其の461:不定期更新「座頭市」シリーズ4

 勝新太郎主演:映画史上最強のハンディキャップヒーロー「座頭市」シリーズの4回目を更新します^^。


 
 1965年には3本の「座頭市」が公開された。その先頭を飾ったのがシリーズ10作目となる「座頭市二段斬り」(監督は、このシリーズ、唯一これだけ手掛けた井上昭)。・・・さすがに10本も順を追って見続けると、筆者も市が友人か知り合い、あるいは親戚のひとりのような気に・・・(苦笑)。

 
 市の“盲人”としての師匠が何者かに斬られ、その娘(→またまた坪内ミキ子だが、またまた前回とは別人)が女郎に売られたことを知った市が助けにいく・・・というお話。ちなみにタイトルの“二段斬り”は、クライマックスのバトルで、市が“二刀流”で戦う宮本武蔵状態に由来する。

 
 時系列を離れて以降、次第に愛嬌のある明るいキャラに変わった来た市だが、今作ではさらにコメディリリーフとして三木のり平師匠を投入(まだ「桃屋」のCM出る前)、さらに笑いを足す作風に!特筆すべきは、のり平師匠の娘役として出演しているのが、何とあの小林幸子(これが映画初出演)!!歌も披露して可憐な少女を好演・・・古い映画を見直すと、こういう<愉しみ>もあるね(人に歴史あり)^^。勿論、さっちゃんが後年、お家騒動で芸能界を騒がせることになろうとは、この時点では誰も予想すらしなかっただろうけど(笑)。

 使い手の用心棒役が加藤武(→市川版「金田一耕助」シリーズで「よ〜し、分かった!」の迷台詞を発せられる有名なあの警部さんよ♪)というのが・・・市の相手としてはタマが弱くて残念ではあるのだが、無声映画風セピア色の回想場面、そしてマエストロ伊福部昭ボレロ調音楽・・・と、ストーリーに目新しさはなくても、何かしらやってくれる10作目であった。



 
続く第11作目は「座頭市逆手斬り」。監督はシリーズ2度目の登板となる森一生三木のり平に続いて、今作では藤山寛美が登場。彼が“ニセ座頭市”として悪さする(笑)!

 アクション的にはラストに出てくるお約束の“剣豪”は不在ながら、またまた<市VS集団戦>を用意して満足させてくれる(オープニングもテロップの出し方で遊んでるし)。この当時の大映プログラムピクチャーの面々(三隅研次森一生池広一夫ほか)によるレベルの高い職人仕事を堪能できる仕上がりだ。


 スタッフが凄いことは当然ながら、言うまでもなく勝新も凄い。毎回の殺陣の考案ほか、白目むいていても<ナイトシーン(→夜といっても、照明あててるのよ。そうじゃないとホントに真っ暗で何も写らないから)>では照明の“熱”を感じて、キチンとバミってある立ち位置に行くとか・・・。勿論、それはスタッフの計算&それを勝新がキチンと対応できる技量があることで成立するわけで、今更ながら当時の映画人たちの仕事ぶりに感服する他ない。



 
第12作目の「座頭市地獄旅」。監督はシリーズ3回目の登板、三隅研次!脚本には「時代劇の父」と呼ばれる巨匠・伊藤大輔(代表作:「忠次旅日記」ほか)!!音楽は勿論、伊福部昭大先生・・・という壮々たる豪華スタッフが集結した。


 市は、一路<江の島>を目指して船旅へ。そこで市は将棋好きの浪人・十文字糺(→「仁義なき戦い」、TVドラマ「探偵物語」でお馴染み、強面の成田三樹夫)を知る。江の島に着いた市は、船中にいたイカサマ師の親分・江島屋に呼びつけられ、相手を退散させたものの、この騒ぎで通りがかりの芸人・お種の娘ミキが負傷、破傷風を起こす。責任を感じた市は、破傷風の特効薬を買うために十文字から授かった十文叩きの妙技で金を集め、なんとか薬を購入。市らは回復したミキらと箱根へ湯治に向かうが・・・。


