其の372:これもありかも。「シャーロック・ホームズ」

 半月ぶりの更新です(誰か暇をくれ、暇を!)。日本ではイマイチ?ながら全世界では4億ドルの大ヒットになった映画「シャーロック・ホームズ」(’09)をようやく観賞!シャーロキアンを自認する筆者は不安ドキドキで観たのですが・・・これまでのイメージとは異なるけれど「まぁ、これもあり・・・かな」と。推理を楽しむミステリーとしてではなく<娯楽>として観れば、これはこれで面白い。数年前のイギリス旅行を思い出しましたぜ(=勿論、かのベーカー街に行ったことは言うまでもない)^^


 19世紀末のロンドン。名探偵シャーロック・ホームズ(=ロバート・ダウニー・Jr.)と医師ジョン・ワトソン(=ジュード・ロウ)らは黒魔術の儀式の生贄として若い女性を次々と殺害していたブラックウッド卿(=ちょいアンディ・ガルシア似のマーク・ストロング)を逮捕。のちに絞首刑となる。ところがブラックウッドは生前予告していた通り蘇り、再び殺人事件が発生!ホームズとワトソンの新たな冒険が始まる!!

 シャーロック・ホームズといえばコナン・ドイルの小説の主人公にして、誰もが知る世界一有名な名探偵(彼の熱狂的ファンは原作60編を「正典」と呼ぶ)。そんな彼だけにドイル以外の人が書いた小説や映像作品は世界中に多数あり!かのビリー・ワイルダーもオリジナルで映画にしているし、探偵以前の活躍を描いたスピルバーグ総指揮による「ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎」という作品も。今作も原作にインスピレーションを受けてアクションに重きを置いて製作された一編。原作でもホームズは「日本のバリツを習っていた(→“バリツ”については後述)」と書かれているので、格闘技に長けていたことも知られている。「謎ときは映画には向かない」という旨の内容をヒッチコックも発言しているし(→金田一ファンでもある筆者は必ずしも同意しないが)、宮崎駿がキャラクターを犬に置き換えて監督した「名探偵ホームズ」もアクション・テイストだった。そういう意味で「マッチョでアクティヴなホームズもありかも」というのが筆者の見解である。

 監督は「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」、「スナッチ」のガイ・リッチー(英国人)。今作は元々ライオネル・ウィグラムの<持ち込み企画>ではあったが、ホームズ・ファンだったリッチーも現代的アプローチで脚色されたホームズに惹かれ、監督を快諾したという。原作ファンなら分かるけど、今作はアクション主体でありながら(→おそらくプロデューサーのジョエル・シルバーの趣味にも関係)驚くほど原作の描写に忠実だったりする。

 ホームズの格好といえば<鹿打ち帽にコート>が一般的イメージだが、これは原作にはない(→後年、挿絵を描いた人が勝手に付け加えたもの)。よって、今作のホームズは帽子とコート着るとこ一切なし!また下宿内で思索に耽るときにはヴァイオリンを弾いたりするのも原作通り。で、事件がないときは部屋に篭り、室内が乱雑なのもまんま原作通り!他にも色々原作を彷彿させる描写が幾つもあるので・・・是非探しておくんなまし^^。
 惜しいのは・・・有名なパイプの形が従来通りのことと(→19世紀には、まだこの形状のパイプは作られていない。但し、映像的にはこの形状だと口にくわえたまま台詞が言えるので、スタッフも確信犯で採用したのだろう)ホームズがコカイン注射するシーンがなかったこと(→ちなみに当時は「合法」)。これはダウニー・Jr.が一時期ヤク中で大変だったので、シャレにならないから無しにしたのだろう(笑)。

 そんな俳優のお話。今作は<アクション映画>であるわけですが、ロバート・ダウニー・Jr.(米国人)は長年<詠春拳(→カンフー)>のトレーニングを続けていて、ほとんどの格闘シーンをノースタントでやりとげたそうだ。さすが「アイアンマン」(もうじき「2」も公開されるね)!ちなみに先述の“バリツ”とはエドワード・ウィリアム・バートン=ライトなる人物が考案した柔術の一種、“バーティツ”のこと。「バリツ」とはドイルの単なる書き間違い(笑)。ダウニー・Jr.は、どうみてもイギリス人にはみえないけど(苦笑)、それは大目に見てあげましょう^^。対するジュード・ロウもダウニー・Jr.同様、ほぼノースタントでアクションをこなし&ホームズとワトソンの関係を「明日に向って撃て!」のブッチとサンダンスに見立ててユーモアあふれるアドリブを現場で入れたりして「男同士の友情」の表現に助力した(ボーイズ・ラブではありません)。
 ちなみにブラックウッド卿は原作にはないオリジナル・キャラだが、原作では御馴染みのレストレード警部やハドソン夫人も勿論登場。加えてワトソンの婚約者メアリー(原作「四つの署名」に登場)に、女性全般を軽視していたホームズがその考えを改めるきっかけとなった女性アイリーン・アドラー(原作「ボヘミアの醜聞」に登場)が超重要な役柄で出てきたことは嬉しい驚きだった♪

 映像派リッチーだけに今作にもこだわりの映像多々あり。是非ものの<19世紀のロンドン>の風景を求めてイギリスのあちこちでロケ(→ニューヨークのスタジオでは主に下宿などの室内セット撮影)したほか、ホームズが「東京大学物語」の村上くんよろしく「瞬時に相手を倒す手順を考えるシーン(笑)」では、特殊なスーパー・スロー・カメラを使って衝撃による筋肉の震えや汗の水滴を撮影。戦いの臨場感を高めている。また中盤にあるホームズと大男との造船所でのバトルでは、5週間かけて実物大のタンカーを制作!豪快にそれが海につっこみます^^。これもジョエル・シルバーの趣味だと思う(笑)。

 
 さて、ここまで読んで<原作の某超有名敵キャラ>が書かれていないことに気付いた貴方はス・ル・ド・イ(→そうじゃない人は原作を読みましょう)!!勿論、今作にも出てくるのですよ・・・。で、その彼がどう観ても「続編」の相手になることをにおわせて終わる展開(やらしいわ〜:苦笑)。これもシルバーの策略かもしれんけど、ダウニー・Jr.的には「アイアンマン」に続くシリーズ作になりそうだし(→どうやら続編決定らしい)、リッチーもマ●●ナと結婚してた時は低迷してて、久々のヒットになったし・・・まぁ、諸々良かったんちゃうか(笑)!?

 
 <オタクな追記>テレ東で放送してたアニメ「真マジンガー 衝撃!Z編」(全26話)をDVDで観ているのだが・・・これが凄いの!ドあたまから超ハイテンション!ドクター・ヘルは勿論のこと、あしゅら男爵もブロッケン伯爵も登場^^構成・脚本・監督はかの今川泰宏だから、納得の内容!!これぞ、まごうことなき本来の永井豪大先生の世界!!長生きした甲斐があったゼッ〜ト!!!(by水木一郎