其の460:不定期更新「座頭市」シリーズ3

 勝新太郎主演作「座頭市」シリーズの第3回目を更新します。

 第4作「座頭市兇状旅」(’63)がシリーズとして公開されると、前作の倍となる興行成績を上げる大ヒット!座頭市は一躍、大映の“ドル箱作品”となる。そんな中、作られたのが第5作「座頭市喧嘩旅」(’63)。監督は後に「大魔神」を手がける安田公義が担当。

 
 すっかりヤクザ連中から一目置かれるようになった市(→道中、いきなり命を狙われることがしょっ中起こるのも“お約束”のひとつ)。旅の途中、座頭市は堂山支家の喜助に下妻一家との喧嘩の助っ人を依頼される。これを目撃していたのが、下妻一家の助っ人を探していた岬の甚五郎。そこで甚五郎は、座頭市と喜助を殺すべく浪人たちをさしむけたものの、逆に市の居合斬りに遭い、甚五郎は情婦と共にその場から逃げ去る。そんな中、市はお屋敷勤めをするお美津(=藤村志保:若っ!)を、追ってきた武士から助ける。彼女は乱暴しようとした若殿に抵抗したことで、追われる身になっていたのだが・・・。

 
 1作目同様、2つのやくざ一家の抗争に巻き込まれるパターン。そんな中、いいとこの娘を助けるお話なんだけどー少々、ストーリーが分かりにくい&市とタメをはる“凄腕の剣豪”が不在なんで、これまでの作品と比べても残念な出来!脚本はこれまで何度も書いた犬塚稔の担当なのだが・・・彼もネタ枯れ、あるいは短期間による執筆で筆を誤ったのかもしれない(違ってたらメンゴ)。



 翌1964年。なんと、この年には4本もの作品が相次いで公開(驚嘆すべきスピード)!!第6作「座頭市千両首」は監督に池広一夫(←本来は1作目の担当を予定されていた)、カメラマンは名手・宮川一夫だ!


 以前、はからずも斬ってしまった男の墓参りの為、ある村を訪れた市。すると、千両箱強奪事件が発生し、国定忠治(=今回演じるのは島田正吾)一家と市が犯人だと代官らに決めつけられてしまう。市は千両箱を探して身の潔白を証明しようとするのだが・・・!?


 劇中、時代が「天保15年」と紹介される今作。今回は悪代官、そして上納金千両を狙う浪人(→再び城健三朗こと実兄・若山富三郎と共演)たちとバトルを繰り広げる。再び若山&坪内ミキ子が出演するけど、共に前回とは全くの別人役。余談ですが、勝新と長谷川待子の<混浴シーン>もありマス(時代が時代なので、過剰な期待はしないように^^)。

 黒バックで市が敵を斬るオープニングからして池広&宮川の様式美が全開!一瞬、監督が市川崑と思った(笑)。

 ラストは予想通りの兄弟対決。馬上のトミー(注:若山のことよ♪)が鞭で市をしばく等、“西部劇”風味の味付けで「一粒で二度美味しい」一作となった。



 前にも書いたように、市が「居合い斬りの腕前を見せる」場面は<お約束>のひとつなんだけど、「ルパン三世」の石川五エ門みたいに、斬った後、一拍あって対象物がバラバラになるワケ。当時は切ったものをバレないようにうまく貼りあわせておいて、テグス(釣り糸)でスタッフが「せーの!」で引っ張る仕掛けなのだが・・・CGがない時代の映画スタッフの技術を“チェック”するのも一興だろう。続く第7作目となる「座頭市あばれ凧」は、オープニングが<蠅視点>で展開!それを市が一刀両断にしまっせ(「ホントは見えてるんちゃうか?」のツッコミは厳禁)。


 若い渡世人から鉄砲で射たれた市は、助けてくれた恩人の後を追うことに。辿り着いた町では、文吉一家と安五郎一家が対立していた。文吉は人々を喜ばせようと江戸の花火師を招くため姉娘・お国を迎えにやっていたのだが、市を救ったのがこのお国だった。これがきっかけで市は一介の按摩として文吉の家で世話になることに。そんなある日、家出していた文吉の息子・清六が家に帰って来た。実は市を撃ったのは、この清六!名高い座頭市を討って、男をあげようとしての行いだった。そんな清六が、安五郎の罠にはまって捕まってしまう。市は清六救出を画策するのだが・・・!?