 これまで以上に市と女性(→演じるは岩崎加根子)の心の機微が描かれた情感あふれる一作。病が治った娘に礼を言われ、感涙する市。市は本当に“心優しきアウトロー”だと再認識。リアルに考えれば、こんな優しい侠客がいるわけないんだけどさ(苦笑)。
 
 将棋好きの凄腕浪人に成田、彼を親の仇と狙う病持ちの侍に山本学。この他、大島渚作品の常連俳優・戸浦六宏に「渡る世間は鬼ばかり」や「サッポロ一番」のCMやってた藤岡琢也も出ているのだが・・・皆、若いな〜!当たり前だが。しかも、いま名前を挙げた方々の大半が鬼籍に・・・。“昭和”が遠くになったなぁ・・・(しみじみ)。

 クライマックスは、当然、剣豪・成田三樹夫との一戦なんだけど→市も将棋が得意(!)ということで、歩きながら互いに“脳内将棋”指しながら王手をかけた瞬間、バトル!!このジリジリとした展開はいいゾ^^

 
 余談だが・・・後年、勝新が自身のプロダクションを興した際、その1本目を手掛けたのが社会派の巨匠・山本薩夫(略してヤマサツ)!!そのヤマサツは今作に出演している山本学の“叔父”・・・!これは後の未来の暗示か、はたまた単なる偶然か!?(単に業界が狭いだけだろう)



 
翌1966年。シリーズ第13作「座頭市の歌が聞える」公開(監督:田中徳三)。なんでもタイトルは石原慎太郎の執筆中だった作品の<仮題>を大映社長・永田雅一(通称:永田ラッパ)がもらったものだそうだが・・・本当?カメラマンには名手・宮川一夫、1作目に続いて天知茂が待望の再登場(勿論、前とは別人の役っス)!!!


市は高崎で只ものではない殺気に包まれた浪人・黒部玄八郎(=天知)とすれ違う。その同じ日、市はやくざに襲われた為吉を救ったものの、市に財布を託して亡くなってしまう。市は盲目の琵琶法師と共に一の宮へ。街の人々は板鼻の権造(=佐藤慶)一家の暴力に悩まされていた。そんな中、市は宿場女郎のお蝶(=小川真由美)に按摩を頼まれたが、そのお蝶は黒部の元妻だったー。


 女郎に堕ちたかつての妻(小川真由美)を身請けするために市を斬ることになる浪人を天知茂が平手造酒とはまた違った形で好演!やっぱり“明智さん”はいい役演るよな〜(→分からない人は土ワイで放送されていた「江戸川乱歩」の美女シリーズを鑑賞すること^^)。小川真由美も後年の松竹版「八つ墓村」(金田一耕助役が渥美清!)と異なり、艶っぽいながらも鬼女に変貌しないいい役だった(笑)。

 今回は<ワル親分&その一家を叩いてからの剣豪バトル>パターンから<剣豪倒して、ワル親分一家倒す>逆パターンに変更。第8作「〜血笑旅」(’64)ではタイマツを焚いた集団が登場したが、今回の親分・佐藤慶は太鼓を鳴らして市の耳を攪乱する作戦に。画期的な作戦ではあったが・・・ここまで回が進んだ市は、ほとんど<スーパーマン化>しているので、“結果”は書くまでもなかろう(オチは書かないけどネ)。




 同年、第14作「座頭市海を渡る」(監督:池広一夫)。“海を渡る”といっても大陸へではなく、船で瀬戸内海通って四国に行くだけなんだけど(笑)。脚本書いたのは何と、先日大往生なされた新藤兼人監督だ(池広は助監督時代、新藤監督に師事)!!


