<其の733>大変革女侠客映画「緋ぢりめん博徒」

 想定はしていましたが・・・また「シン・エヴァ」が公開延期に(泣)!!いつにやったら公開されるのやら・・・トホホ。

 

 さて、前回に続いて東映の「任侠映画」・・・です。でも、今回は決してどストレートな作品ではない「緋ぢりめん博徒」(’72)をご紹介。この方が当ブログらしいでしょ(笑)。原案はSM小説界の巨匠・団鬼六!監督は<キング・オブ・カルト>石井輝男!!

 

 明治時代の東京ー。女博徒・鬼百合のお勝(=中村英子)は義理人情から「榎屋一家」の親分を斬って逮捕、服役。5年後、出所した彼女は親分の仇としてハイカラのお仲(=池玲子)に命を狙われるようになる。お勝は服役中に知りあった流山の「江戸幸組」の娘・お秀(=土田早苗)を訪ねる途中「帝釈天一家」の賭場へ。そこでお勝に目をつけた帝釈天牛五郎(=名和宏)は、イカサマ賽で彼女を負かそうと企むものの、盲目の女博徒・お紋(=藤浩子)の気転で危機を脱する事が出来た。

 ほどなく、お秀が一人で取り仕切る「江戸幸組」に目をつけた水神吉五郎(=小池朝雄)は、牛五郎と結託。お秀に東京から進出して来た「新川組」を喰い止める事を条件に縄張りを明け渡すよう詰め寄る。申し出を断ったお秀は、単身「新川組」に殴り込みをかける。そこに現れたのは組の用心棒・佐倉政之進(=菅原文太)。彼は、お勝の想い人だったのだが・・・!?

 

 前回紹介した「昭和残侠伝」にも出演していた「緋牡丹博徒」シリーズの“緋牡丹のお竜”こと藤純子(現・富司純子)が72年に結婚して引退(のちに復帰)した為、東映が「ポスト藤純子」という事で話題を作ろうとしたのが今作。石井監督的には<異常性愛路線>を経て(笑)、梶芽衣子主演「怪談昇り竜」(’70)と丹波哲郎主演「ポルノ時代劇 忘八武士道」(’73)との間・・・全盛期に作られた内の1本。既にどストレートな「昭和侠客伝」(’63)とかも演出済なので、石井輝男がいかに今作に取り組んだのかが、ファンとしては最大の注目ポイントとなろう^^。団先生の小説とも全然違うし(これまんまやったらヤバそう)、高田宏治の脚本も・・・石井さんがある程度直してやったそうな(笑)。

 主役のお勝に中村英子、お紋・藤浩子、お秀・土田早苗・・・と土田早苗以外は、当時まだ出演経験の浅い2人をあてがわれた石井さんは現場で大分苦労されたようだ。「石井輝男映画魂」(ワイズ出版)読むと、大分2人をフォローされてるけどね。藤浩子の役なんかはモロ、女「座頭市」やってて頑張ってた・・・とは思う。アクションとかも出来ない分、アングルやカット割りで何とかもたせたのは観てて分かるし。石井作品の中でも、今作の評価が低いのはメイン女優の華と演技力の問題。残念ながら藤純子には遠く及ばなかった・・・(残念)。どうでもいい事だけど、劇中、お勝とお秀は「兄貴」、「兄弟」と呼び合うー女性同士だから「姉貴」とかじゃあかんの??女侠客界に詳しい方がいらっしゃったら是非教えて欲しい^^。

 メインが弱い分、脇を固めるのは超メジャーな方々!激シブの菅原文太を筆頭に池玲子(オールヌードでの立ち回りあり)、粗筋では割愛したけど山城新伍大木実の他、名和宏小池朝雄って・・・<東映ピンキー・バイオレンス>のいつものメンバー(笑)!特に小池朝雄の好色ぶり→めっちゃ脂ぎってて、助平丸出しの極道キャラは最高^^!!!主役よりも脇役の方が遥かにキャラが立ってる(笑)。

 

 劇中、石井監督の異常性愛路線&団鬼六先生を想起させる拷問&エロいシーンあり、血しぶき飛ばすバイオレンスもありで、他の女侠客ものと一線を画す今作。傑作「徳川いれずみ師 責め地獄」や「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」とかと比べると落ちるけど、石井ワールドを堪能出来る一作。ファンには是非観てほしい。