其の376:「板尾創路の脱獄王」は拾い物の秀作^^

 ・・・余りの多忙さに間があきました(泊まりの地方ロケもあったしね)。そんな中、リメイク作「タイタンの戦い」を3D版で観ましたが、浮き出し具合だけは「アバター」より良かった!全く深みのないどストレートのストーリー展開(ギリシャ神話まんまだから仕方ないか)も、いかにも娯楽でいいぞ。暇とお金を持て余している人にだけ薦めますぜ^^。

 
 <娯楽>といえば、お笑い芸人・板尾創路が監督・主演した、その名も「板尾創路の脱獄王」は、拾い物の<大娯楽作>!世間一般では吉本興業が「沖縄国際映画祭」の数合わせのひとつに製作された作品と思っている人が多数だろうが、これはマジで面白い!「日本批評家大賞」で新人監督賞に輝いたのも納得の出来。ここで何度も書いてるけど映画の<食わず嫌い>は損しまっせ。


 昭和初期ー。胸に<逆さ富士>の刺青をしている鈴木雅之(=板尾)が信州第二刑務所に移送されてくる。彼はこれまで2度脱獄している囚人。ところが収監して1時間もせずにまたも脱獄!看守長の金村(=國村隼)は、これまでも鈴木が線路沿いで捕縛されていることに着目、見事、刑務所近くの線路で彼を捕縛する。その後、幾度も脱獄を繰り返し、その度に線路沿いで捕縛される鈴木。男の奇妙な行動に次第に関心を寄せていく金村。何故、彼はいつも線路沿いに逃げるのか?そして何故、脱獄を繰り返すのか?そこには観客の想像を遥かに越える<理由>があった(本当)・・・!!!

 
 ダウンタウンのバラエティ番組で御馴染みの板尾創路(俳優やエッセイストの顔も持つ)がB級映画の雄・山口雄大監督に協力を仰ぎつつ<初監督作品>として撮り上げたのが今作。子供の時から<脱獄もの>が大好きで(「大脱走」や「パピヨン」)憧れ続けていたそうな(→筆者が公開前、板尾本人から聴いたのだから間違いない)。

 普通<脱獄もの>といえば、主人公の囚人(=複数の場合もあり)が企む脱獄の過程(→道具揃えて穴掘るとか、壁掘るとか)を看守との心理戦を交えて展開していくのが常だが、今作にいたっては<脱獄の過程>よりも<何故、男は脱獄を繰り返すのか?>という理由に迫っていくのが新機軸^^。冒頭、そして後半、そして最後とタイトルが3回も出る映画を筆者も初めて観たわ(笑)。

 板尾自ら演じた囚人・鈴木は一貫して台詞なし!その代わり(?)、後半、時代設定関係なしで唐突に中村雅俊の「ふれあい」を歌いだす(笑:本人によれば「台詞がない方が好き」なんだって)。主人公が無口&全体的に重いトーン、思わせぶりな演出(→某メジャー宗教的要素に、「修羅雪姫」を彷彿させるエピソード等。ところが色々解釈できるようにしただけで大して意味はないらしい:苦笑)が作品を支配しているだけに主人公の<意図>がまるで読み取れず、観客も劇中の金村同様、謎を<推理>しながら展開を見守ることとなる(これぞ「板尾ワールド」か!?)。

 「(吉本単独製作のおかげで)100パーセント、好きに撮ることが出来た」ーとはご本人の弁(唯一の条件は沖縄映画祭に間に合わせることだけだったそうだ)。初監督作品って、一般的に力が入りすぎた結果、シュールな意匠に走ったり、あるいは経験がない分、表現が稚拙だったりするものだが、今作は非常にわかりやすい正攻法な演出でキチンと撮っている!ラスト前の脱獄時は雷が鳴りすぎのような気がしないでもないが(苦笑)初監督での、このクオリティーの高さには大いに感心させられた。自身の名前をタイトルに冠したことからも自信の程がうかがえよう。

 そして数々の謎が明らかになった時に訪れる驚愕のオチ!!!いや〜、大笑いさせていただきました^^。普通は絶対にこれで終らないけど・・・やっぱり彼は才能あるね。芸人の性(さが)かもしれんけど。監督自らキャスティングした俳優陣(國村のほか、津田寛治石坂浩二の他、ぼんちおさむや「雨上がり」宮迫、キム兄まで)もハマってるし、次回作が大いに楽しみ!いや、絶対また撮って欲しい(ホラーや、いま流行りの3Dにも興味があるそうだ)!!


 
 <どうでもいい追記>忙し過ぎて、前売り券買ったのに未だ観ていない作品多数!・・・果たして、券を無駄にせずに全て観ることが出来るのか!?試写状は全て無駄になってるからなぁ・・・(涙)。