其の467:不定期更新「座頭市」シリーズ7

 久々に故勝新太郎主演「座頭市」シリーズを更新します^^


 
 1971年。意表を突いた内容で第22作目となる「座頭市」が公開された。タイトルは「新座頭市 破れ!唐人剣」。“唐人”即ち外国人(→もち、中国人)と座頭市の<異種格闘戦>(驚)!!監督・共同脚本は安田公義が担当。


旅の途中、市は瀕死の唐人から小栄という子供を預けられた。南部藩とトラブルを起こして追われていた隻腕の唐人剣士・王(=ジミー・ウォング!!)が小栄の知人であることを知った市は彼に小栄を届ける。だが懸賞金ほしさに彼を追っていた藤兵ヱ一家によって、王、小栄らは姿を消してしまう。市は王、小栄の後を追うのだが・・・。


 毎度の安部徹らワル一家を筆頭に、ヒロインに浜木綿子香川照之の母ちゃん)、コメディリリーフ三波伸介(→市と同じ盲目の按摩役)、タフマン以前の伊東四朗ら「てんぷくトリオ」を投入した今作だが・・・やはり最大のウリは「片腕ドラゴン」ことジミー・ウォングの出演だろう(→劇中では王羽(ワン・ユー)名義)。しかもジミーさんの役、まんま本国での当たり役やん^^!

 ジミーさん(大西じゃないよ)に関しては、以前このブログに経歴も含めて書いたので、詳細はそちらを参照して欲しいのだが、今作でも「片腕ドラゴン」同様、超人的ジャンプ力&手で石を叩き割る怪力を披露(もちろん「座頭市」だけに腕チョンパや耳チョンパもあり^^)!これまで数多くの剣豪たちを亡き者にしてきた座頭市でも「こりゃ負けるんちゃうか?!」と思わせる程の腕前を見せる。今シリーズ・・・いや「時代劇」という“大枠”から見ても戦うのが双方ハンディキャップありという設定からしても<異色作中の異色作>と言っても過言ではなかろう(当然“オチ”は・・・皆さんの予想通りですけど)。

 <勝新VSジミー・ウォング>は、そもそも香港サイドからの“売り込み”があってのものなのですが、当初売り込まれた相手は、な、なんと無名時代のブルース・リー!!!けれどもリーのアクション・フィルムを観た勝新は「こりゃ漫画だ」と一蹴してしまう・・・。歴史に“if”は意味のないことではあるけれど・・・もし、この時に勝新がOKしていたら<勝新VSブルース・リー>対決作として、双方の代表作の一本になったのではないか・・・と思うと、本当に本当に残念無念!!

 今作は同じ’71年に香港でも公開され大ヒット!その<香港版>はジミーさんが市に勝つというラストになっているらしいが・・・どうやら、これは単なる噂らしい(さすがにオール日本スタッフで2バージョンは撮ってないか)。余談だが、ブルース・リーが世界的カンフーブームを起こした「燃えよドラゴン」が日本で公開されたのは1973年の暮れのことである(惜しいかな、僅か2年後)。

 さらに余談だが、この’71年にはマカロニウエスタン「盲目(め●ら)ガンマン」も作られました。タイトルだけでもう地上波では放送禁止(苦笑)。


 
そして、この年の12月。破産宣告によって大映は29年の歴史に幕を下したー。



 
 翌1972年。「座頭市」第1作公開から10年の歳月が流れたこの年ー。

 勝プロは東宝と提携を結び、シリーズ第23作「座頭市御用旅」公開(監督はシリーズ3度目の森一生。同時上映は、勝プロ製作:勝の実兄、若山富三郎主演・三隅研次監督「子連れ狼 子を貸し腕貸しつかまつる」)。大映で最後に企画され、東宝で配給された最初の座頭市となった。



 市は旅の途中、強盗に襲われ金品を奪われた身重の女に遭遇。なんとか赤ん坊を取り上げたものの、女は息絶える。彼女の遺言に従い、赤子を父親に渡すため一路、塩原へ向かう市。ところが父親が不在のため、仕方なく彼の妹(=大谷直子)に子供を託し、市もしばらく逗留することにした。丁度その頃、鉄五郎(=三國連太郎)と子分衆(=石橋蓮司蟹江敬三ほか)が開催される祭りの儲けを目的に街へ現れ、人々を暴力で支配しようとする。老目明し・藤兵衛(=森繁久彌)は彼らの行動に目を光らせるのだが・・・。


 シリーズ2度目となる三國連太郎(鬼畜親分)のほか、剣豪に高橋悦史、お笑い担当に笑福亭仁鶴師匠、後に「勝組」の常連となる石橋蓮司に、大御所・森繁久彌も出演する超豪華キャスト。森繁も「グラマ島の誘惑」とは真逆の渋〜い演技を見せる(笑)。

 シリーズももう23本目・・・他作品の主人公とも戦った(「用心棒」)。外国人とも戦った(ジミー・ウォング)。さすがに<作劇>自体にもう目新しさはない。赤ん坊&少年の絡み+幸薄いヒロイン(大谷直子)にワル親分(三國)、心通わせるゲストキャラ(森繁)に、最後に倒す剣豪(鼻息荒そうな高橋)・・・ストーリーとキャラクターの配置は、シリーズ王道の“鉄板”パターン(→油がこぼれたツルツルの舞台の上での殺陣は新機軸ではあるが、着物に火がついての殺陣はすでに以前やってるし。市がヤクザ一家に“拷問”されるのは、どう見ても「用心棒」からのいただきOR当時流行したマカロニウエスタンの影響だろう)。でもその分、撮影・音楽・編集といった<技巧面>での工夫が加わっている。

 音楽(担当は村井邦彦)は“昭和歌謡”にポイントポイントで“浪曲”が加わる一見斬新且つ謎なテイストはさておいても(笑)、ヤクザ一家の面々の表情を早い編集で見せたり(その分、クライマックスの「火災シーン」は絵がつながってないけど^^)お約束のラストの剣豪との一騎打ちを“逆光”で撮影するというのはー「何か新しいことをやろう」というスタッフの意欲が感じられて良かった(撮影は勝新の盟友・森田富士郎)。全く余韻もなく「完」の文字が出るのも凄い(笑)!!シリーズの王道パターンをやりつつも「決してマンネリにはしない」のが後期・座頭市の素晴らしさのひとつだと筆者は認識した。


 
 定番のドル箱シリーズ「座頭市」と人気劇画の実写映画化(しかもバイオレンスたっぷり)「子連れ狼」の2本立ては凋落著しい日本映画界においてもヒット!これに気を良くしたのかどうかは定かではないが「〜御用旅」で行われた撮影、編集等の“新しい試み”は同年作られた第24作でより加速することとなるー。



        <この項、あと2回ぐらいで終了予定!もう少し我慢して読んでね^^>