其の664:大人のエロスファンタジー「水のないプール」

 日本代表がなんとかワールドカップの決勝トーナメントに進んだと思ったら、史上初めて関東の梅雨が6月中に明けました・・・。地球の気候は大丈夫か?

 廃版になった映画のDVDソフトがファンの間で高額取引される事はよくある事ですが、今回紹介する日本映画「水のないプール」(’82)もその内の1つ。もっとも先日、再発売されたので、それも解消されたとは思いますが。主演は内田裕也(ロックンロール!)、故・若松孝二監督、初の一般映画となったファンタジックな作風の実録映画です(でもってエロい^^)。


 切符をひたすら切る平凡な地下鉄職員の男(=もち、裕也さん)。ある大雨の日の夜、公園のトイレで暴漢に襲われていた女・じゅん(=ピンク・レディー解散直後のMIEさん)を助ける。それが彼にとって、若い女性に目を向けるきっかけとなった。ある夏の日、男は子供にせがまれ、昆虫採集のために家族でピクニックに出かける。そこで偶然、青姦に耽るカップルを目撃、男の中で何かが弾けた。彼は昆虫採集セットをヒントに部屋にいる女性をクロロホルムで眠らせて犯す事を思いつく。準備を開始した男は、行きつけの喫茶店に勤めるねりか(=中村れい子)の仕事終わりを待って彼女の後をつけて・・・!!


 1981年に宮城県仙台市で発覚して世間を驚かせた「仙台クロロホルム連続暴行魔事件」が元ネタ(当時、マスコミも大々的に取り扱ったのにーネットではあまり記載がないネ)。映画ではひと夏の出来事っぽく描かれてるけど、実際の犯人(地下鉄職員ではなく、当時46歳の建設メーカーの営業マン)は5年以上に渡ってドアの鍵穴(映画では「窓の隙間」)からクロロホルムを注入して部屋の中の女性を眠らせて宅内に侵入していた。その数、70人を超えるという半端ない強姦魔による凶悪事件なのだ!・・・それが翌年に映画化されてるというのは・・・このスピードもいま考えたら大迫同様半端ないって^^。

 一説では裕也さん(←まだ若いから、金髪&ロン毛じゃないゾ)自ら企画を持ち込み(逮捕された犯人のコメント「バージンはひとりもいなかった」に爆笑したそうな)、若松監督が旧知の内田栄一(藤田敏八監督とのコンビが有名)に脚本を依頼したという。劇中、学校教師を装ってクロロホルム買うとか、犯す相手にコンドーム使う&ポラロイドで記念写真も撮るーとかは事実まんま。先に挙げたちょいちょい事実と異なる点は→→→内田栄一氏の脚色と思われる。ちなみに画面に向けて裕也さんが舌を出すのは裕也さんご本人のアイデアだって^^。

 内容が内容なんでローバジェット(低予算)ではあるのだけれど・・・元ピンク・レディーが出ているのも凄いけど、<ちょい役>でメジャーな人が続々登場(俗にいう「友情出演」の類いだろう)!沢田研二に安岡力也、原田芳雄常田富士男(「まんが日本昔話」)にタモリ赤塚不二夫先生まで!!この辺りがロックンローラー裕也さんの人脈だな^^!内田裕也はこの年「コールガール」、「さらば相棒」に出演した他、80年代は「十階のモスキート」(’83)や「戦場のメリークリスマス」(’83)、「コミック雑誌なんかいらない!」(’86)等の話題作・問題作に出演していった。当時を知る筆者から見ても<80年代の時代の寵児>のひとりだったような気もしますわ。

 
 ラスト(ネタばれするので書きませんが)も実際はあんなんじゃない。タイトルロールの「水のないプール」や印象的な映像が多い映画ではありますが、あくまで"夢犯"という<大人の男向けファンタジー>として描く故の脚色という事で。映画観て、主人公みたいに将来に煮詰まってるからといって、実際に真似したらアカンよ!!当時と違って街中に監視カメラはあるし、家のセキュリティーも格段に進歩してます。確実に逮捕されますから絶対にダメよ!!!


 ・・・異常に早く梅雨明けしたので、熱く長〜い夏になりそうだ・・・。水不足にならぬ事をただ祈るのみ。