其の478:爆笑!温泉芸者

 新作ばかり続くと芸がないんで旧作を^^。そこで今回紹介するのが東映の艶笑喜劇「温泉みみず芸者」(’71)!何故これを選んだのかは後述しますが「何故、東映がエロを?!」と疑問に思ったそこの貴方、以前にここでも書いてるし、そのテの本も出ているので後は自分で調べてネ♪あと、青少年は観ちゃダメよん!


 伊勢志摩で飲み屋を営む多湖初栄(=松井康子)と2人の娘・圭子(=池玲子)、幸子(=杉本美樹)姉妹は抵当に入っている先祖の墓を買い戻す為、百万円を貯金するべく働いていた。ところが初枝の男が貯めていた金を持ち逃げした為、圭子は東京のソープランド(注:劇中ではト●コ)に働きに出る。後日、初栄から圭子に電報が届き、伊豆の土肥温泉に呼び出される。実は彼女、新しい男と土肥に遊びに来たものの、またまた金を持ち逃げされて無一文になっていた。そこで圭子は母の借金返済の為、温泉芸者として働く事となり、その名器で“タコツボ芸者”と呼ばれる人気者となった。そんなある日、一夜を共にした芸者を意のままに他の土地に鞍変えさせる温泉場荒しにして「無限精流」を名乗る性豪・竿師段平(=名和宏)とその弟子2人が土肥に現れる。置屋組合から出る報奨金300万円をゲットする為、初栄と圭子・幸子の多湖ファミリーは段平たちを町から追い出すべく<勝ち抜きセックス三番勝負>を開始!果てして勝つのはどっちだー!?


 
 いや〜、あらすじ書いてても・・・くっだらない話!とても最高学府まで出た人間が考えるお話ではない。ほとんど中高生レベル(爆笑)!そんなストーリーを巨費をかけて映画化した東映はえらすぎる^^。現在の東映経営陣にも是非見習って頂きたい(笑:さすがにいま、温泉芸者の企画を出しても通らないだろうが)。

 さて、本作をチョイスした理由ー。それは池玲子杉本美樹の<デビュー作>だから!!“ポルノ(死語?)”という言葉はプロデューサー:天尾完次が、従来のピンク映画との差別化を図るために生み出した造語(←海外の雑誌のグラビアから見つけたらしい)で、池玲子は<日本初のポルノ女優>として日本映画史に記録されているわけ。そんな彼女の作品をここでも過去、何作か取り上げてきたわけだが、そのルーツがここにある(笑)!以降、「女番長(スケバン)」シリーズ、「恐怖女子高校」シリーズ他に主演して東映ポルノのドル箱スターとなるものの、1972年、歌手転向を目指し映画界を離れるが短期間で復帰。休業中に主演女優として台頭してきた今作の共演者・杉本美樹との2トップ体制で東映ポルノを支えていく(今では余り語られない裏日本映画史)♪

 池の<映画デビュー作(しかも主演)>とあって、彼女をマジで売り出すためオープニングから凄いよ〜!もう完全に池のプロモーションビデオ(笑)。監督・共同脚本を担当した鈴木則文の気合いをビシビシと感じる(鈴木にとってもこれが初ポルノ作品)。

 鈴木則文といえば→前にも書いたけど・・・菅原文太の「トラック野郎」シリーズで知られているが、後年は「ドカベン」、「伊賀野カバ丸」ほか漫画の実写映画化(CGない時代)を積極的に行った御仁でもあり、今作でも構図や編集、話の展開が非常にコミック的。池とエッチした相手(芦屋雁之助!)があまりの良さに腹上死すると、次のカットで霊柩車が走ってる(爆笑)!!また敵役“竿師段平”の名前は・・・誰がどう聞いても「あしたのジョー」のパロディー(笑:ラストどうなるか要注目)。後の鈴木作品の一端が今作からも垣間見える。

 ここまで読んで「タイトルの“みみず”の意味は??」と当然の疑問を持つ方もいるでしょう。残念ながら、“みみず”は全く出てきません!!何故ならば、当初は「温泉たこつぼ芸者」のタイトルで撮影していたものの、<ネーミングの天才>岡田茂(のちの東映会長)が「たこつぼじゃ弱い!みみずにしろ!」との事で変更になったそうだ(なんてアバウトな)。よって、大量に蛸は出ますが、みみずは出ないので、みみずマニアの方はご注意あれ^^。ちなみに舞台となる<伊豆の土肥温泉>の事を空撮ベースにナレーションつけて大層誉めあげているが・・・それはこの映画とタイアップしてたから(笑:さすが70年代東映作品)。

 一口に“ポルノ(といっても70年代のソフトコアなんで過剰な期待はしないように)”といっても東映産だけに・・・出演者も超豪華!!池&杉本はド新人としても先述の芦屋雁之助小池朝雄殿山泰司の他、このテの路線のお約束、由利徹(「おしゃまんべ」)に大泉滉のゴールデンコンビに(勿論)山城新伍も参加!中でも小池は超巨根に悩む板前、山城はマ●拓のお土産作りをしている自称・芸術家の役・・・二人ともいい年してよくこの役受けたな(爆笑)!!

 ちょい役で「SM文学界の巨匠」団鬼六先生や田中小実昌先生、ノンクレジットで菅原文太が1カット出演するのも見所だろう^^。池の母親役・松井康子(ピンク映画のほか、「神々の深き欲望」にも出演)に、新東宝でも活躍した“グラマー女優”三原葉子(のちに杉本の「0課の女」にも出演)も出ているけど・・・2人ともこの時には大分太っちゃってね・・・人間にとって歳月が経つのは残酷なものです。松井は先日、詐欺容疑で逮捕されたし・・・歌じゃないけど、まさに人間いろいろ人生いろいろ・・・ですナ。

 
 娯楽映画には欠かせない大量のおっぱい露出にベタなギャグ満載で大いに笑わせてくれる今作だが・・・小池朝雄演じる板前が戦争の影を引きずっていて・・・単なる“艶笑コメディー”の範疇におさまっていないのが鈴木作品の特徴のひとつ。翌年の「徳川セックス禁止令 色情大名」、「エロ将軍と二十一人の愛妾」も作品はあくまでポルノの建前をとりながら“体制批判・権力批判”が入っていたりと、彼の作品は一味違う。まだ学生運動もあった70年代に思いを馳せて、いまは失われた“温泉芸者”映画を観るのも一興だろう。

 
 今作を観て“温泉芸者”に興味が湧いた方は、今作以外にも鈴木が監督した「温泉スッポン芸者」(’72:竿師段平再登場!)や<キング・オブ・カルト>石井輝男の温泉芸者映画第1弾「温泉あんま芸者」(’68)等々もありますんで是非そちらもご覧あそばせ! 



 <どうでもいい追記>年内にはなんとか「エヴァ:Q」を観たいものだが・・・時間とれるか?!