其の458:不定期更新「座頭市」シリーズ2

 勝新太郎の代表作にしてアクション時代劇の傑作「座頭市」シリーズの2回目を更新します。なんせ映画だけでも26本あるから、ここからは何本かまとめて書きまっせ!

 
 前作の大ヒットにより同1962年「続・座頭市物語」が急遽製作された(またまたモノクロ)。脚本は前作と同じく犬塚稔。監督には勝新出世作「不知火検校」を手がけ、彼が「先生」と呼んで慕った森一生が担当する。

 
 前作から1年後ー。市(=書くまでもないけど勝新)はやくざ達とトラブルになったり、ガイキチ大名に按摩の依頼を受けたことから命を狙われる等あったものの、平手造酒の一周忌で笹川に向かう。そこに絡むのが前作と同じ役で登場する万里昌代と、隻腕の不良侍・与四郎(=城健三朗)。実はこの与四郎、市とは忌まわしい“ある因縁”があった・・・。


「続・座頭市物語」のタイトル通り、ストレート過ぎる続編。登場人物たちの多くが前作からまんま踏襲されているので(キャストも同じ)、最初の1本目を観ておかないとキツいので御注意あれ。劇中、市が「上州・笠間生まれ」であることや「兄弟がいる」こと等、断片的ながら市の人物像が明らかになってくる(ホントに少しずつだけど)。
 居合の腕前を見せる場面や博打のシーンは今作も健在!前作ではチャンバラシーンは少なかったものの、今回は冒頭からトラブルに巻き込まれるので(→勿論、市から手を出したものではない)アクションは増量されとります。
 この2作目最大の“ウリ”は城健三朗の出演(略すとジョーケン^^。ショーケンではない)。この<城健三朗>なる人物、実は勝の実兄・若山富三郎の芸名!!そのトミーが●●役を演じる(ネタばれなんで書かないけど)・・・ここがポイントですな。
 ところが最後がね・・・あっけないの。思わず「これで終わり?」とつぶやいてしまった。“史実の改変”してるしさ(「イングロリアス・バスターズ」か)。筆者的には物足りない1本ではあった。


 ちなみにこの年の11月、舞台版も上演。ここからも勝新の市への入れ込み方の強さが分かるだろう。



 翌1963年。3作目となる「新・座頭市物語」が公開。今作より(ようやく)カラーになりました^^。犬塚稔と梅林貴久生が共同で脚本を執筆、勝新の代表作の一つ「悪名」シリーズの田中徳三が今作でタッグを組んだ。


故郷・笠間への道中、市は前に彼が斬ったヤクザの子分たちに襲われるものの、市に居合を教えた師匠・伴野弥十郎(=河津清三郎)、更には弥十郎の妹・弥生(=坪内ミキ子)との再会を果たす。丁度その頃、「水戸天狗党」のメンバーが逃亡費用の工面で旧知の仲の弥十郎の元を訪れる・・・。

 
 冒頭から郷里の幼馴染と再会、さらには剣の師匠にも4年ぶりに会うことで市の過去がまたまた僅かながら明らかになっていく一篇。市が足湯につかるという現代的(?)なシーンもある。
 前回も書いたが・・・シリーズ初期の市はホントにモテる!この3作目ではヒロイン・坪内ミキ子から“逆プロポーズ”され、なんと市がヤクザ稼業から足を洗って結婚まで決意する驚愕の場面も(→勿論、そうなるわけはないのだが)。
 “ヤクザの抗争に巻き込まれ、最後は剣豪を倒す”のが「座頭市」シリーズの黄金パターンなのだが、今作でラストに戦うのはダークサイドに堕ちていた剣の師匠!!結果は言わずもがなだが・・・犬塚稔の重〜いテイストは今作でも続く。



 「続」、「新」ときた第4作目のタイトルは「座頭市兇状旅」(’63)。今作からシリーズが正式決定(やっと)!“兇状”とは“前科がある”という意味デス。田中徳三が続けて監督、万里昌代が三度同じ役柄で登場する(まだ1作目から何気に続いているのだ)。


上州・下仁田を訪れた市。ここの二代目親分・佐吉と、旅篭の娘・のぶ(=高田美和)は恋仲だったが、のぶの養父は佐吉の先代に遂われた元貸元で、佐吉とは不仲。その佐吉が彼の命を狙うヤクザの東九郎と浪人・蛾十郎の罠にはまった時、佐吉とのぶのことを思った市は自分の喧嘩として買って出たことで一旦は事なきを得たのだが・・・!?

 
 高田美和とヤクザの二代目(成田純一郎)をくっつけようとする市。これって・・・まさに「男はつらいよ」後半の寅さんの役割と一緒。各地をブラブラするところも寅さんと共通してる(笑:山田洋次大先生も影響受けたのかな^^)。
 劇中、実在の大親分・国定忠治(=演じるのは東映のエロ映画出る以前の名和宏だ!)と市が会話を交わす等、今回も参加してる犬塚稔の<史実好き(?)>をも感じる一作。毎回、主人公がザーヤクだけに極道が絡むわけだが、今回のヤクザたちもエゲつない!!市のことが好きだった万里昌代なんて、今作では浪人の情婦に身を堕としてる(哀)。この辺りの“暗さ”もきっと犬塚稔のテイストだろう。
 ラスト、何十人ものヤクザを相手に“ジェノサイド・マシーン”と化す市は圧巻(殺陣師はいるものの、どの作品も勝新が実際には殺陣をつけたと言われている)!!ラストに集団と大バトルするのも、このあと度々見られるパターンだが・・・これぞアクション時代劇ってもんです。勝新すげー!!


 この4作目にして、(ようやく)1作目から続いてきた“時系列”が終了!“重い&暗い”テイストから解放(?)された市は、更なる活躍を見せ(→「目が見えないのに、なんでこんなに強いの?」というツッコミは決してしないように^^)観客は日本映画黄金時代のスタッフたちの充実した仕事ぶりを堪能していく事となる。


                
             <「座頭市」シリーズ3に続く>