其の472:アニメ映画「アシュラ」の出来は?

 超多忙の中・・・ジョージ秋山原作のアニメ映画「アシュラ」を観に行く(我ながら命削ってるわ)。内容が内容だけに早々に打ち切られそうだしさ(苦笑)。余り宣伝もされなかったんで知らない人も多いだろうが(ってゆーかしにくい)・・・この「アシュラ」、日本漫画史史上に残る“超問題作”のひとつ(注:永井豪の「ハレンチ学園」とかもその部類に入る)!ジョージ秋山先生を「浮浪雲」だけのお方だと思ってはあかん。なにが問題なのかは・・・以下のあらすじを読んでみてネ^^


 
 15世紀半ば・・・戦乱や飢饉によって大勢の人々が亡くなった頃。妊娠していた女が、やがて子供を出産。ところが、空腹に耐えかねた彼女は発狂、赤子を食べるため火の中に投げ込んだ!!直後に降り出した大雨によって一命をとりとめた子供だったが、誰にも育ててもらえぬまま、ひとり生きる運命となるー。8年後、彼(→のちに旅の僧侶によって“アシュラ”と命名される)は獣同然に生きていた。時には人を殺し、その肉を喰らって。そんな中、小さな村の人々と出会うことで、ようやく人間としての生活、仲間、愛情を知るようになるのだが・・・。


 ・・・まぁ、すさまじい話ですよ。“幼子が人を殺して、人肉を食べる”のは現在でも十分にショッキング&センセーショナル!筆者的にジョージ秋山の漫画といえば(世代的に)「花のよたろう」とか「デロリンマン」あたりになるんだけど(笑)、原作は筆者幼少時代の1970年から翌71年まで「少年マガジン」に連載された。第1話で描かれた<死屍累々の生き地獄>ぶりによって神奈川県で有害図書指定され、未成年への販売が禁止&社会問題にまで発展する事態に(→結局、未完で連載は終了。1981年になって「少年ジャンプ」で読み切りの“完結編”が掲載された)。同じジョージ先生が同年代に「少年サンデー」で発表した「銭ゲバ」といい、今作といい・・・先生も凄いけど、やっぱり“70年代”は人類にとっても凄い時代だった、と改めて認識した。そういった意味では、長い年月を経て、ようやく<映像化>した東映には敬意を表す(えらいっ)。

 原作を大分削ぎ落とした分(→原作にあった生き別れた父親と再会するエピソード等は完全にオミット)、ストレートにテーマがわかるように脚色してあるし、映像的にもCGを駆使して墨絵のようなタッチと陰影を表現していて日本製アニメのクオリティーの高さ(あと美術の美しいこと!)を存分に感じさせてくれる。

 けどね・・・原作読んでいる目からすると・・・やっぱり殺人&人食シーンを原作同様、ストレートにやってほしかった!!今作では全部“マイルド”且つ“オブラード”に包んでいるからね。やっぱりまんまやらないと「なんで主人公がこんな風になったのか?」という行動原理が弱くなる。生き地獄(そして人間の暗黒面)を容赦なく描いたうえで、アシュラの「生まれてこなければよかった!!」の絶叫が観ている人の心に響くのだから。原作から40年を経た今の表現でもこれか・・・と、ちとガッカリした次第。商売を考えずに<18禁>狙いで作ってほしかったわ。ホントに残念!!

 絶対にテレビでは放送不可なんで(だから観に行ったのもある。映画って、そういうものでもあるよな)ご興味のある人は原作(文庫で出てる)を読む&劇場鑑賞・・・お金ない人はDVD出たらレンタルでもして観て。アシュラの名付け親となる僧侶の声を北大路欣也、アシュラの声を・・・な、なんとあの野沢雅子が担当してる(驚)!!野沢雅子といえば「銀河鉄道999」の星野鉄郎や「ドラゴンボール」の孫悟空ほか、日本のアニメヒーロー界の<神声優>だが・・・よくぞ引き受けて下さいました!彼女の英断に感謝!!



 <どうでもいい追記>ふと思ったけど・・・70年代の漫画って、全裸のヒロインが活躍する「けっこう仮面」(永井豪)や浮浪児が主人公の「オモライ君」(これも永井)のほか、ちんぽ丸出し&エロの「がきデカ」(山上たつひこ)、ケチケチの守銭奴少年を描く「チョッキン」(吾妻ひでお)にバイオレンス描写満載の「子連れ狼」や「修羅雪姫」(共に小池一雄原作)とか、設定や描写がもの凄い作品が目白押し!!絶版ものもあるかと思うが・・・日本の少年たちには是非探し出して読んで欲しい。将来有望な夢溢れる大人になれるハズ(笑:ホントかよ)^^