其の429:DVD化熱望!「いちご白書」

 何度か書いている“研究”の発表は・・・多分、新春だな(苦笑:こうも忙しいと年内はキビしいわ)。そのつなぎではないけれど、あまり間が空くのも嫌なので新ネタを・・・。
 これまで何回も書いてるけど・・・有名作にもかかわらず、未だDVD化されない映画は多々ある(メーカーさん、なんとかしてよ)。洋画で例を挙げるとビデオは出たのにDVDにならないベルトルッチの「1900年」や「ハロルドとモード 少年は虹をわたる」、「BIRD★SHT」・・・えとせとら、えとせとら。そして今回紹介する「いちご白書」(’70・米)もその内の1本。今秋、ニュープリントでリバイバルされるということで、すげー久しぶりに試写で観たんだけど・・・やっぱ、これイイわ^^!アメリカン・ニューシネマの1本であり、ユーミンがつくってバンバンが歌った「いちご白書をもう一度」の「いちご白書」がこの映画よん♪


 サイモン(=「去年の夏」のブルース・デイヴィソン)はボート部に所属するノンポリ大学生。彼の通う学校は、貧しい子供たちの遊び場になっている土地に軍関係のビルを建てようとしたことでストライキが起きていた。そんなある日、学生たちが占拠する構内に入ったサイモンは女性解放委員のリンダ(=先日リメイクされた「トゥルー・グリット」のオリジナル作「勇気ある追跡」のキム・ダービー)に一目ぼれ。彼はリンダ会いたさに運動に参加するようになる。しかし、リンダは闘争に対するサイモンの態度と既に他に彼氏がいたこともあり、サイモンをフる。失恋により、逆に闘争に対する意識が芽生えてゆくサイモンだったが、事態は悪化しつつあった・・・。


 1968年に実際に起こったコロンビア大学の学園紛争を描いたジェームズ・サイモン・クーネンの同名ノンフィクションの映画化(クーネンも学生議長役で出演)。そもそも「いちご白書」の“いちご”とは、コロンビア大学の経営者ハーバート・ディーンが大学の運営についての学生の意見を「学生たちがいちごの味が好きだと言うのと同じくらい重要さを持たないもの」として発言したことに由来している(後年、本人は間違った形で引用されたとフォローしてるが)。世界中で学生運動華やかりし1968年の出来事を2年後に公開しているから、そっこうで作られたわけだが・・・少々、そこに映画人の商売っ気も感じつつ(苦笑)、まだ学生運動が終わっていない中の製作につき、“当時の雰囲気・空気感(←これはいくら金をかけようが絶対に再現できない!)”がまんま真空パックされたタイムカプセルのような映画と言っていいだろう(撮影場所はコロンビアじゃないけど)。

 まず主人公がいいネ!一応、ボート部なんだけど全然体育会系じゃなくて、むしろ見た目は文系(メガネしてるし)。下宿先に「2001年宇宙の旅」のサントラを置いてるセンスもいい(筆者と同じキューブリックファンか^^)。で、彼が好きになるヒロインもそんなに美人じゃないし(笑)、女目当てに運動に参加するとか、あだち充の「ナイン」の主人公並に動機が不純なのが超リアル(→余談だが撮影中、ブルース・デイヴィソンとキム・ダービーはマジでつきあい始め、一時は結婚も考えたそうな)!想像するに、こういった経緯で参加した学生も・・・実際、結構いたと思うしネ。学校の部屋の隅で本番ヤってたアホ学生もー実際にいたんだろうなぁ^^。

 監督はCM出身のスチュアート・ハグマンで、これが長編デビュー作。当時流行してた既成曲(パフィー・セント=メリー「サークル・ゲーム」、ニール・ヤング「ダウン・バイ・ザ・リバー」、ジョン・レノンポール・マッカートニー「平和を我等に」他:←これらの曲の著作権の絡みでソフト化できないものと筆者は推理してる)を使用&CMで培った演出を駆使してー原作が日記風の手記なんで闘争を声高に叫ばず、あくまで<青春映画>のタッチでーサイモンとリンダら学生たちを軽やかに描き出すことに成功している。とはいえ途中、主人公を誘惑する巨乳女学生が晒すおっぱいのサブリミナル映像には大笑いしたが。

 <クライマックス>は学生たち&実力行使に出た当局(それも武装化警官や州兵たち)との戦いになるんだけど・・・ネタバレになるんで、多くは書かないがー最後の“痛み”が強烈で、観客の胸を抉る。個人的なことで申し訳ないが、筆者も再見なのに、ちょっと涙ぐんでしまった(まだ筆者も年齢の割に精神は若いかも?)。この衝撃が今作をいまでも語り継ぐ作品にしていると思う(70年のカンヌ国際映画祭ではグランプリをロバート・アルトマンの「M★A★S★H」にさらわれたものの、審査員特別賞が与えられている)。

 
 公開当時はまだ運動の成否については誰もわからなかった訳だが・・・結局、運動は<敗北>で終わり、結果、学生たちは現実に打ちのめされシラケていった。サイモンを演じたブルース・デイヴィソン、そしてリンダ役のキム・ダービーは今作以降は、あまり作品に恵まれなかった。監督のスチュアート・ハグマンも続く第2作「さらば青春の日」(’71)がだだすべりして、以後パッとせずに終わった。・・・3人にとっては今作が絶頂期で、後年は不幸だったかもしれないが、映画史に残る作品をつくった&出演しただけでも良かったのではないか。なにも残せず抹殺された映画監督や俳優は世界中に山のようにいるし。そんな3人のことを考えても筆者にとっては非常に感慨深い1本・・・それが「いちご白書」なのである。若い人にはDVDが出ないなら、リバイバルに行くことを強く薦める!!

 
 <追記>メインの“研究”をしつつ、合間に別ネタをちょいちょい更新しましょうかね。同じシリーズ、延々観てると頭がウニになりそうだから(苦笑)。しっかし、アイデアはあるんだけど、忙しくてね・・・。誰か、暇をくれ、暇を!!