其の438:映像オモチャ箱「HOUSE・ハウス」

 今年もあと残り11日・・・。風邪を引いたらしく、体調激ワルな中、PCにむかってる。ボーッとした頭で、なにを書こうか考えた時・・・一瞬、タイムリーな韓流映画にしようかと思ったけど(「シュリ」とか)止めて(笑)日本の“カルト映画”を(なんでやねん)。
 「処女作には、その監督の全てが出る」とは映画界でよくいわれることだ。大林宣彦監督の商業デビュー作「HOUSE・ハウス」(’77)も・・・その言葉に当てはまる1作だろう。その後も繰り返される要素ーアイドル、ファンタジー、ノスタルジー、特殊効果、そして若い娘の裸(笑)全てがある!!近年、欧米でも今作のDVDが発売されカルト化しているそうだが<70年代・日本>のある意味“凄い”映画の1本(良くも悪くも)。

 
 演劇部に所属する中学生の“オシャレ(=池上季実子)”は、イタリアから帰国した父(=笹沢左保先生!)に突然再婚相手(=鰐淵晴子)を紹介されショックを受ける。夏休みに父やその女性と過ごしたくない彼女は、長年会っていなかった祖母の“おばちゃま(=南田洋子)”の家に部の合宿先として訪問することを思い付く。夏休みになり、オシャレとその仲間達計7人は“おばちゃま”の住む<羽臼(はうす)屋敷>へ。ところが井戸で冷やしたスイカを取りにいった大食いの“マック(=佐藤美恵子)”が行方不明になったことをきっかけに、彼女たちに次々と超常現象が襲いかかるー!!


 それまで数多くの大物外タレ(チャールズ・ブロンソンソフィア・ローレンほか)を起用し、CF業界ではメジャーな演出家だった大林宣彦が、撮影でよく東宝のスタジオを使っていたことが縁で「なにか企画はないか?」と声をかけられ、製作・初監督したのが今作(→最初は壇一雄原作の企画を提出したもののボツ。そこで当時十二歳の実娘のアイデアを元に「HOUSE・ハウス」を考えた)。大林さんの存在が後の“助監督経験なし”、“異業種監督の参入”路線を築いたことに誰も異論はなかろう。企画は通ったものの、遅々として東宝内部の製作準備が進まないため、大林自ら出演者たちを雑誌のグラビアやラジオドラマ出演で売り込み、外堀を埋めていったのは今では伝説的エピソード。

 撮影に関し<映画少年>だった大林が、それまでの映画への想い&培った技術を駆使して<映像化>していることが本篇には大いに見てとれる。合成にアニメーション、コマ落とし、唐突な回顧シーン・・・普通に撮っていいところでも必ず何か“やって”るもの!大林がノって撮ってることがー筆者にはよくわかるなぁ^^。本人的には当時、流行していたホラーや某パニック映画を意識して、商売として<大人>になって撮影にのぞんだろうとは思うけど。
 “映画監督”としては“新人”ながらCF界ではメジャーな存在とあって、出演者が凄い!まだ未成年だった池上季実子大場久美子(→「コメットさん」演るのはこの後)のほか、大スターだった三浦友和壇ふみ(→壇一雄の実子)のほか、尾崎紀世彦小林亜星、ブレーク前のゴダイゴのメンバーの姿も(驚)!清楚ながら、どこか怪しげな雰囲気の南田洋子は、口に目玉をくわえたりする!!・・・よく、この仕事受けたな(笑)。当時、美女の代表的扱いを受けていた鰐淵晴子なんて、登場する度に風が吹いてスカーフがたなびく(言うまでもなく映像はソフト・ファーカス:笑)!新人監督の映画にこれほどの超豪華キャストが集うのも・・・大林さんの人徳なんだろうな〜。
 それにしても上記の粗筋を読んでも分かるように、女の子たちのニックネームが・・・“オシャレ”に“ファンタ(大場久美子)”、“ガリ(松原愛)”、“マック”のほか“スウィート(宮子昌代)”、“メロディー(田中エリ子)”、おまけに“クンフー神保美喜)”・・・って。いや〜、さすがは70年代だなぁ(爆笑)!いまでは気恥ずかしい一発ギャグも多いし、時代臭がビンビン^^。70年代がいかに凄い時代であったかは、この欄でさんざん書いてきたが・・・今作でも池上は乳出し、松原愛に至っては<全裸水中シーン>まである!大林さんは<若手女優脱がしの天才>としても有名だが(本当)どう口説いて未成年を脱がせたのか、いつかご本人に尋ねてみたい^^。

 正直、話自体は大して面白いとは思わないけど(苦笑)、全体的にワイプが多く(→CFは基本、絵がつながらなくてもOKだから、そこは映画として誤魔化すためにやったことかも?違ってたらメンゴ)アニメや合成をふんだんに使用してビジュアル的にも派手だからー「いろんなものが入ったオモチャ箱をひっくり返したような映画」ーというのが、昔も再見した今も変わらぬ筆者の感想。大林作品は当たり外れが多いんだけど(外れの例:「漂流教室」、「ねらわれた学園」の峰岸徹の腹の目ん玉・・・ほか)今作の立ち位置は・・・外れギリギリのところで留まっている感じ。大林さんのいまのところの最高傑作は「さびしんぼう」だと確信しているが(勿論「転校生」、「時をかける少女」、ラストを除く「異人たちとの夏」もいいネ)大林さんには「さびしんぼう」を凌ぐ作品をここらで1発お願いしたいところだ。出来れば若手女優の裸も勿論ありで(笑)。




 ・・・さて、年内は・・・あと2回は更新して2012年に備えたいなぁ。某シリーズ映画についても・・・春には書きたい(願望)。