其の414:「ダーティ・メリー クレイジー・ラリー」

 福島原発メルトダウンで、このブログもいつまで書いていられるのか先行き不透明ではありますが・・・。

 これまで400本を越える映画をとりあげてきたけれど、ふと<カーアクションもの>が少ないことに気付いた。そこで誰もが知るマックイーンの「ブリット」・・・ではなく、「バニシング・ポイント」・・・でもなくて、今回はとりあえずの“代表”として「ダーティ・メリー クレイジー・ラリー」(’74)を紹介。主演は名優ヘンリー・フォンダの息子にしてブリジット・フォンダの父:ピーター・フォンダ!ちなみに映画「ジャッキー・ブラウン」で劇中、ブリジットがTVで観ていたのが、この作品だ(いかにもタランティーノらしいチョイス^^)。改めて観なおしたら現在の映画と比べると、牧歌的なノリでいいゾ♪劇中、めったやたらに音楽がかからないのもリアルでグッド!


 レーサーのラリー(=ピーター・フォンダ)とメカニックマンのディーク(=気持ち、ばんばひろふみ似のアダム・ローク)は田舎町のスーパーマーケットの売上金15万ドルを“非暴力的”に強奪することに成功する。さて、後は逃げるだけ・・・と思ったら、車の中には前夜ラリーが一夜を共にしたズべ公・メリー(=スーザン・ジョージ)の姿が!こうして仕方なくラリーとディーク、そしてメリーの3人は一路、南を目指す。一方、警察はすご腕のフランクリン部長(=ビック・モロー)が陣頭指揮を執るパトカー軍団&ヘリが彼らを徐々に追い詰めていく・・・!

 
 タイトルには2人の名前しかないけど、本当なら「ダーティ・メリー クレイジー・ラリー&ディーク」だよな(笑)。リチャード・ユネキスの原作「チェイス(追跡の意)」を「ヘルハウス」のジョン・ハフが演出。作品規模的にはB級だが、当時アメリカで大ヒットを記録した。

 いまでもカーアクション映画は時々作られているけど(「ワイルド・スピード」シリーズとかさ)この当時は、CGないからマジでやってるからね!やっぱり本物の迫力にCGはかないません。主人公たちの乗った車(→前半はシボレー、後半が「バニシング・ポイント」、「デス・プルーフinグラインドハウス」で活躍したダッジ・チャージャーだぜ♪)が猛スピードでかっとび、それを追うパトカーがバンバンクラッシュする^^!!なんでも撮影中に破壊された車は約50台にものぼり、その大半がパトカーで、解体寸前のものが20台程買われ他の車のボディや部品と組みあわされて破壊用のパトカーとして使われたという。余談だが、かつての日本の刑事ドラマも車がじゃんじゃんクラッシュしたけど(いまは・・・もうないな〜)そういう車は廃車寸前のものを色を塗りなおして使用したと以前聞いたのを思い出した。一応、これも“エコ”か!?

 主役のラリー役に先述したピーター・フォンダ(→代表作「イージー・ライダー」、「さすらいのカウボーイ」、「悪魔の追跡」ほか)。とにかくアクションが凄いので「絶対、危ないところはスタント・ドライバーが演ってるんだろう」と考えるところだが、なんと500万ドルの保険をかけ、一切スタントなしでピーター本人が運転!!これがホントの「クレイジー・ピーター」(笑)。
そして尻軽なヒロイン・メリー役のスーザン・ジョージ。“男目線”でいうと、こやつがいたせいで次第に逃亡計画がおかしくなってきた憎い存在。“スーザン”といえば今作以前、サム・ペキンパー監督「わらの犬」(’71)でレイプされる若妻役を演じていたが・・・今作ではエロなし!彼女のエロが観たい人は「わらの犬」を観てねん^^。そういえばセルジオ・コルブッチ監督のマカロニウエスタン「J&S/さすらいの逃亡者」にも出てたな(笑)。
で、この2人に“ばんばひろふみ似(注:あくまで筆者の意見デス)”のアダム・ローク扮するディークを加えた3人の若者<それぞれの過去と強盗をした理由等々>が逃亡の中、徐々に明らかになってゆく構成となっている。売りは勿論カーアクションではあるのだが、何とかして現状を打破しようとするアウトローたちの姿を描いた「青春映画」という側面もある。

 彼らと敵対するのは、超メジャーTVドラマ「コンバット」のサンダース軍曹こと、ビック・モロー大先生(←この文面ですぐ分かる人は、もういい歳こいてる^^)。今作でモローは、上司の顔色など一切窺わず犯人逮捕のためなら何でもする超キレ者警察官を快演。いまの視点で観ると、警察無線を盗聴しているラリーたちと“頭脳戦”を展開するところは・・・後に超メジャーTVドラマを映画化した「逃亡者」の保安官(→演じたトミー・リー・ジョーンズはこれでオスカー獲得)の<プロトタイプ>と言えるかも。この作品で演じるフランクリンはラリーたちの乗るダッジを止めようと乗ってるヘリコプターで体当たりまで仕掛けるんだけど(すげー無茶)・・・モローは映画版「トワイライトゾーン」(製作総指揮は、かのスピルバーグ)の撮影中、ヘリの事故に巻き込まれて亡くなったんだよね・・・。単なる偶然だが、筆者的にはちょっと・・・のちにつながる運命的なものを感じてしまった次第。

 
 映画研究者に言わせると、もう1974年はもう<ニューシネマ>の範疇に入らないようだがー今作の“結末”は、明らかにニューシネマ!!ネタバレになるから具体的には書かないけど・・・このブログの読者諸氏なら、これで十分、察しがつくだろう。本物の車が疾走するアクションに加えて、ほろ苦い人生・・・そして彼らの青春の行き先を自らの目で確認して頂きたい。


 <どうでもいい追記>映画のタイトルが長すぎて、いつものようにタイトルつけられなかった(涙)!あえて書くとしたら・・・「青春カーアクションの快作!ダーティ・メリー クレイジー・ラリー」かな。