 これまでに斬った数多くの人々をともらうべく、市は四国の札所巡りの旅へ。その船の中でワルをこらしめた市だが、馬に乗って追ってきた栄五郎に襲われ、止むなく彼を斬る。意気消沈した市が馬に乗ると、なんと殺した栄五郎の家に到着!カッとなった妹のお吉(=安田道代、現:大楠道代)に抵抗することなく腕を斬られる。だが事情を察したお吉は一転、市を介抱することに。彼女の話では、栄五郎が三十両の借金のために、村の山賊軍団・藤八(=山形勲)から命じられて市を襲ったという。そして市を弟の仇と狙う男が藤八にそれを頼んだことも分った。そんな藤八は土地の支配権を握る画策もしており、その土地がお吉のものだった為、邪魔なお吉に女房になれと脅かす藤八。それを知った市はお吉の後見人として、真っ向うから藤八一家と対立することとなる。そんな二人の様子を村の名主たちはじっと見守っていた・・・。


 遂に座頭市においても第14作目にして、シリーズ初の<手首チョンパシーン>登場!それを書いたのが新藤監督というのもー後の彼の作風を考えると・・・いやはや南友(BY永井豪)。

 ぶっちゃけ、これどう見ても「七人の侍」からヒントを得た“反七人の侍”的ストーリー。山形勲たちはもろ“野武士”だし。違うのは農民たちが誰も立ち上がらず、全部市にやらせようとするイヤらしい存在として描かれている点(苦笑)。

 「中学生日記」、「あばれはっちゃく」の東野英心(旧:東孝彦)の他、田中邦衛や井川比佐志がちょい役で出ていたりと、いま観るとあなどれない作品。市が久々に負傷したり(粗筋で書いた通り)、大楠との淡いラブロマンスが強調されていたり(池での水浴シーンあり。でも時代が時代なんで過剰な期待はしないでネ)なかなかの味のある一作だ。




 細かいことですが・・・にしてもDVDに入っている「予告篇」観ると・・・どのカットも本篇と画のアングルだったり、背景の建物や台詞とかが微妙に異なるんだよね。これは予告篇用に事前にシーンを抜粋して撮っていたのか、それとも本篇撮影時にもう1バージョン撮影したのか・・・う〜ん、わからん!!謎だ。



 

 そして、またまた年も明けて1967年。第15作目「座頭市鉄火旅」公開(監督:安田公義)。藤村志保が2度目の出演。&以前の三木のり平藤山寛美に続いて今作では未だシリアスじゃなかった頃の藤田まことコメディリリーフに。プラス前の小林幸子の代わり(?)に、今度はチータこと水前寺清子も登場、歌も披露する。前作に出演していた東野英心の父・東野英治郎(初代水戸黄門)が出演するのは・・・もしやバーター的な契約があったのだろうか(偶然だろう^^)。


 偶然、市は何者かに斬られたヤクザの親分・庄太郎の最期を看取り、旅芸人の一行と共に庄太郎のシマである足利にやってきた。庄太郎亡き後、足利の人々を苦しめるヤクザの岩五郎の賭場(→タイトルの“鉄火”の由来)に現われた市は、イカサマの裏をかいて大儲け!追ってきた子分たちを斬った市は、居合わせた鍛冶屋の仙造(=東野)の世話になることに。元刀工の仙造は市の刀が師匠の作であることに加え「いつ刀が折れるか分からない」と市に告げる・・・。


 市の命ともいえる仕込みの命運をメインに据えた今作。そりゃ、あれほど人を斬ってくれば刀もダメになるって(笑)。当然、市は修繕のため東野に刀を預け、その間旅籠で働くんだけど・・・そこをワル親分(→これも、またまた登場の遠藤辰雄、現:遠藤太津朗さん・・・7日、心筋梗塞のため死去。享年84。大女優・山田五十鈴さんの訃報とあわせご冥福をお祈り致します)が迫ってくる。春川ますみ演じるワルの情婦もふてぶてしくてGOOD!!

 今作には黄金パターンの剣豪がいない為、当然、見せ場はやくざ一家との<1人対集団戦>が展開される訳だが「タイマツ」、「太鼓」に続いて、今回敵が考えたのは樽を足元に転がして動きを奪う作戦!!これに対して市がどうするのか・・・これは観てのお楽しみってことで♪ただ、筆者的には思ったより藤田まことチータの出番が少なかったので・・・ちょっと残念だったわ。




 そんな1967年。髪の伸び方にあわせて製作される3代シリーズのローテーに嫌気がさした勝新は、ある行動に出る・・・。





                    <この項、さらに続く。完結までにあと・・・数回??>