其の437:スピ最新作「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」

 ここ2本マニアックな映画が続いて“カルト映画大全集”と思われるのも嫌なので(苦笑)睡眠時間を削ってスピルバーグ3年ぶりの新作「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」を観た(暇が欲しい、暇が・・・)。筆者的に原作漫画の「タンタン」は、イラストを眺めたことあるレベルで、全然詳しくないんだけど・・・世代的に彼の監督作は外せないのよ。おまけにスピ初のフル・デジタル3Dアニメだし、製作にピーター・ジャクソンも参加してるしね!上映中の作品なんで極力ネタばれしないように書きマス。

 タンタンは、賢い愛犬スノーウィと共に世界中を飛び回って記事を書く少年レポーター。そんなある日、タンタンは露店で売られていた軍艦の模型に魅了されて衝動買い。すると、その直後から、正体不明の男たちが入れ代わり立ち代わり模型を渡すように迫ってくる。調べてみると、その船はかつて海賊に襲われ海底に沈んだ<ユニコーン号>と判明した。タンタンが帰宅すると、家は荒らされ模型自体は持ち去られていたものの、中に隠されていた羊皮紙の巻物を奇跡的に発見、読んでみると何やら暗号めいた文章が・・・。こうしてタンタンの大冒険が始まった!!


 ざっくり原作を紹介するとバンド・デシネ(→フランスやベルギーの漫画のこと)「タンタン」はベルギー出身のエルジェ(1907〜83)が1929年、新聞の若者向けウィークリー増刊号「プチ20世紀」に「タンタン ソビエトへ」を発表したことに始まる。大人気となり、以後、連載は媒体を変えながらも半世紀近く続くこととなったが、エルジェは’83年、24作目となる「タンタンとアルファアート」完成前に逝去。60年代には実写映画、90年代にもフランス・カナダ合作でテレビアニメシリーズも作られていて、決して今作が初の映像化ではありまへん。

 「タンタン」ファンのスピが、同じく原作ファンのピージャクを誘って製作を進めた今作。自身初の3Dアニメに挑んだ理由として「コスチュームや特殊メイクで身を固めたスター俳優を使ってやりたくはなかった。もっとスペシャルで、もっと原作に近くなくてはいけない。そうやってたどり着いたのが、今回のパフォーマンス・キャプチャーを使った3Dアニメーションだったんだ。」と語っている。その結果、俳優の表情まで取り込める最新の技術を駆使してタンタン役のジェイミー・ベル(=「リトル・ダンサー」)、ハドック船長役のアンディ・サーキス(=「ロード・オブ・ザ・リング」のゴラム、「猿の惑星:創世記ジェネシス)」のシーザー・・・とこの人、完全にパフォーマンス・キャプチャー専門俳優になっちゃってる)、サッカリン役のダニエル・クレイグ(=「007」!!)らの演技をアニメーション・キャラクター化していった(犬のスノーウィは完全フルCG)。

 原作の「なぞのユニコーン号」、「レッド・ラッカムの宝」、「金のはさみのカニ」をベースに、文字通りの<大冒険>が繰り広げられるのだけど・・・これ、一言でいえば<少年版インディ・ジョーンズ>だよな。原作が基本、<子供向け>だから、正直“謎”自体も目新しさ、まるでなし(てゆーか古い)!タンタンたちのアクションは完全に「未来少年コナン」や「ルパン三世 カリオストロの城」になっちゃてるし。リアルに考えればタンタンは劇中何度も死んでいると思う(笑:ちなみにタンタンは・・・両親いないのかしら?詳しい人、誰か教えてちょんまげ。)。

 劇中、何度も「これは実写か?」と見間違うばかりの街のロングショットや登場人物の質感はめっちゃリアル(髪や洋服ときたら・・・その昔の「ジュマンジ」とか1作目の「トイ・ストーリー」とはまるで比較にならない)!お話も古典的とはいえ悪くはないし、実写で撮影したら(CG処理前提でも)めちゃくちゃ大変なアクションやカメラワークが随所で行われるんだけど・・・それでも筆者が途中、眠くなってきた理由をよ〜く考えてみると・・・。

 「インディ・ジョーンズ」もそうなんだけど<アクションと併せてギャグがある>のは、スピルバーグ・アクションの基本パターン。旧知のファンとしてはそれがミエミエで「これ、多分こうなるぜ」っていう展開が何度もあった(苦笑)。それに加えて、例えCG処理していたとしても、生身の俳優が凄いアクションするから驚いたり感動するわけで・・・やっぱりCGキャラがなんぼアクロバティックな大アクションをしても感心する訳がない。

 「それはお前がもうおっさんだから、“少年の心”がないからだよ!」とツッこまれることも承知しているが・・・原作ファンに加えて(原作では目が点に描かれているタンタンが“イケメン”になっているのは、ファン的にはどうなんだろう?)小・中学生までならウケるんじゃない?ラスト、一応の決着はついてるけど<続編ありき>の終わり方には大不満(→当初から、これ3部作の予定。第2弾の監督はピーター・ジャクソンが予定されているが・・・製作中の「ホビット」2部作後になりそうだから、公開は大分先になるんちゃう?)。音楽担当は勿論、ジョン・ウィリアムズ御大だが・・・いつものように“心に残る”スコアではなかったな。そこんところも残念だった。まぁ、2作目が公開されたら観に行きますけどね(世代だから)・・・。


 ちなみにオープニングは「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」以来の懐かしいソウル・バス風アニメ。これは軽快かつテンポよいアニメでいいゾ^^・・・って、今更フォローしても遅いか(笑)。


 
 <どうでもいい追記>先日、東宝が漫画「進撃の巨人」の実写映画化を発表!・・・ってこれ、模型やCG駆使して作るにしても・・・マジでやったら相当の製作費がかかるゾ(勿論、チャチかったらコケるのは見えてる)。アニメ以外では無謀ともいえる企画だが、東宝には三谷作品やテレビドラマの延長映画とかで儲けた金を全部吐き出すつもりで真剣に取り組んでほしいと思う。
 ここでも一点疑問が。漫画ではボカして書かれているが・・・巨人の“股間”はどうするんだろう?パンツを履かせるのか?それとも「ウォッチメン」みたいにブラブラさせるのか?非常に気になる(笑)。