其の448:ついに観た!「ノストラダムスの大予言」

 前回紹介した「ハロルドとモード」も該当しますが、「スパルタの海」や「原子力戦争:Lost Love」ほか、近年“未ソフト化”、“封印作品”が続々とソフト化・・・という、大変良い傾向が続いています(「いちご白書」もしかり)^^。そんな中、絶対にソフト化不可能と噂される“幻の封印作”を遂に観ました♪その名も1974年の東宝作品「ノストラダムスの大予言」(ジャーン)!!!未だに一度もソフト化されない、いわくつきの作品(東宝は他にも「獣人雪男」とかもあり)。どうやって観たのかって?それは・・・海外で出ているソフトを取り寄せたのですよ。こういう作品観るには金と時間がかかりますな(汗)!
 記録によれば1980年11月にズタズタにカットされつつもテレビ放送・・・実は筆者もこの時に観た記憶があるものの、断片的にしか覚えてなくて<長年、改めて観たい映画の一本>でした。

 
 環境研究所・所長の西山(=丹波哲郎)は公害の撲滅に励むかたわら、代々家に伝わるノストラダムスの予言書「諸世紀」の研究をしている。そんなある日、彼の一人娘でバレエ教室の講師・まり子(=由美かおる)の恋人であるフリーカメラマンの中川(=黒沢年男)がアフリカから帰国する。再会を喜んだのも束の間、「夢の島」に巨大化したナメクジが大量発生との一報が入り、現場に急行する西山たち。この日を境に日本各地で様々な現象が続発することとなる(→赤潮の発生、骨が縮む奇病や奇形児出生率の増加、都内の地下鉄トンネル内に一夜にして巨大植物が発生・・・ほか)。
 これを受けて西山は過度の開発が人類を滅亡させる要因として、必要以上の生産を止めるよう政治家たちに提言するものの相手にして貰えない。国際会議でも先進国と発展途上国が対立する中、エジプトで雪が降ったり、太平洋上の海面が凍りつく等の異常現象が発生!!加えて成層圏に滞留した放射能ニューギニアに降り注いだ、とのことで国連調査団が派遣される。だが、程なく彼らは行方不明となり、第2次調査団として西山や中川(←こいつまで何故?)らが現地へ急行する。するとジャングルの中では放射能によって巨大化したコウモリやヒル、さらに<食人族>と化した原住民が一行に襲いかかる!・・・異常気象の結果、世界中の穀倉地帯が大打撃を受け、大半の食糧を輸入に頼る日本では悲観した人々が暴徒化する。果たして人類はどうなってしまうのか・・・!?


 
 ご存じの通り、<原作>は五島勉先生が予言を解説した70年代の大ベストセラー「ノストラダムスの大予言」シリーズ。あの「1999年、7の月、地球に恐怖の大王が・・・」っていう、アレですわ(←筆者含め、当時の素直な日本人たちはマジで来たるべきその年にビビってた)。その解説本を「ゴジラ」シリーズの大プロデューサー・田中友幸が自身のプロデュース作「日本沈没」や「人間革命」が次々と大ヒット、その勢いで(?)企画したのが今作。監督を依頼された舛田利雄(脚本にも参加)も物語がないと映画にはならないから、さすがに当初は「できない!」と一度断ったという(当然だ)。そこで著名な科学者たち(→農林省・西丸震哉氏を筆頭に作家・半村良先生も)から意見を聞きつつ、ストーリーが構築されていった。舛田のほか、<協力監督>として坂野義光もスタッフに入っているが(共同脚本&海外ロケ等にも参加)、これは「ゴジラ対ヘドラ」(’71)からの“公害つながり”・・・かもしれない^^。

 
 上の粗筋読んだだけでも(オチは書かないけど)・・・凄い展開でしょ(笑)?<地球破壊王ローランド・エメリッヒも真っ青の大パニックムービーですよ!6億5千万円(当時)の巨費が使われた今作。海外ロケに特撮、大量のエキストラに山ほどの資料映像&写真のオンパレードでスペクタル度は満点。しかし、この「ノストラダムス〜」は単なる封印作品ではなく、知る人ぞ知る「底抜け超大作」の一本なのだ!!

