其の446:新作2本立て!

 またまた合間空いての更新です!ここまで忙しいと、筆者の原稿が早いか、巨大地震が来るのが早いか、って感じてしまう(笑)。
 先月、「ドラゴン・タトゥーの女」のリメイク版を観たんですけど・・・更新月がまたいでしまいました。ご存じ、スウェーデン発のベストセラー小説「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」(’09)はすでに映画化されてますけど興味なかった(笑)。では何故常日頃、“オリジナル派”を自称している筆者が“リメイク版”を観たのかって?そんなの監督がデビッド・フィンチャーだからに決まってるじゃないの!!「セブン」、「ゾディアック」に続く<サイコ・サスペンス第3弾>ですからね。ファンとしては観るしかないだろう^^。

 
 月刊誌「ミレニアム」の記者ミカエル・ブルムクヴィスト(=ダニエル・クレイグ)は、汚職事件の記事を巡る名誉毀損の裁判で敗訴、自ら雑誌を離れる。失意の彼のもとに、程なくヴァンゲル財閥の元会長ヘンリック・ヴァンゲル(=クリストファー・プラマー)から面会の申し込みがくる。屋敷を尋ねたミカエルにヘンリックは、40年前に起きた姪のハリエット失踪事件の真相究明を依頼する。調査を開始した彼の前に立ちふさがる一族の複雑な人間模様・・・。ミカエルは警備会社の調査員でありながら過激なヘアスタイルに体中ピアスとタトゥーだらけの天才ハッカー、リスベット・サランデル(=ルーニー・マーラ)に協力を要請、2人は次第に真相に近づいてゆくのだが・・・!?

 
 上映中の作品だけに詳細は避けるが・・・ミステリー好きの筆者としては原作未読ながら、途中で“オチ”は分かっちゃった(苦笑)。正直<衝撃の真相>ではないことだけは期待し過ぎないように^^。ただ、原作の舞台でもあるスウェーデンでわざわざロケした寒々しい光景はーこの下に人間の様々なドス黒い欲望が埋没してると考えるとメチャ怖くて効果的だと思った。「フリーセックス」と「税金高いけど、充実した福祉」だけじゃないんだね、やっぱり(笑)。

 今作で“特筆”すべきは、やはり何といってもクールなゴス系パンクファッションに身を包んだルーニー・マーラ嬢!フィンチャーの前作「ソーシャル・ネットワーク」(’10)で冒頭、主人公をフったちょい役の女子大生と、とても同一人物とは思えない(驚:この役、見た目だけではなく、生い立ちも非常に衝撃的)。加えて全裸も辞さない体当たり演技を披露!!根性を買われての抜擢ということだから、今後、彼女の出演作は要注目だろう(にしても映倫さん、あの程度のベッドシーンでモザイクいるかい??うっとうしくて仕方ないわい)。一方、ダニエル・クレイグは「007」の時ほどじゃないけど、そこそこ頑張ってた(笑)。

 映画は158分の長尺ながら飽きずに観られるが(ストーリー展開はオチは変えたものの、基本原作にそこそこ忠実らしい)少々注文もあり。ミカエルとリスベットが“相棒”になるのは中盤も過ぎてから・・・それまで2人のそれぞれの様子が並行して描かれるんだけど・・・ちょっと遅くないかい?フィンチャーは猟奇事件よりも2人の関係に興味を抱いて監督したのに。あと事件の真相の後の<後日談>も・・・ちょっと原作を拾い読みしたら、ほぼまんまだったけど・・・ここまで尺とらんでも、もっとダイジェスト時に展開できると思ったね!その分の尺を2人のコンビ部分に回してほしかったな〜。

 <フィンチャー=ビジュアル>のイメージが強いけど・・・前作「ソーシャル〜」同様、割と撮り方は普通。一番彼らしい部分はタイトルバックかもしれない(苦笑:このイメージCGは凄いゾ)。ヒットはしたようだけど・・・本国のオリジナル同様、2作目、3作目もリメイクされるのか?続報を期待して待つか(勿論、監督はフィンチャーで)。ちなみにスウェーデンでも皆英語しゃべっているのは気にしないように^^




  
 2本目は→→→ヒューマン戦争大作「戦火の馬」!ご存じ、スティーブン・スピルバーグの最新作です。好きな監督の映画がすぐに観られるのは嬉しいけど・・・前作「タンタンの冒険」がスベったからね〜、“スピ世代”の筆者としても、ちと不安を抱きつつ観たのだれど・・・これも上映中につき、ネタばれしないように書きますわ^^


 第1次世界大戦前夜のイギリス。農村に住む少年アルバート(=ジェレミーアーバイン)は牧場で生まれたサラブレッドの仔馬の美しさに魅了される。のちに競りにかけられたこの馬を“農耕馬”ではないと知りつつ、彼の父親が購入した事からアルバートは馬に“ジョーイ”と名付けて愛情を注ぐー。やがて戦争が勃発。ジョーイは家族の生活のため、やむなく“軍馬”として騎馬隊に売られ、フランスの戦地へと送られてしまう・・・。

 
 第65回トニー賞で5部門を受賞した舞台劇(←元は小説)の映画化。スピルバーグはこの舞台、最初から泣きながら観たそうだ(笑)。主人公を馬に据えて、あくまで“馬目線”で人間世界の不条理(=貧困や戦争)や人と馬の種を越えた友情(?)を描き出したのはスピの新機軸。馬にしてみたら、持ち主はコロコロ変わるわ、戦場で大砲まで運ばせられるわ、酷いなんてもんじゃないだろうね(苦笑)!

 お話自体は・・・割と最初からオチは分かる(苦笑)。日本の宣伝会社は<感動大作>として売ってるけど・・・「いいお話」ではあるんだけど、レベル的には「ジ〜ン」ぐらいかな?泣かせるには「シンドラーのリスト」の域に達してないし。ただ、極力VFXに頼らず撮影したお馬ちゃんの演技はホントにいいとこ使ってるので(スピなりの黒澤映画のオマージュもあるかも)、馬好きにはたまらないだろう^^。筆者的に「スピルバーグらしいな〜」と一番思ったのは「プライベート・ライアン」の“ノルマンディー上陸作戦”を彷彿させる戦場のシーンだけど(笑:でも「プライベート〜」みたいに兵隊の手足がもげたりしないのでご安心あれ^^)。

 出来は<中の上>ぐらいだけど、「タンタン〜」より遥かにマシ!というのが筆者の評価(ちなみにフランス人もドイツ人も英語しゃべっている理由は“ハリウッド映画”だから^^)。スピルバーグはこの後、バラエティーではない伝記映画「リンカーン」(12月・全米公開予定)に「ロボポカリプス」(来年7月全米公開予定)と監督作が控えてる!“世代”としては・・・またまた観に行かないとなぁ・・・。


 
 <どうでもいい追記>アメリカのアカデミー賞の作品賞はフランス映画「アーティスト」、日本のアカデミー賞は「八日目の蝉」って・・・下馬評通りじゃん!まんま過ぎてつまらん(勿論、筆者の予想通りになったことは言うまでもない)。