其の399:「シチリア!シチリア!」で締める

 いよいよ2010年も終わりです。そこでこの冬、唯一楽しみにしていた「ニュー・シネマ・パラダイス」のジュゼッペ・トルナトーレ監督最新作「シチリア!シチリア!」を観た。上映中の作品なので、ネタばれしない範囲で書こうと思う。俳優は大半が日本的にはほとんど知られていない人ばかりなのだが・・・唯一、メジャーなモニカ・ベルッチが1シーン、カメオ出演していたのは驚いた(→ベルッチはトルナトーレの「マレーナ」で主演してる)!台詞なしの上、労働者の男にチュー&乳揉まれる役(笑)。

 
 1930年代。イタリア・シチリア州バゲリーア(→俗称「バーリア」。これが本作の原題)。羊飼いチッコの息子ペッピーノは貧しいながらも日々楽しく暮らしていた。だが彼が成長するにつれ、黒いシャツを着たファシズム支持者が街を闊歩する等、不穏な空気が漂う中、第2次世界大戦が勃発するー。終戦後、成長したペッピーノは共産党の政治活動に参加するようになる。そんなとき、出会ったのが後に妻となるマンニーナ。子宝にも恵まれ、父親となったペッピーノだったが・・・。

 1930年代から80年代まで<親子3代>にわたる大河ドラマであり、大いなる人生賛歌。作品規模から考えても現時点でのトルナトーレの集大成ともいえそう。こちらは「明日を夢見て」や「題名のない子守唄」みたいに暗くはならないのでご安心を^^。2007年、ローマで暴漢に襲われ怪我をしたトルナトーレが晴れて全快したのち、自分自身を見つめ直した結果、故郷バゲリーアを舞台にした作品を作ろうと思ったのが今作のきっかけ(これまで通り脚本も担当)。主人公の名前に自分の名前:ジュゼッペの愛称“ペッピーノ(→サミュエルの愛称がサムみたいなもん)”をつけたことからも、その強い思い入れが推察できる。

 ところがねぇ・・・構成が<エピソードの数珠つなぎ>なのよ。その1エピソード1エピソードがトルナトーレの演出&編集とは一見思えないほど雑(オチつく前に黒にフェード・アウトしたり)!しかも登場人物の数がめっちゃ多いのに、次のカットでキャラがいきなり成長したりするから、はじめのうちは誰が誰になったんだか多いにとまどったわ(苦笑)。撮影はかつてのバゲリーアの雰囲気を求めて、チュニジアにセットを組んで行われたが、スケジュールの都合で、今日<30年代のシーン>を撮ったら、明日は<60年代のシーン>の撮影・・・というかんじで美術さんも相当苦労したらしい(笑)。

 数珠つなぎにも慣れ、主人公が中年も過ぎたころ(→同一俳優が老けメイクしているだけなので、わかりやすい)詳しくは書けないんだけど・・・クライマックスに、あれよあれよと誰もが想定しない展開になって(それも2段構え)ジ・エンド!!このオチで<何故、1つ1つのエピソードの終わり方を雑にしたのか?>という謎がようやく理解できた!このために、上映時間2時間31分のうち、それまでのストーリーが2時間20分ぐらいあったのか(苦笑)!?トルナトーレは「時間の不在を描きたかった。時間はないに等しいというのがこの映画が言わんとしている哲学」とコメントしている。まぁ、今作を観ていないと、このコメントの意味は全く理解できないだろうけど(笑)。

 筆者の見解としては<故郷への愛>そして<時間の不在>という哲学以外に、トルナトーレは<古き良きイタリア映画の伝統継承&再創造>を目論んだような気がしてならない。<作品のタッチやスケール感>は(自然光をうまく使った映像美含めて)エルマンノ・オルミの「木靴の樹」やベルナルド・ベルトルッチの「1900年」、ルキノ・ヴィスコンティの「山猫」ほかを彷彿させるし、<エピソードの数珠つなぎ>構成は勿論、フェデリコ・フェリーニ風(中でも自伝的作品「アマルコルド」)。で、<オチのつけ方>はベルトルッチの某作に酷似と(→2本ほどあるのだけれど、具体的にタイトル出すとバレるので伏せマス)^^。出世作ニュー・シネマ・パラダイス」では<ほとばしる映画愛>を描いていたけど、今作でもまた主人公が映画観たり、フィルム集める場面もあるし、まんざら的外れな推理ではないと思うのだが。でもちょっとトリッキー過ぎたかなぁ!?観客みんなキョトンとした顔してたし(苦笑)。やりたいことはよ〜くわかったけど・・・正直スベったような気がする(ファンとしては残念)。

 音楽は言わずもがなのエンニオ・モリコーネ大先生^^!トルナトーレは映画のアイデアを考え付くと、まずはモリコーネに相談にいくそうだ。全盛期の御大の数々の天才的名曲と比べると、今作のスコアはやや劣ると思うのだが、映像を邪魔せず場面を盛り上げる腕は相変わらず。御大ももう、かなりのご高齢なので・・・生きてる間にどんどん作曲してほしいものです。


 <残念な追記>日本で発売された「アストロ・ゾンビーズ」のDVDだったが・・・よ〜くパッケージを読んでみたら、筆者が観たかった1968年の作品ではなく、何年か前に作られた「続編」だった(ガーン)!!ショック大です・・・(涙)。