伴はちと筆者の琴線には触れなかった(残念)。彼の作品でなければ誉めるとこなんだけど大ファンゆえ、厳しく意見した次第。

 ネタばれ防止のため、あらすじは半分程度にとどめていますが、<クライマックス>では先読みしながら映画を観る観客の予想を越える<衝撃の展開>が!で、それに併せてモリコーネの音楽もおどろおどろしく変化すると(笑)。文章にすると凄い語句を書き連ねなければならないのだが、実際はストラーロだけにー凄惨ではありながらも美しい映像になってます^^。やばいネタだからといって倦厭するのは損でっせ!

 
 ちなみに発売中のDVDでは馬の交尾や主人公の●●●もボカシなしのノーカットで見られるので(→筆者的には全然嬉しくない)スケベな婦女子にも御薦めよん♪←どんな締めやねん(苦笑)