其の389:ライミ原点回帰!「スペル」

 お盆明けのハードスケジュールで間が空いてしまいました(汗)。それにしても、この暑さは・・・やはり2012年に人類滅亡か!?そんな地球的規模の破壊も勿論怖いけど、日常によくあるささいな出来事がきっかけで自身の身に危険を感じるようになる方がリアルに怖いと思う。映画「スペル」はそんな恐怖を描いたサスペンス・ホラー映画!監督は「スパイダーマン」3部作の成功で、巨匠の仲間入りをしたサム・ライミ。といっても彼は元々ホラー映画の出身!これはライミが原点に帰った面白い映画だ^^!


 クリスティン(=「ホワイト・オランダー」のアリソン・ローマン)は、真面目で優秀な銀行の融資担当係。優しい彼氏もいてラブラブな毎日だが、次の次長職をライバル行員と争っていて気が抜けない日々を送っている。そんなある日、不動産ローンの延長を求めて不気味な老婆・ガーナッシュ夫人(=ローナ・レイヴァー)が彼女の元を訪れる。最初、彼女は上司にローンの延長を提案したものの、次の人事を考慮して申請を却下する。するとガーナッシュ夫人がその返答に激怒、クリスティンにつかみかかる!警備員にひっぱりだされた彼女は、その夜、クリスティンの仕事終わりを待ち伏せして急襲!!絶体絶命のクリスティンにガーナッシュ夫人は呪文のような言葉<スペル>を発して姿を消す・・・。翌日から様々な怪奇現象がクリスティンに襲いかかる!!果たして老婆が仕掛けたものとは!?

 冒頭にも書いたようにサム・ライミはホラー「死霊のはらわた」(’83)でキャリアをスタートさせ、その続編「死霊のはらわた2」(’87)や「キャプテン・スーパーマーケット」(’93)で<笑えるホラー>を描いてきたお方(「XYZマーダーズ」もあったな)^^。そんな彼がシャロン・ストーン主演「クイック&デッド」(’95)を過ぎた辺りから、ちょっと作品の傾向が変わってきたんだけど(苦笑)そんな彼が正に今作で<原点回帰>!本人も「戻ってきたかなという気はしている」とコメント^^
 但し、ライミ自身は「とはいっても、昔とは違うことをやったつもり」。確かに人間VS死霊のバトルだけでなく「エクソシスト」的要素も加わり、ライミの以前の作風とはかなり異なる印象も受けるものの、死の呪いをかけられた主人公が酷い目に逢うのは、ぶっちゃけ、それまでの盟友ブルース・キャンベルアリソン・ローマンと入れ替わっただけ(口からいろいろドバーッと吐いたりさ)という気がしないでもないけど(笑)。
 でも確かにライミはこれまでのホラー映画のパターンにオマージュを捧げつつ(→肝心なショッキング場面の撮り方や、タイトルバックに音楽もちょい一昔風。ユニバーサルのクレジットなんて昔のやつをわざわざ使用してるし)、バイオレンス描写を控え、その分、ヒロインを複雑な家庭環境で育ったことや過去のトラウマ、常日頃悩みを抱えているリアルな人物に設定。観客が感情移入しやすいキャラクターとなっていて、映像作家としての成長を感じられる(「スパイダーマン」の影響か?)。勿論、ライミの得意技でもある<笑えるショック場面>も沢山あり!頭に障害物が落下して婆さんの目玉が飛び出すなんて・・・漫画か(笑)!彼はそんなベタなギャグも含めて「恐怖と笑いは紙一重」だということをよくわかっていると思う。
 今作最大の見どころは妖婆・ガーナッシュ夫人のトンデモキャラ!目は片方、瞳の色が異なり、爪も入れ歯(→それも総入れ歯で、時々わざわざ外す!!)もめちゃ汚れてて・・・ビジュアルだけでインパクトあり過ぎ!このおばーちゃんが逆ギレして、時と場所を選ばず襲ってきたら・・・筆者は絶対戦わずにダッシュして逃げる(笑)。この<モンスターキャラ>は21世紀のホラー映画史に残るキャラだと断言しておこう。演じたローナ・レイヴァー、偉いっ!
 巨額の製作費で作られた「スパイダーマン」と比べれば遥かに低予算で作られたため、スタッフの数も必要最低人数。スケジュールもギリギリで、ライミ自身もかなりの<現場判断>を強いられたそうだが「僕は基本に戻り、その体験を楽しんだ」そうだ(→といってもチャチい訳じゃないよ)。常々ここで書いているように<巨額の製作費=いい映画、面白い映画>ではありませんから!オチは・・・まぁ、筆者の思い通りだったけど、この流れではああするしかなかっただろうから許すけど。

 
 唯一残念な事実は、日米共にこの映画がヒットしなかったことか(苦笑)。以前のライミ作品を知らない若い観客から見れば「スパイダーマン」シリーズしか知らない訳だから・・・仕方ないかも。是非、次回作の「スパイダーマン4」で(まだ降りてないよねぇ!?)興行的名誉挽回を果たしてほしいと思う。