其の328:タイトルも凄い「エロ将軍と二十一人の愛妾」

 誕生から100有余年を経た<映画>というメディア。その中で様々なジャンルが生まれては消えていった。「女囚もの」、「拷問もの」そして・・・「艶笑コメディ」。それらの類いは21世紀の視点では<下世話な時代に狂い咲いた仇花>だったかも知れないが、筆者は哀悼の意を表して、またまたここに記す。これまでにもタイトルは書いてきた東映ポルノ時代劇にして艶笑コメディの快作、その名も「エロ将軍と二十一人の愛妾」(’72)!!「エロ将軍」だよ「エロ将軍」、このストレートなタイトルだけでも賞賛に値する(満点大笑い)!!当時、映画館で入場チケットを買った人は「エロ将軍、1枚」とか言ったんだろうね(笑)。でも今作の中身は単なるエロではないのだ(本当)。

 
 時は安永2年10月、日蝕の最中。時を同じくして2人の男子がこの世に生を受けた。1人は徳川家御三卿の家にて豊千代、2人目は越後の貧乏農家の子・角助である。やがて15歳に成長した角助は青雲の志を抱いて、婚約者を故郷において江戸へと向かう。
 そんなある日、痴呆を患っていた10代将軍・家治が急逝。そこで田沼意次はライバル・松平定信を出し抜いて政権を掌握するべく強引に豊千代(林真一郎)を11代将軍(=徳川家斉)に決めてしまう。ところがこの豊千代、学問大好き・女嫌いのチェリー・ボーイであったため、田沼は新将軍就任式前に吉原で<筆下ろし>をさせようとしたところ、女が膣痙攣をおこして分離不能に(爆笑)!困った田沼の前に現れたのが巷を賑わす義賊、女鼠小僧・弁天のお吉(池玲子)。彼女の提案によって、お吉と同じ長屋で暮らす豊千代と瓜二つの角助(林真一郎2役)が替え玉として選ばれる。ところがこの角助は生まれつきの女好き!こうして好色替え玉将軍は日夜、大奥の女性たちとヤリまくるのだが・・・!?

 ここまで粗筋を書けば題名の意味は理解して貰えるだろう。監督は最近、このブログに頻繁に登場する鈴木則文(代表作は菅原文太兄ィの「トラック野郎」シリーズ)。そもそも今作の発案は彼の前々作にあたる「徳川セックス禁止令 色情大名」を監督したとき11代将軍・家斉には驚異的な数の愛妾と子供がいたことを知って思いついたという(この時代には将軍も暇そうだから、アレしかヤルことなかったのかも)。その意味で「エロ将軍〜」は「禁止令」の前日談と言えるかもしれない。境遇の違う瓜二つの人物が入れ替わるというアイデアはよくあるものだが、そこに親の仇として徳川幕府を恨む鼠小僧(池玲子)を配して、彼女の入れ知恵によりニセ将軍がめちゃくちゃをやらかす点が非凡なところ^^。

 出演者には池玲子(一時、歌手転向を表明して干されていたが・・・まぁ、そんな詳しいことは知らなくてもいいか)プラス杉本美樹(=家斉に嫁ぐ天皇家の娘役)に加え、名和宏大泉滉由利徹といつものメンバー(笑)。由利は怪しげな日本語を話す謎の中国人・毛沢山(=毛沢東のパロ)として「おしゃまんべ」を連発(笑)。おまけに由利の相方に扮した岡八郎の役名は「陳万紅(ちん・まんこう)」!もうTVでの放送は永久にないね(爆笑)。大泉は将軍の「中国の宦官制度導入」に賛成して植木バサミでチ●ポを切られる役(死ぬほど爆笑)。中学生男子レベルのギャグが次々に炸裂するのが鈴木則文作品のいいところ(本人曰く、ギャグが大好きらしい)^^。勿論、池や杉本を筆頭に、出てくる女性の大半は観客の期待に応えて脱いでマス♪

 艶笑コメディでありながらセットは豪華、エキストラも大人数!「おっぱいバレー」に出てくる少年たちが狂喜乱舞するほどのおっぱい要員も多数動員した今作(巨費がかかっているのだ)だが、やってることは「権力批判」(笑)。前半はエロと笑い、アクション(=替え玉の秘密を知る池玲子を田沼の手の者が暗殺しようと企てる)でガッチリ観客のハートをわし掴みにしながら、終盤は一転してダークな展開に(=ネタばれするので書きませんが)。そして驚愕の展開を迎えるクライマックス!熱くなった胸と股間が一気に冷めると同時に(苦笑)、監督の意図が最後の最後で分かる。やはり鈴木則文は単なる「娯楽監督」、「職人監督」ではなく、キチンとした意見を持った「映像作家」だったと言えるだろう。

 鈴木監督はご健在でありながら・・・いま全く映画を撮っていない(勿論、いまの日本映画界ではこのテの映画がもう作れない状況でもある)。ちなみに彼は後年、実写版の「ドカベン」や「コータローまかりとおる!」ほか数多くの<漫画の実写化>にも取り組んだ(「つまる、つまらない」はまた別の話。菊池桃子の映画デビュー作も彼の作品。アレも・・・下ネタが多かったな〜)。特殊メイクやCGが発達した今、鈴木則文が再びピンキー・バイオレンスや漫画の実写化を手掛けたらどんな作品が出来るのか・・・。筆者は「もう撮らないだろうな」と思いつつも、少し期待している。祈!鈴木則文復活!!


 <どうでもいい追記①>筆者と同じガンダム世代の作家・福井晴敏(加えて筆者と同じく「イデオン 発動篇」ファン)の小説「ガンダムユニコーン」が今冬、アニメ化(TVシリーズあるいは映画のどちらか知らんが)!富野由悠季以外のガンダムには興味のない筆者だが、これは見ないと!!
 <どうでもいい追記②>連ドラ「名探偵の掟」が面白い!東野圭吾ファンはもとよりコアなミステリー・マニアにも御薦め。ミステリー小説の形式をおちょくってて笑えます^^