其の475:サイコパス第2弾「悪い種子」

 前回、恐怖のサイコパス教師を描いた「悪の教典」をとり上げましたが、今回は“サイコパス”シリーズ第2弾ということで(笑)「悪い種子(たね)」(’56・米)を紹介!幼い子供が恐ろしいことをする映画(お懐かし「オーメン」のダミアンやマコーレー・カルキン君の「危険な遊び」、「エスター」とか)の先駆的作品として知られている(一部の映画マニア限定)。


 クリスティーン(=ナンシー・ケリー)と夫ケネス・ペンマーク大佐との間には8歳の利発な娘ローダ(=パティ・マコーマック)がいた。ケネスが軍の召集で出張に出ることになり、クリスティーンとローダはしばらく2人で暮らすことに。そんなある日、ローダの学校のピクニックで彼女の級友クロードが湖の桟橋から落ちて溺死する。当初は少年の過失かと思われたが、ローダの学校教師は<彼の額に打撲による傷があること>や<ペン習字で獲得した金メダルがなくなっていること>、更に<ローダが事件の直前、彼と一緒にいた目撃証言がある>等、様々な疑惑があることを告げる。その時、彼女は以前住んでいたアパートでの一件を思い出したー。同居の老婆が階段から落ちて亡くなった時、彼女が所持していた飾りのガラス玉をローダが持っていたのだ!!クリスティーンはローダの机を探す。すると、そこにはクロードの金メダルがあった・・・!!


 いや〜怖っそろしい話(ゾッ)!!「悪の教典」の主人公は大人だが、こっちは8歳の普通の女の子だからね!もっともサイコパス(反社会的人格障害:狂人ではない)に年齢や性別は関係ないそうだから(その定義として「尊大で自己中心的」、「良心の欠如」、「罪悪感が全くない」、「慢性的に平然と嘘をつく」等々があり、これ全てローダに当てはまる)“設定”としてはリアリティー満点。

 今作は作家ウィリアム・マーチ原作による人気舞台の映画化。この舞台を気に入ったマービン・ルロイが製作・監督を兼務してる(映画版の脚色はジョン・リー・メイン)。ルロイの“代表作”といえば一般的にはビビアン・リーの「哀愁」(’40)や「心の旅路」(’42)あたりになるのだろうが、片や「哀愁」は“大メロドラマ(これを翻案したのが「君の名は」である)”、一方、今作は“少女連続殺人鬼もの”・・・いや〜、ハリウッドの監督は奥が深いなぁ〜^^

 元の舞台は<ローダの家の室内オンリー>で展開されたそうだが、映画は家の外の通りや庭、ピクニックを行った湖ほか、少々スケールアップさせて展開(でも冒頭の<湖の桟橋付近>は、どう観てもスタジオセット:笑)。但し、演出的には舞台をまんま撮ったような構図が多くて、いま観ると少々古臭いかも。どうやら、それもルロイの“狙い”だそうだが。

 そんなルロイはメインの出演者もまんま舞台の演者たちをキャスティング。舞台で観客たちを戦慄させたパティ・マコーマック(←映画撮影当時10歳の天才子役)は映画版でも“リトル・モンスター”としての存在感を充分に発揮している。あの目力は・・・尋常ではない(苦笑)。DVDには“大人”になったパティのインタビューが収録されていて「この作品を誇りに思っている」とコメントしていたから・・・変な成長を遂げずに良かった良かった(笑)。少々、演出が古びて見えたとしても、ローダの本性が明らかになるにつれ画面から目が離せなくなっていく。

 ローダの母親(ナンシー・ケリー好演!)をメインに物語は進行するのだが(子供の正体がわかって苦悩する)・・・「タイトルの『悪い種子』って、どーゆー意味よ?」と思っているそこの貴方、物語の中盤以降、その意味が分かります!!But、ここで書いてしまうと観る時の興味をそぐことになると思うので・・・その目で観てお確かめ下さいまし(メンゴ)^^

 さらにこの映画版には原作小説にはない“ラスト”&“普通の映画ではありえないエンディング”が付いている(これもネタバレゆえ、ここでは書きません)!!!これ、正直言って蛇足以外の何物でもないのだが・・・「トラウマ映画館」(集英社刊)において町山智浩氏は公開当時(1956年)存在した“ヘイズ・コード”&世相を鑑みて付け加えたようだと推測している。確かに日本でいえば昭和30年代に子供が次々人殺す話って・・・ショックが強すぎるよな〜!いま観ると普通でも、公開当時センセーションを巻き起こした映画っていくつもあるしね・・・。致し方なし、ってことだな。


 映像は古典的でも、テーマは全く古びていない「悪い種子」。逆にいま現在観た方が観客の理解度は高いと思う。殺人こそ犯さないものの「尊大で自己中心的」なサイコパス資質の人間は・・・周りに結構いると思うし(苦笑)。「悪の教典」にご興味のある方は是非今作と併せてご覧下され^^



 なんでもジョージ・ルーカスがディズニーに買収されて「スター・ウォーズ」の権利も売ったという報道が。そのディズニーによると「スター・ウォーズ」の新3部作を製作するとか、しないとか・・・ってマジ!?ルーカスの手を離れたら(注:彼のエピソード1〜3に関する“物語設定”や“演出力”は別として)それは「スター・ウォーズもどき」でしかないだろ(怒)!!!「ジョン・カーター」がコケた穴埋めかなんか分からんが・・・もう作らないでいい!頼むから、ほっといて!!!