<其の775>「地帯(ライン)」シリーズ第2弾「黒線地帯」

 多忙にしていたら更新の間があいてしまいました(反省)。その間、日本は全国的に梅雨になってしまいました・・・。雨嫌いとしてはトホホ。

 

 先日、石井隆監督の訃報が。しばらく新作の話が出ないなぁとは思っていたのですが・・・結果「GONINサーガ」が遺作となってしまいました。石井さんの作品も何気にほとんど観ていた筆者はショックを受けました。あの独特な空気感、男女の官能的な情念を映像に焼き付けられる作家が現在、他にいるだろうか・・・?稀有な“大人の映画”を演出できる方だったと思う。本当にとっても、とっても残念!監督のご冥福をお祈りいたします。

 

 話は変わりまして、シャマラン監督の「オールド」を鑑賞(大分遅い)。ある家族達がバカンス先の海岸で不思議な現象に巻き込まれる・・・という、いつものシャマラン作劇。オチも過去作と大して変わらない“パターン”だから予想出来たし、本人が出演しているのも相変わらず(出たがりだね~:笑)。そう書きつつ、シャマラン作品のほとんどを観ている筆者は・・・何なのだろうね(苦笑)。「シックス・センス」級の傑作を彼が撮る日は・・・来るのか!?

 

 ようやく本題(笑)!今回は、当ブログで何度も取り上げている石井輝男監督、新東宝時代のサスペンス作品「黒線地帯」(’60)です。「セクシー地帯」に続いて今作も先日DVDがようやく再発売されたのよ(喜)❤

 この「地帯(ライン)」シリーズについての基本的説明は前に書いたので、詳細を知りたい人は過去ログないし他のサイトで調べてね(忙しいのよ)♪それにしても「赤線」、「青線」の他にも・・・いろんな色の線があったのね(笑)。

 

 今回のお話は、フリーのルポライター(=天知茂)が、女性を麻薬漬けにして売春させてる犯罪組織を調査していたところ、相手の罠に嵌って殺人の容疑者に!主人公は自らの容疑を晴らす為、警察に追われつつ組織のボスを追う・・・!で、そこに三原葉子(新東宝、いつもの配役^^)が絡むというお話。

 

 ヒッチコックのイギリス時代の作品「三十九夜」(’35)にもちょっと似た感じのストーリー・・・現代では手垢のつきまくった筋書き(笑)。今作は石井さんとしては大蔵貢社長に手を加えられない為に、大蔵がよくわからない題材で作品を作ったと語っておられる(共同脚本も)。そこに前年、フランス映画「勝手にしやがれ」(’59)による<ヌーベルバーグ>に影響されたのであろう手法を大量に投入!!オープニングは何者かから逃げ惑う女性の様子(新宿駅周辺)を手持ちカメラで追う場面からスタート。スタッフ、キャストのクレジットも通常パターンから、後半は斜め上に文字がスライドしていく遊びもあり。勿論、全編に使われる音楽はモダン・ジャズ♪・・・影響バレバレ(笑)。

 起承転結がきっちり書かれた展開を嫌う石井さんは、観客が「!?」と思うシーンが生じても、当時の歓楽街の風俗の様子も盛り込みつつ、力業で話はガンガン突き進む。ぶっちゃけ、主人公と三原葉子の出会いの場面は少々無理があるし(詳しくはネタバレするので書かないけど、新東宝の映画は基本、低予算なので彼女の登場シーンは撮影所内の倉庫を使用して撮影したようだ)、監督のお気にいりだった三ツ矢歌子が主人公と横浜で出会った直後の芝居と台詞も・・・リアリティー的にはちょっとねぇ(苦笑)。映画完成直後、新東宝内では評判が悪くて、石井さんもガッカリしたようだが、かの淀川長治大先生は当時、好意的な評論を書いているし(後の「黄線地帯」でも好意的)、故・桂千穂先生(脚本家)は公開当時に鑑賞、大絶賛してるから、ストーリー展開的には観た人によって評価がわかれるところかな。先述のヒッチコックの「三十九夜」も「!?」と思われる強引な展開があるので、こんな点でも今作と似ていると筆者は思う。石井さんが意識したかどうかは不明だが(笑)。

 でもね、クライマックスの一連のアクションシーンは・・・ちょっと凄いよ!!これマジでオールロケしてたら大変な撮影だったと思う(ネタバレするんで書けないけど)。個人的にはここまでのマイナスはラストで帳消しになった❤これだから石井作品は注目せざるを得ない(笑)。

 

 筆者がシリーズ中、一番観たい「黄線地帯(イエローライン)」はDVD廃版したまんま!!こちらも再発売してくれ~!!マジでお願いします!!!