 
 7作目でも(監督は前作の池広が連続登板)お約束が“鉄板”で守られている一本。前半は市が歩いていて穴に落ちるとか、知らずに女の行水のぞくとか(笑)コミカルなテイスト。それが後半、一転してこれまで以上の大バトルに発展(→吃音のワル親分を石井輝男作品でもお馴染み、遠藤辰雄が怪演)!いや〜、これは面白かった〜^^。1作目に続いて筆者のお薦め。




 同年の3本目、8作目となる「座頭市血笑旅」は1作目以来となる三隅研次が監督。まだ劇中、“人体まっぷたつ”描写は・・・ない(笑)。


甲州路を進む駕籠が襲われ、ある女が殺される。なんと博徒たちが、市と人違いして襲撃した為だった。はからずも自分の身代わりになった母親の為に、市は赤ん坊を父親の元へ送り届けようと、彼がいるという村へ向かうのだが・・・!?

 
 盲目の市が赤ちゃんを連れて(→勿論、お乳あげたり、おしめも替えないといけないんで市っつあん、大苦労)旅をする抒情的な一作。今作で父性に目覚めた(?)市は以後の作品においても、度々子供と仲良くする展開が増えていく。今回3人のライターが脚本に参加!そりゃ、同じ年に4本も作れば・・・犬塚ひとりじゃ無理だよな(苦笑)。

 
 道中、いろんなことが起こって(高千穂ひづる演じる女スリとか絡む)、ようやく父親の元へ着いたと思ったら・・・こいつがなんとカタギからザーヤクの親分になっていて、市は奴に命まで狙われることになるのだがーこの鬼畜親父を演じるのが「仁義なき戦い」で有名な若き日の金子信雄!!その非道ぶりは「仁義〜」を知る我々の期待を裏切らない(笑)。

 
 さすがに8作目だし、脚本家たちもなんか目新しい展開を・・・と考えたのだろう、「め●らの急所は耳だ」という事で、クライマックスはタイマツを焚いた集団との大格闘!なんと、そこで着物の裾や足に火が点いたままで殺陣を行う勝新!!すげー!!!現代の時代劇でもこんなんないゾ!!!


 この「〜血笑旅(タイトルも意味不明ながらも凄すぎ)」は、かの「東京オリンピック」の開催中に公開され、他作品を上映する映画館で閑古鳥が鳴く中(そりゃ、そうだろう)、超満員の観客を集めたという。「座頭市がいかに当時の観客に愛されていたか」という好エピソードでんな^^


 
 そして同年のラストを飾るのが9作目となる「座頭市関所破り(→監督は前年の「〜喧嘩旅」を担当した安田公義)」。以前、出演した高田美和も出るけど・・・またまた前とは別の役デス(もう時系列、続いてないっつーの)。


 旅の途中、ひょんなことから新助と名乗る旅人から手紙をことづかり、旅籠の女中・お仙へと届けた市。そこで彼は行方不明の父を探す、お咲と出会う。そんなある夜、お仙の旅籠に新助がやってくる。彼は土地の親分・甚兵衛の命令で、江戸へ強訴したお咲の父を殺していた。ところが代官に通じてあるという甚兵衛との約束は反故にされて追われた為、宿に逃げこんで来たのだったが・・・。


 今回はワル親分&悪代官の陰謀に巻き込まれる市。本当に市はヒッチコック作品同様、“巻き込まれ型”のヒーローだ。

 これまでも断片的にプロフィールが語られてきた市だが、今作では「5歳の時に父と生き別れた」との台詞が。そんな父親と同世代のアル中じいさんを市が慕う場面もあり・・・もし市が家族に恵まれ、失明することもなければ、渡世人になることもなかっただろうし、どれほど傑出した人物になっていたかと考えると・・・少々胸が痛くなった。

 安田が担当した「〜喧嘩旅」は市とラストで戦う“剣豪不在”でタマが弱かったというマイナス面があったが、今作では、あの平幹二朗がワルの用心棒として登場!1作目の天知茂以来の<好敵手>として作品を盛り上げている。


 
 この1964年、他社の配収が軒並みダウンする中(おそらく「東京オリンピック」の影響だろうね)、大映だけがアップのひとり勝ち状態!翌65年の正月パーティーの席で大映社長・永田雅一(通称:永田ラッパ)は「大映はめ●らで目があいたといわれるが、そのとおりだ。」と豪語したといふ(ラッパだけに)。

 
 その65年には「悪名」シリーズ、「座頭市」シリーズに続いて、勝新太郎<3つ目のシリーズ>となる「兵隊やくざ」シリーズ(共演:田村正和の兄貴・田村高廣)がスタート。勝新は3つのシリーズをローテーションでこなす多忙な生活を余儀なくされることとなるー。


          <以下、この項続く。あくまで不定期だけど^^>