約一か月半続いた自粛も解除されましたが・・・北九州市では早くも“コロナ第2波”の予兆が!気を緩め過ぎないように予防生活を続けたいと思う今日この頃・・・。
大分前から「書く、書く」と書いておきながら放置していた三隅研次監督作「斬る」(苦笑:申し訳ない)。ちょっとだけ“おさらい”で三隅研次監督について書くと、大人気漫画の実写化「子連れ狼」シリーズで<マーシャルアーツの達人>として世界的に知られる他、勝新太郎の「座頭市」をシリーズ化させた立役者であり、市川雷蔵による「眠狂四郎」1作目の不人気を2作目にして立て直し、これまたシリーズ化させた凄い監督である。
そんな三隅による「斬る」(’62)は「剣」(’64)、「剣鬼」(’65)と合わせて三隅研次の「剣」三部作と呼ばれている。・・・誰が名付けたのかは不明(笑)。ぶっちゃけ、監督が三隅で主演が市川雷蔵という事しか、全くつながりのない3本!それなら「新選組始末記」(’63)とか入ってきてもよさそうだが・・・深く考えるのは止めよう(笑)。
「斬る」は数々の書籍において、どれも誉めてある・・・筆者も初の“人体真っ二つシ-ン(←これは遺作「狼よ落日を斬れ」にもあり)”含めて面白い映画だと思っているけれど・・・3本トータルして考えると、一番面白いのは「剣鬼」という考えに到達する。
「斬る」は先述の“人体真っ二つ(画面は引いたサイズ)”に加え、俳優の演技指導と美術に拘る三隅が藤村志保を歩くシーンだけでもしごきにしごいた・・・とか、三島由紀夫原作の現代劇「剣」では剣道部の夏合宿のシーンがあるのに、会社都合で真冬での撮影となり、三隅もスタッフ、キャストも大変だった・・・とか様々なエピソードが伝えられ、これはこれで興味深い2本なのだが、当ブログでは3作目の「剣鬼」の扱いが「斬る」より過小評価されているような気がしないでもないので、「剣鬼」についてサクッと取り上げる事にします^^。
母親が男子禁制の大奥にいながら謎の妊娠、出産をした事で<母親の傍にいた犬との間に生まれた子供>と噂され、長年蔑まれてきた下級藩士の斑平(=もち、雷蔵)。ひょんなことから花造りの腕前を見込まれ登城を許されるようになる。更に馬よりも早い俊足が藩主(=戸浦六宏)の目に留まり、馬乗下役を仰せつかった。だが、その藩主の奇行が次第に目立ち始める。この事実を幕府に知られると藩がとり潰されてしまう・・・事の発覚を恐れた小姓頭(=佐藤慶)は、斑平に潜伏している公儀隠密の暗殺を命じる・・・!!
原作は柴田錬三郎(←「斬る」、「眠狂四郎」の原作者でもある)の同名連作小説の一編「人斬り斑平」の映画化。脚本は三隅、雷蔵が信頼していた星川清司が担当した(余談だが星川は後年、小説家に転身し時代小説「小伝抄」で直木賞を受賞)。
「出生に奇怪なバックグラウンドがありながらも花を愛する心優しい武士」を市川雷蔵が好演!馬よりも俊足(驚)、居合術に生まれついての才能がある(再び驚)と少々キャラ設定がご都合主義っぽいけど(笑)、観ている間はあまり気にならないのが演じているのが市川雷蔵だから。それぐらいピッタリの役。
当ブログはいつものように<ネタバレ禁止>を掲げているので長々とは書きませんが、三隅の演出(クランクインが8月半ばだったそうだから、外ロケは暑くて大変だっただろう)は、体制側に取り込まれ“人斬り”になってゆく斑平の生き様(とその顛末)を過不足なく描いている。クライマックスの<花畑での主人公VS大勢の敵との戦い>は必見!思うに三隅は「剣」以外に現代劇も監督したし、女性映画も演出した人だけど、1960年の「大菩薩峠」2作(これも雷蔵主演)から晩年まで「時代劇」に関しては快作、傑作を連発していたと思う。ちなみに今作では人体真っ二つとか、首チョンパ、手足バラバラとかないからハードなシーンがダメな人でも安心してご覧頂けます(筆者はそういうシーンも好きだけど:笑)^^。
この作品次第で「剣鬼」はシリーズ化が予定されていて、2作目に「刃士丹後」をやるのはほぼ決まりで、雷蔵・星川含め、会社も了承済だったそうだが・・・興行的に失敗。「剣鬼」シリーズの構想自体が失くなってしまったのが、つくづく残念である。もし実現していたら、今回のこのブログのタイトルも・・・“「剣鬼」シリーズ総括”とかになっていた筈だ(苦笑)。
これも何度か書いてきた事ですが・・・巨費をかけた超大作や映画祭で賞を獲ったものが必ずしも面白い訳ではないし、大ヒット映画でも大して面白くないやつが多々ある。逆に低予算でも優れた映画はいっぱいあるし、公開当時ヒットしなくても面白い映画は山ほどある。「斬る」は公開当時、評価も高く、ヒットしたそうだから“映画史にも記録された” 。個人的に「剣鬼」も同様に未来に語り継がれていくようにしたい!
<どうでもいい追記>また誕生日を迎えて年を食ってしまった。そんな中観たのが出崎統監督のTV版「エースをねらえ!」。・・・子供かよ(苦笑)。