其の474:驚愕の大殺戮劇「悪の教典」

 先日、貴志祐介原作「悪の教典」を観ました。“サイコパス(=反社会的人格を持つ精神病質者)教師が生徒を殺戮しまくる”という非道徳な設定だけで、観る価値あり(本来、映画ってそんなもんでしょう^^)!おまけに監督はあの三池崇史だぜ〜!!これは観るしかないだろう。発売当初から話題になっていた本なので、あえて原作を読まず(←いつか映画になるだろうと予想してたから)大して期待もせず(←外すとショックでかいし)試写会を訪れたのでした。これまで同様、まだ“公開前”なんでネタバレしないように書きますわv



 都内の私立高校に勤務する英語教師・蓮実聖司(=「海猿」シリーズの伊藤英明)は爽やかな容姿と有能さで生徒は勿論、同僚教師からも信頼されている人気者。集団カンニング対策や、モンスターペアレントへの対応、果ては校内の淫行教師(=山田孝之)の問題まで迅速に対応していく。だが、彼の経歴には様々な“グレー要素”があり、その周辺には謎の自殺者や行方不明者が相次いでいた。物理教師・釣井(=吹越満)や一部の生徒(=染谷将太二階堂ふみ他)はそんな蓮実に疑惑を抱く。−そう、彼は自分にとって都合の悪い人間・邪魔な人間は平気で殺害する<連続殺人鬼>だったのだ!!校内で暴れた不良生徒、カンニングの首謀者の生徒らが次々と“失踪”を遂げていく中おとずれた「文化祭」前夜。蓮実は淫行問題の一件で深い関係になった女生徒を自殺に偽装して始末しようとするが、そこで思わぬ誤算が!そこで彼が自分の犯行を隠すため考えたことー。それは準備で校舎に泊り込んでいるクラスの生徒全員を同僚教師の仕業に見せかけて“皆殺し”にすることだった!!


 まぁ、凄い映画でしたよ!!!DVD出たら買うわ(笑)!あくまで“娯楽”だけど・・・超真面目な御仁と暴力描写が苦手な人&すぐに影響されそうな青少年は観ないようにね(一応、「R15」)!三池崇史伊藤英明といえば2007年の「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」以来のコンビだが・・・あれは完全にスベったんで、筆者的にはその時の“懸念”もあったのだが、おかげさまで払拭されましたわ(三池さんは元々バイオレンス演出は上手い人)。事務所に反対されながらもオファーを受けて、ダークヒーローを演じた伊藤英明えらいっ!!これから筆者も彼を観る目が変わりそう(笑)。“黙々とガンガン人殺す主人公”・・・って、筆者は観ていてちょっと古尾谷雅人主演の実話もの「丑三つの村」を思い出した。生徒がエロいことしてる時に殺すと「13日の金曜日」のジェイソンになっちゃうけど(笑)。

 個人的に着目したのは<脚本>を三池監督本人が担当してること!「1年に5本の映画を撮る男」につき、今までそんな時間はなかったと思うのだが・・・これがもしかしたら“初脚本”ちゃうんか(暇な人は調べてみて)?!まぁ、他の人が脚本書いても現場の状況でどんどん直しちゃう人なんで、脚本家の資質も充分にあった訳ではあるが(笑)。三池独特の演出(下ネタ含む)もちょいちょい入っていて、三池ファンは喜ぶと思う。伊藤英明のファンがどう思うかは知らんけど(笑)。

 次に着目すべきは<生徒を演じた俳優たち>!園子温監督作「ヒミズ」の染谷将太二階堂ふみコンビをまんま持ってきた(←この2人、何気に共演多いんで調べてみたら事務所は一緒じゃなかった)以外にも、ダルビッシュ有実弟・KENTAや「FLOWER」のリーダー・水野絵梨奈が重要な役を演じている他、工藤公康の長男・工藤阿須加とかも出演!超わっきー(脇役)で田原俊彦の娘・綾乃美花も出てるけど・・・アップがないから、これはなかなか分からんかも?ちなみにゲイの生徒役で出ている林遣都(彼、こういう役多いね。「パレード」とかさ)は、淫行教師役の山田孝之と同じ事務所(笑:バーターか?)。ほぼ順撮りで撮影されたという今作、生徒たちが段々上手くなっていくのがよく分かる。クライマックスの“大殺戮地獄絵図シーン”では血糊と弾着つけて頑張ってマス(劇中同様、夜の撮影だったので、皆テンション上がったそうな)^^。「バトル・ロワイアル」の時同様、「今後誰がメジャーになってゆくか」を予想しながら観るのもいいかも。

 長大な原作の主要キャラやエピソードを大分落としての映画化のようだが(=貴志祐介先生も序盤のシーンで出演。しかも台詞あり!「犬神家の一族」の時の横溝正史状態)後半に焦点をあてて脚色したのが良かったと思う。あれやこれや無理矢理詰めんだ結果、どっパズした「さよならジュピター」とか「亡国のイージス」みたいにならなくて良かった(笑)!


 “オチ”はね・・・これは超想定内!こう持っていくのはある意味、作劇の“パターン”だし(そこは原作通りらしい)。怪作「愛と誠」に続く、三池崇史監督の衝撃作を余り先を読まずに戦慄しながら眺める・・・のが映画版「悪の教典」の正しい鑑賞法だろう。

 
 “映画の前日譚”としてBeeTVドラマ「悪の教典 序章」(全4話)が配信されたが(三池は「監修」)、映画でオミットされたキャラやエピソードが描かれている(出演者の何人かは映画版と同じキャスト。アメリカロケもしていて金かかってる)。より深く<悪教ワールド>を知りたい人はこちらもどうぞ。“つながり”も含めて、ドラマ版に出ていた高岡早紀も映画に出してほしかった・・・と思うのは筆者だけか(つい、こっちも観てしまった)?