其の533:これから公開される新作2本

 え〜・・・先日、またひとつ年を食ってしまいました。40代にもなると、誕生日なぞ全然嬉しくもない(笑)。

 そんな誕生日当日、試写会で観たのが6月末公開の「300<スリーハンドレッド>〜帝国の進撃〜」!誕生日早々にバイオレンス・アクション映画とは・・・俺らしい(苦笑)。そんな訳で、これから公開される新作映画2本をさくっとご紹介。勿論、いつものようにネタバレしないのでご安心を^^!


 にしても前作「300<スリーハンドレッド>」(’07)を観た方は思わず“続編”と聞いて「一体、どーすんねん!?」と思われるだろう。筆者も一瞬「北斗の拳」のように<実はユリアは生きていた>とか、「キングコング2」のように<キングコングを蘇生させた>等の<強引な発想>を危惧したが(笑)、前作の出来事の“前後”を描くストーリーになってた。

 
 紀元前480年ー。ペルシアの大遠征軍がギリシアへと進軍!そこでスパルタのレオニダス王は先鋭部隊300人でテルモピュライへ。時を同じくしてアテナイの将軍テミストクレス(=「L.A.ギャングストーリー」のサリバン・ステイプルトン)はギリシア連合軍を率いてペルシア海軍の掃討に乗り出すことに。敵の指揮官はギリシアに激しい恨みを持つ女傑アルテミシア(=ダニエル・クレイグ版「007/カジノ・ロワイヤル」のエヴァ・グリーン)。彼女はギリシア生まれながら幼いころ同郷人に家族を虐殺され、自身もまた残酷な仕打ちを受けていた。大海原を舞台にギリシア連合海軍とペルシアの大軍団が激突するー!!


 有名な「テルモピュライの戦い」は<陸戦>だけではなく<海戦>もあったんですね〜(世にいう「サラミスの海戦」)^^。うまいところを突いて続きを書いたフランク・ミラーのグラフィック・ノヴェルを新鋭ノーム・ムーロが演出。前作の監督・脚本、ザック・スナイダーは製作・脚本に回っている(→「マン・オブ・スティール」でスケジュールがいっぱいいっぱいだった為)。

 今作も前作同様、全編デジタル加工の映像で、原作の持ち味を再現(→2か所の水中シーンはプールで撮影したものの、あとは全てデジタルだという)。バイオレンス描写もたっぷり、前作の映像も僅かながらリンクして入ってくるんで、ファンも違和感なく映画に入れるのでご心配なく!エヴァ・グリーンのファンの方は彼女のバトルシーン(めっちゃ強い悪女なのよ)に加え、乳出しも有りなので期待して頂きたい(笑)。

 ・・・でもねぇ、<海戦>といっても基本、船に乗り移っての“白兵戦”がメインなので(←当たり前のことだが、古代ギリシア時代だから大砲撃ち合う艦隊戦などなし)そんなに目新しいアクションがある訳でもなく、エヴァ・グリーン以外は日本人的には大してメジャーな俳優が出ていない上、本篇自体に中途半端感ありあり(ネタバレ防止のため詳しく書けないけど)。さらに出来ればもう1本続編作ろうとする思惑が見えるんだよなぁ〜。勿論、例外もあるけれど・・・残念ながら1作目は越えてない(残念)。前作のファンは過剰な期待をせずに劇場にお出かけください。

 それにしても今作のほか「バイオハザード」シリーズのポール・W・S・アンダーソン監督による「ポンペイ」とか、ダーレン・アロノフスキーの「ノア 約束の舟」とか、昔ハリウッドで一度は作られた<古代歴史もの>が続々公開予定。でも現在って<歴史映画ブーム>なの??う〜ん、わからん・・・(悩)。



 さて洋画の次は邦画→→→映画「喰女 クイメ」を。三池崇史監督が「一命」(’11)で組んだ市川海老蔵、「着信アリ」(’04)で仕事した柴咲コウの2人を再度主演に迎えた最新作です。<8月公開のホラー映画>って・・・分かりやすいなぁ!さすが東映(笑)。


 スター女優・後藤美雪(=柴咲)は稽古中の舞台「真四谷怪談」で<お岩>役に取り組んでいる。相手役となる<伊右衛門>には彼女の恋人で半同棲中の長谷川浩介(=海老蔵)。だが彼は共演女優(=中西美帆)とも密かに交際している。稽古が進む中、劇中展開される伊右衛門とお岩の関係が現実でも次第にリンクしていく。次第に浩介へ憎悪を募らせる美雪だが・・・。

 
 元禄時代に起きた実話を題材にした「東海道四谷怪談」は有名な歌舞伎の演目で、何度も映像化もされているけど、それを歌舞伎役者の海老ちゃんが演じる・・・というのが今作最大のウリ(なんと「企画」も兼務してる!原作・脚本は別にいるけど)。<虚構の世界と現実がオーバーラップしてくる>という作劇自体は、さほど目新しいものじゃあない。でもこれまでいくつものホラーも演出している三池だけに・・・これがなかなか見せてくれるんですわ♪

 歌舞伎役者が“本職”の海老蔵さんの<演技>は・・・すげー本人の“素”っぽい感じ!稽古場にフード被って現れて、スタッフたちと挨拶は交わすものの、割合ぶっきらぼう^^。この辺りの演出は三池さんの“狙い”なのではないかと勘繰りたくなる(笑)。対する柴咲コウは、いかにもスター女優役らしい振る舞い(←柴咲もそういう意味では“本業をまんま”を演じてる訳だ)の中にもお岩さん同様<耐えるオンナの憎悪>を怪演!詳しくは書けないけど「よく、この芝居OKしたな〜」という凄いシチュエーションのシーンがあって・・・お岩さんの特殊メイクをしていなくてもめちゃめちゃ怖いわ!!その昔出演した「バトル・ロワイアル」での悪役をすっかり払しょくした彼女に今作が今後どういう影響を与えるのか・・・心配でもあり愉しみでもある^^。伊藤英明も出番は少ないながら、舞台では「全盲の小悪人役(しかもつるつるの坊主頭)」を巧演。「悪の教典」といい、この人、三池さんの仕事ではどんな役のオファーも受けますな(えらい)。
 
 怖〜いホラー描写もさることながら、断然目を見張るのは劇中何度も出てくる稽古場にこしらえられた<舞台セット>!これが幻想的かつクオリティー高くて・・・舞台が回転して変わる様子もまんま映画に取り入れているのは新機軸といえるかも(東宝の一番デカいスタジオを借りてセットを作ったそうだ)。但し、芸能取材やってる筆者から言わせてもらえばゲネプロでもあるまいし、稽古場にあんな立派なセットを作って稽古はしない(苦笑)。演出家も芝居観てるだけで全然演技指導しないし、その辺りのリアリティーはゼロだわ(笑)。

 三池さんの作品をある程度観ている筆者的には、以前の作品でも使われた演出に酷似しているショック場面もあったりしてちょっと笑っちゃったけど(無論、試写室で笑っていたのは筆者だけ:苦笑)、オチは藤子不二雄A先生のブラックユーモア漫画の味わいも。筆者は好きだけど、かなりグロなんで好みが分かれそうですな。三池さんの作品レベルでは並の上ぐらいだし。まぁ、ホラー映画が好きな人はどうぞお楽しみに❤あと「東海道四谷怪談」のストーリーを知らない人は、それだけはお勉強してから観に行ってくださいネ。


 それにしても8月にこの「喰女 クイメ」、そして11月にはまた新作が公開される三池崇史ー。さすが1年に5本の映画を撮る男!もう何本撮ってるのか、ついていけん・・・(苦笑)