其の531:アイデア一発勝負!「ゼロ・グラビティ」

 ゴールデンウィークも終わりました。まぁ、テレビマンには元々関係ないけどね・・・(苦笑)!

 昨年末と今年のあたま、周囲の何人かに「観ましたか?」、「観ましたか?」とさんざん尋ねられた映画のひとつが大ヒットしたSFサスペンス「ゼロ・グラビティ」。その頃は大して観る気もなかったんだけど、つい最近レンタルが出たので観ましたよ(あいにくIMAXではなく、ブルーレイで)。いつものように<ネタバレ>しないように書きますが。先日のアカデミー賞にて監督賞、撮影賞、編集賞、視覚効果賞、録音賞、音響編集賞、オリジナル作曲賞受賞。


 地球を周回中のスペースシャトル。初めて宇宙に出たエンジニアのライアン・ストーン博士(=サンドラ・ブロック)は、ベテラン宇宙飛行士マット・コワルスキー(=ジョージ・クルーニー)のサポートを受けながら船外で修理作業に当たっていた。すると、ロシアが自国の衛星を爆破したことによって大量の破片(“スペース・デブリ”)が猛烈なスピードでシャトルを襲う!!衝撃で宇宙へ投げ出された2人。さらに悪いことにライアンの宇宙服の酸素は残り10パーセントを切っていたー!果たして2人は無事生還できるのか!?


 要約すると「宇宙で事故にあったサンドラ・ブロックジョージ・クルーニーが大変な目に遭うお話」(笑)。筆者が表・映画ベスト第1位に推す「2001年宇宙の旅」(→ちなみに裏・1位もあるけど、それはまた別の話)の劇中、HALの反乱で宇宙空間に投げ出された人がいたでしょう。あれを拡大したアイデア一発話→→という頭があったんで、そんなに観る気がしなかった訳ですよ。タイトルは邦題が「ゼロ・グラビティ無重力)」だけど、原題は「グラビティ(重力)」だから、“オチ”も読めたしね。けれど、ストーリーはどうあれ、宇宙の無重力描写は凄かった!!勿論、慣性の法則上「?」という箇所もあったし、宇宙飛行士の訓練の9割が非常時対応の訓練ということで、実際にはこんな事態が起こるのはほとんどないそうだが・・・まぁ、そこは映画だということで(苦笑)。

 製作、監督から脚本、編集まで務めたのは「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」、「トゥモロー・ワールド」のアルフォンソ・キュアロン。この御仁、相米慎二のように“長回し”がお好きなので、それを実現する方法論を得るために結果、ほとんどのシーンをCG作成&デジタル合成!!驚異のカメラワークは本篇をご覧頂きたいが、この映画が完成するのに実に4年の歳月がかかっている(う〜ん、素直に尊敬)。

 でも考えてみれば“映像技術を発達させた映画”って、ストーリーはどうあれ、話題作&ヒット作が多いんだよね。ちょっと振り返ってみても「スター・ウォーズ」、「ジュラシック・パーク」、「アビス」や「ターミネーター2」に「マトリックス」、そして3Dを復活させた「アバター」・・・。今作も今後、この流れで語られてゆくと思うし、これから作られる宇宙を舞台にした映画は、今作がまた新たな<フォーマット>になるだろう(注:来年公開予定の「スター・ウォーズ エピソード7」は違うと断言しよう。あれはスぺオペだから^^)。

 また「3D映画」を作る場合、これもあくまで筆者の持論ですが「カットを早く割っちゃダメ」。「浮いてるな〜」と観客が認識した瞬間、別カットに変わっちゃうと3D感が半減するのですよ(浮いていても驚くのは最初の10分15分ぐらいで後は慣れちゃうけどさ:笑)。その点、今作は1カットが長いから、特にIMAXで観ていたら、その効果が存分に発揮されていたと思う。この点でも3Dで作る際の基本フォーマットになってほしいと思う。

 尺も90分とコンパクトだし(←長々と船内で人物紹介やらずに、ハナから宇宙でスタートした作劇も正解)、無重力空間の恐ろしさを十二分に堪能できる良質の体感ムービーでありました。・・・最後、サンドラが「ウルトラマン」のジャミラみたいになって地球圏に帰還するラストだったらもっと良かったけど(爆笑:そんなわきゃない)。



 “話題作”といえば・・・一昨年、日本アカデミー賞作品賞に輝いた吉田大八監督作「桐島、部活やめるってよ」も観た。学校のヒーロー・桐島くんの周りの人たちが、彼がバレー部を辞めるという“噂”をめぐって繰り広げる青春群像劇(ネタバレするから詳しく書けないけどベケットの戯曲「ゴドーを待ちながら」をふと連想したのは筆者だけかしら?)。真相を確かめようにも桐島くんが携帯電話やメールに出ないのでより増幅される“ざわざわ感”がよく出ていて悪くはないんだけど・・・「誰か1人ぐらい彼の家に行って直接会ってこいよ!」と内心ツッコんでしまった(笑)。これが現代の若者たちなのかもしれんネ。