其の424:祝DVD化「明日を夢見て」

 未だにDVDにならない映画は数多くあるけど(怒)、「ニュー・シネマ・パラダイス」(’89)のジュゼッペ・トルナトーレ監督、1995年度の作品「明日を夢見て」がよ〜やくDVD化!ワタシの記憶が確かならば、今作は公開後、日本ではビデオが発売されず、21世紀になってやっとDVD化(・・・遅いって)。筆者は公開当時、もちろん映画館で鑑賞。後に某民放系BS放送で2回ぐらいオンエアされた時に<ビデオ録画>しておいたから、そんなに影響はなかったけど(笑:ファンとして当然の行為)。正直、暗くて観るのが辛い映画ではあるのだが・・・いい映画です。ハリウッドの銃撃ズダダダ、爆発ドッカン“まるで頭使わない白痴的”アクション映画ばかり観ていては人間、ダメになります(筆者も好きだけどサ)^^。


 1953年、イタリア・シチリア島ー。中年男ジョー(=「グラン・ブルー」のセルジオ・カステリット)はカメラを積んだトラックで田舎町を周っては広場にテントを張り、「映画の新人オーディション」の参加を呼びかけている。「料金1500リラを払えば、もしかして自分も!?」とばかりに、どこの町でも老若男女問わず大勢の人間が集まってくる。中には娘を売り込むためにオーディションのカメラテストを受けたものの、金が払えずジョーに身体を売る母親までも・・・。実はジョーは“詐欺師”で、カメラに入っているのは使用済みのフィルムで、人々からオーディション料を騙し取って生活しているのだ。そんなある日、オーディションに来たことでジョーは修道院で暮らす、すこしおつむの弱い孤児ベアータ(=ティツィアーナ・ロダト)と知り合う。彼が次の町へと移動を始めた時、車内にはベアータが忍びこんでいた・・・。

 「ニュー・シネマ・パラダイス」は映画愛&人間讃歌に溢れた作品だったけれど、今作は同じ“映画愛”を題材にしながらも「ニュー・シネマ〜」とは真逆のベクトルで展開。「ニュー・シネマ〜」がコインの表なら、その裏に当たる作品といえるだろう。ちょっと映画知ってる人なら<男と薄幸の女のロードムービー>という点で、同じイタリアのマエストロ、フェデリコ・フェリーニの「道」との類似性も指摘できよう。ぶっちゃけ、トルナトーレが「ニュー・シネマ〜」の次に監督した「みんな元気」(’90)は小津の「東京物語」に似てるけどネ(苦笑)。

 公開当時「シチリアの情景を10歳の時から写真機で、13歳から映写機で、レンズを通して見つめ続けた。(今作は)私自身の映画です。」といった旨の発言をしていたトルナトーレ。その証拠に映画はいつも通り、舞台は監督の出身地シチリア(=「ゴッドファーザー」よろしく、マフィアのルーツでんな。マイケル・マン作品他で活躍する国際派カメラマン、ダンテ・スピノッティの撮影が見事)。勿論、音楽はエンニオ・モリコーネ♪最新作「シチリア!シチリア!」同様、どこを切っても<トルナトーレ印>の金太郎飴状態(笑)。

 今作に出演した約120人の登場人物のうち、プロの俳優は約20人(→こういった手法もかつてのネオレアリズモ映画的)!大半が素人かアマチュア劇団員とのことだが・・・皆、いい味出していて自然(ちなみに、かの有名デザイナー・ドルチェ&ガッバーナが特別出演しているそうだが・・・何処にいる??)。そんな中でも今作最大の収穫はベアータを演じたティツィアーナ・ロダトだろう。約2500人の中から選ばれた新人(当時19歳)。デビュー作でヒロイン、そして脱ぎ&Hシーンも堂々と演技(→モデル事務所に入っていたそうだが、親の承諾を得るのが大変だったらしい)・・・いや〜、大したもんだ!日本の若手女優にも見習って欲しいね(笑)!彼女を選んだ理由についてトルナトーレは「大好きなブリジット・バルドーを思わせる美しさ」とコメントしていたが・・・どう見てもバルドーには似てないって(笑)。ついでに書くと、このデビュー作が強烈だったためか、彼女はどうやらこれ一作で映画界を離れたようだ。極めて残念!

 ・・・最後はね・・・どうなるのかは本篇観てのお楽しみですけど・・・最初に書いたように、重く苦い。正直、可哀想だし観るのがツラい。ちょっと考えれば分かるけど・・・人間なぞ、全ての人々が幸福な一生を得られるわけもなし・・・今作が描いたのは、全ての人に当てはまるとは言わないけれど<人生の本質>・・・といえるのかも?先に“素人俳優起用”を“ネオレアリズモ映画的”と書いたけれど、今作と基本設定が似ている「道」の他、ロベルト・ロッセリーニの「戦火のかなた」、ヴィットリオ・デ・シーカの超有名作「自転車泥棒」、ルキノ・ヴィスコンティの「揺れる大地」も素人俳優を使ったネオレアリズモ!誰もが言うことだが、ジュゼッペ・トルナトーレはイタリア映画の良き伝統を受け継いでいる真の名匠だ。

 
 ようやく「明日を夢見て」がDVD化されたんで、次は(これまで何度も書いたけど)ベルトルッチの「1900年」をDVDで出してくれ(一度、ビデオになったんだから出来るでしょ)!!


 <どうでもいい追記>
 ①:いま余りに忙しい・・・多分、次回は・・・1週間は間空きそう。
 ②:「ピラニア3D」、日本でも公開^^!ちぎれたチ●ポがどう処理されるのか、あくまで洒落の分かる人は劇場へ行こう!!
 ③:現在、ない時間を見つけてニッポンの某懐かしシリーズ映画を鋭意研究中!但し、本数が多いから・・・ここで更新するのは(恐らく3、4回に分けて)・・・年末かな(ちなみに「寅さん」でも「釣りバカ日誌」でもないっス)!?