其の473:北野作品初の続編「アウトレイジ ビヨンド」

 北野武監督最新作「アウトレイジ ビヨンド」を鑑賞(←本当に命削って映画観てる。我ながらバカ)。今作は北野監督初の“続編もの”。昨年の震災で製作が1年間延期になった今作ではあるが・・・興行的にも北野映画初の“ランキング初登場1位”ということで・・・たけしさん、おめでとう御座います^^。筆者的にも面白かった!
 「ヒットしているそうだから、いっちょ観に行くか」というのが大方の日本人の発想ではあろうが、前作をみていないと登場人物の関係上、ちと分かりにくいヨ。



 血で血を洗う内部抗争から5年後ー。関東一円を取り仕切る巨大暴力団「山王会」は二代目会長・加藤(=三浦友和)により、政界にまで影響を与えるようになっていた。「大友組」組長・大友(=ビートたけし)を裏切った石原(=加瀬亮)は、その“経営感覚”を加藤に買われて若頭に出世していた。そんな中、「山王会」の影響力に危機感を抱いた警察組織が組織壊滅に動き始める。マル暴の悪徳刑事・片岡(=小日向文世)は関西の巨大暴力団「花菱会」の存在に目をつけ両者の間を立ち回ることに・・・。だが「山王会」の先代と「戦争はしない」と約束していた「花菱会」の問題で、最初の作戦は失敗に終わる。そこで片岡は次の策略として、自身が「死亡した」と嘘の噂さを流していた大友を仮釈放させる。そして元「村瀬組」若頭・木村(=中野英雄)と大友を和解させ、「山王会」現メンバーに5年前の“ケジメ”をつけるべく「花菱会」へ接触させる。「山王会」攻撃の口実を手に入れた「花菱会」は秘密裡に2人に協力、「山王会」への攻撃を開始するのだが・・・!?


 前作も豪華キャストだったけど・・・今作はそれを更に上回る<超豪華キャスト>!!上記のあらすじ(→前作で生き残ったメンバーが再登場しているのがいいネ^^)に書いた登場人物以外にも「花菱会」の面々を演じる西田敏行塩見三省神山繁のほか松重豊高橋克典桐谷健太新井浩文中尾彬田中哲司名高達男光石研、白竜、菅田俊井坂俊哉・・・!北野作品は、キャスティングに関してメジャーな人を大勢使わないのが、これまでのパターンだったんだけど、今回は端役に至るまで凄いメンバー(監督が完成披露試写会で「事務所的にもギャラが大変」と半ばジョークをとばしていたのも頷ける)。なのに高橋克典なんて台詞一切なし(笑)!!・・・処女作「その男、凶暴につき」(’89)から全作すべてリアルタイムで観ている筆者としては感慨深いものがあった(しみじみ)。

 また、「宣伝」ではなんとな〜く“関東ヤクザVS関西ヤクザの全面戦争”をにおわせていたが・・・スケールアップしているのは事実だけど、そこまでのレベルではない(苦笑)。ただ前作の「縦社会の中で誰が生き残るのか!?」というシンプルな下剋上とも言うべきサバイバルゲーム的構成から、今作は大勢さんのキャラの思惑によって展開がより複雑になってきた。ここまでの凝ったストーリーもこれまでになく、北野監督の“進化”をひしひしと感じた。もし、本当にこの脚本を、前作でカンヌに行った帰りの飛行機の中で書いたというのであれば・・・マジで凄い(といっても、現場で日々内容変えるのは、これまた北野作品のパターンなのだが)。

“進化”ということで言えば、冒頭→→→<海中から男女の乗ったクルマを警察が引き上げるシーン>で、マル暴担当刑事2人のオフ台詞を被せて<5年間の経緯>の説明を済ませ+スタッフ&タイトルをパッパッと見せて、すぐさま本題に入る「語り口」の巧さにも・・・正直、驚かされた。今作には前作にも若干見られた“奇抜な構図”もなく・・・ホントに撮る度に巧くなってますよ・・・って、もし監督本人に言ったとしたら「生意気だ」と絶対怒られるだろうけど(笑)。

 前作最大の特徴ー“きつい言葉の応酬&凝った暴力描写”ですが、“凝った暴力描写”の比率は大分少なくなったけど(でも前のように「たけしの殺し方ノート」は健在だったそうだ。誰がどう殺されるのかは見てのお楽しみ♪)、“言葉の応酬”の方は関東弁に関西弁も加わり(=個人的には関西弁で怒鳴られるのが一番怖いと思ふ)、中盤以降の<たけしVS西田、塩見の罵り合い>は物凄い緊張感なんで、そこも見どころのひとつ♪

 
 前作を越え(これぞ“ビヨンド”)、全くダレることのない1時間52分。まぁ、強いて“欠点”を挙げるとすればー個々の人物の背後(家族関係ほか)が全く描かれないこと(→これは監督の“狙い”ではあるのだが)と、観客の“箸休め”となるダレ場がないことぐらいか。で、最後、ちょっと<意表をついたラスト>・・・いや〜、これ森プロデューサーも公開直前に言っていたけど・・・「3」あるな(笑)!「全員悪人、完結」なんてキャッチコピーついてるけど“あの先”が観たいよね。<ラスト>といいつつ、何気に続きを作った「●猿」なんて作品もあるんだから(笑)、そこは気にせず1本、2本間をあけてもいいんで・・・「3」の製作に期待したい。来年開催の「東スポ映画祭」で宣言してほしいわ^^!