 
 <放射能=巨大化>という単純な図式は下より、珍エピソードの羅列が今作最大の特徴。物語の割と序盤、環境の極悪下でノイローゼ気味だった開発大臣が発狂、何故か木に登って「どんぐりころころ〜♪」と歌ってるし(爆笑)、妊娠が発覚した由美かおるは「どんな時代になろうとも子供を産む」と決心した途端、唐突に砂浜でバレエを踊り出す(笑)!将来を悲観した若者たち(ヒッピー)はわざわざ集団でバイクにまたがって海に飛び込み自殺&ヨットに乗った面々は、ほとんど「万博」のコンパニオンみたいなメイクと衣装で“死の航海”に出る(失笑。)
 また欠かせない<特撮部分>では、気温上昇のあおりを受けて湾内のタンカーが爆発、コンビナートが次々と炎上していく様はまだ良しとしても、都内から逃げようとした人々の車で大渋滞の高速道路で横転事故が起こると、とても車とは思えない爆発が起こって、勢いで車が次々と炎上、大火災となるのは完全に「ゴジラ」状態で・・・無理ありすぎるだろ(爆笑)!
 余談だが特撮は<昭和ゴジラ>の後期特撮監督:中野昭慶が担当(やっぱり)。他作品からのシーンの流用も一部あるが、紫外線の影響による“山火事シーン”ではセットのミニチュアに引火して(ホント)砧にある東宝撮影所・第7スタジオが全焼するシャレにならない事件が起きた。この被害推定額1億5千万円(当時)が、全体の<予算>に入っているかどうかは・・・わからん(笑)。

 
 妙に快活&得意の説教を全編に渡ってブチかます丹波哲郎(めちゃ当たり役)を筆頭に、いまでは“美魔女”の由美かおる(乳出しあり)&未だ髪の毛があった頃の黒沢年男のほか、志村喬山村聡司葉子、「東宝特撮」の常連・平田昭彦、「予言」を読む岸田今日子(ナレーター)など豪華メンバー出演の大ヒット作(→この年、「日本沈没」に次ぐ興収2位)が何故“封印”されたのか?

 公開1週間後、この映画を観たある青年が所属していた団体の上層部に報告。すると、粗筋にも書いた<ニューギニアの原住民による食人シーン>と、粗筋にはわざと書いていない終盤に出てくる丹波の想像→→→<全面核戦争後に突然変異した人類(ミュータント)が登場するシーン>の2つが「被爆者を怪物視し、偏見を広めている」として大阪府原爆被害者団体協議会と原水爆禁止全面軍縮大阪府協議会の2団体からクレームがついたのだ。新聞沙汰にもなった結果、東宝は問題場面を削除&大手新聞朝刊に謝罪広告を掲載。これが未だに尾を引いている・・・というわけ(一度、1986年に問題場面をカットしたビデオとLDの発売が告知されたが、結局中止となった)。
 これまた<余談>だが、先の「日本沈没」同様、今作も連ドラ化の予定もあったそうだが「日本〜」の視聴率が振るわず話は流れ、映画の方も田中が続編を企画するも(=一説では五島先生が主役というお話)公式発表までに至らずボツになった(そりゃそうだ)。

 
 70年代に少年時代を過ごし、1999年も遥かに過ぎた21世紀の<現代>を生きるアラフォーの筆者としては<最悪の中の最悪の事態>を大マジに、時にはバカシーンあり(笑)で強引に映画化した今作を<70年代テイスト溢れる懐かしい日本産特撮映画>として・・・且つ、今作が「文部省推薦」作品にして、同時上映が「ルパン三世 念力珍作戦」(しかも実写!)という<謎>も含めて(笑)大いに楽しんだ。東宝の社内事情が解消されない限り永久に国内では封印されるであろう「ノストラダムスの大予言」・・・めちゃめちゃ気になってる、そこのアナタも少々の時間とお金をかけて是非観て欲しいね!そんな努力も、人生を生きる上では時には大切なのよ♪

 
 <どうでもいい追記>実は今作は2バージョンあって、純粋な<日本オリジナル版>は幕末の長崎からスタート!当時の蘭学者、そして第2次大戦中、憲兵にシバかれる蘭学者の孫をも丹波が熱演してタイトルバックへ進む(丹波、計3役)。もう<ひとつのバージョン(アメリカで出ているやつ)>は、先述の冒頭部分を資料写真と丹波のインサートで再構成&ナレーション処理して(→外国人にこの辺の日本近現代史は分からないからだろう)、本篇に入るので御注意あれ(筆者は両バージョン入手した)!!


 ・・・これで「これは観たい!」と思う“封印作品”は大体観たかもな〜。筆者的には、これで大地震に備えた(あくまで趣味の精神面としてのみ:笑)。