其の388:こちらがオリジナル「十三人の刺客」

 間もなく公開される超豪華俳優総出演(役所広司を筆頭に山田孝之伊勢谷友介に「エロ男爵」こと沢村一樹、「SMAP」の稲垣吾郎古田新太のほか伊原剛志松方弘樹内野聖陽岸部一徳平幹二朗松本幸四郎市村正親)の時代劇大作「十三人の刺客」ですが・・・脚本が天願大介+監督が三池崇史という、あの衝撃作「オーディション」のコンビ!また三池が暴走して脚本にない演出(主人公の足を女が●●する!!)を施すのではないかと期待半分、不安半分(笑)。そんななか今回紹介するのは、そのオリジナル版の方ざんす。公開は昭和38(1963)年12月!主演は片岡千恵蔵御大!・・・古い!渋い!でも面白い^^!!


 徳川十二代将軍・家慶(いえよし)の治世であった弘化元年(1844年)。筆頭老中・土井利位(=丹波哲郎大先生)の屋敷前で明石藩江戸家老が、訴状と共に自決する。これが発端となって明石藩主・松平斉韶(=菅貫太郎)の異常性と暴君ぶりが明らかになったものの、事情を知らない将軍が実の弟である斉韶を老中に抜擢する意向を示したことから、土井は天下のため斉韶の暗殺を決意する。そこで命を受けたのが公儀目付の島田新左衛門(=千恵蔵御大)。彼は信頼できる仲間や子分たち(=嵐寛寿郎里見浩太郎西村晃山城新伍ほか)を集めて計13人による暗殺部隊を結成、参勤交代により帰国途上の斉韶一行を中仙道落合宿に誘いだし襲撃することにするのだが・・・!?
 ※ちなみに江戸幕府において政務実務の最高権力者が「老中」。将軍の直属で3〜5名置かれていました。「大老」は常置されていた役職ではありまへん。勉強になったかな?

 
 今作は実録タッチの「集団時代劇(→先駆けとなったのが同年7月に公開された「十七人の忍者」)」として有名&ラスト30分に及ぶ13人対53騎の殺陣シーンは、時代劇映画史上最長といわれている。脚本を手がけたのは池上金男こと池宮彰一郎。脚本の第一稿は原稿用紙600枚にも及んだという。この方、後に小説家として「忠臣蔵」を題材に、映画化もされた「四十七人の刺客」も書いとる(ちなみに「明石藩主暗殺」は史実にはない)。よほどの「刺客マニア」か(嘘、嘘^^)?「仲間を集めて敵を叩く」というベースは「七人の侍」からの<王道>ながら、途中、襲撃を断念し、要塞に改造した落合宿まで一切チャンバラがないのが画期的。そんな彼の指名で監督に抜擢されたのが工藤栄一である。

 工藤栄一(1929〜2000)は東映に入社後、59年「富嶽秘帖」で監督に昇進。数多くのチャンバラ活劇を手がけたが、やがて時代劇も衰退に向かう。今作はそんななかに作られた1本である。後に邦画の斜陽化で活躍の場をテレビドラマに移すが、中でもシリーズ第2作目から参加した「必殺仕置人」では<影>にこだわった映像美で人気を集め、根強い工藤ファンが多い(映画版の3本目も工藤が演出)。勿論、今作でも<光と影>の使い方は勿論、加藤泰ばりの<ローアングル>に<シンメトリー(左右対称)>と随所に工藤の映像美が堪能できる。

 
 「剣豪もの」・・・例えば宮本武蔵の巌流島とかなら「一対一」のタイマンなわけだけど、今作は「集団対集団」の肉弾戦!それもお互い、長く続いた天下泰平のため、まともに人を斬ったことのない侍の集団のわけだから・・・様式美あふれる戦いになるわけがない!そこで工藤はクライマックスの落合宿では明石藩役の俳優たちに死ぬ場所だけ指示して、あとはカメラが追いかけるから自由に動けーという前半とは異なるドキュメンタリータッチの大胆な演出を導入。
 おまけに刺客たちが上から落とす丸太は全て本物を使用(→当時はまだダミーで使う発泡スチロール等が普及していなかった)!落とされる俳優たちは衣装の下は完全防備でのぞんだものの、けが人が続出。現場には毎日、救急車が3台待機していたというから・・・役者稼業も楽じゃねーなー(苦笑)。

 
 俳優陣も千恵蔵御大はこれまで同様、余裕の貫録^^いまじゃ「水戸黄門」の里見浩太郎や故・山城新伍はめっちゃ若くてイキがいいぜ〜♪若き日の藤純子(現・富司純子)もちょこっと出てます。その中でも注目は「和製カリギュラ」こと松平斉韶(なりつぐ)を演じた菅貫太郎とその部下、鬼頭半兵衛役の内田良平
 菅は部下は殺すわ、人の女房に手出すわの冷酷非道好色で鬼畜なバカ殿役が容姿ともどもピッタリ!あまりにこれがハマリ役だったため、以後、こういった役のオファーばかりになって困り果てたというエピソードも。まるで「サイコ」のアンソニー・パーキンス状態(苦笑)。これがリメイク作では演るのゴローちゃんだぜ・・・大丈夫か?!
 一方、内田は日活のアクションスターだったため、時代劇は不慣れだったものの、殿が悪人だと分かりつつも部下として忠義を捧げる半兵衛を熱演。工藤も彼の演技力に惚れ込み、ラストの設定を内田のために変更したという(→どうなるかは観てのお楽しみ)。やっぱ敵役は強くて憎々しげでなければならない♪内田本人もこの経験が生きて、後に石井輝男の「ポルノ時代劇 忘八武士道(主演:丹波哲郎!)」に出演することは、この時予想していなかっただろう(笑)。
 
 
 こうして作られた今作は興行的には苦戦したものの、新しい時代劇=「集団時代劇」として高く評価され、工藤は以後「大殺陣」(’64)、「十一人の侍」(’67)と「集団時代劇」を演出する。そんな3部作の中でも最高傑作といわれる「十三人の刺客」・・・果たしてリメイク版はオリジナルを越えられるか!?いい意味でも悪い意味でもドキドキだ。


 
 <どうでもいい追記>
 ①:甥っ子を連れて映画版「仮面ライダーW(しかも3D)」を観たが・・・噂には聞いていたけど、いまのライダーはすげぇな〜(驚)!!2人で1人となる合体(←「バロム1」か、はたまた初期の「ウルトラマンエース」か)に、ライダー対ライダーの大バトル!!・・・ショッカーと戦っていたシンプルな時代が懐かしい。
 ②:ようやくレンタルがはじまった「ガンダムユニコーン エピソード1」を鑑賞。変身するガンダム、いいじゃないの!!10月30日から限定公開される「エピソード2(→シャアの再来と呼ばれるフル・フロンタルが登場。声優は池田秀一だ!!)」が楽しみだぜ♪・・・サンライズの広報担当のような文章を書いてしまった(苦笑)。