其の374:タイトルだけでも怖い!「マタンゴ」

 大事な映画を忘れていた。筆者の少年時代から、その噂だけは耳にしていたある日本映画をー。その名は「マタンゴ」!名前だけでもインパクト大(これに対抗しえるタイトルは松竹の「吸血鬼ゴケミドロ」ぐらいか)!!昭和38(1963)年公開の東宝映画である(→まだ生まれてないのでリアルタイムではさすがに観てない)。筆者より上の世代の少年たちが恐れおののき、未だに根強いファンのいる「マタンゴ」を今回はご紹介!全身キノコのマタンゴになる恐怖は「ゾンビ」より遥かにこっちの方が早いぜ〜(ヴァンパイアの「ドラキュラ」よりは後だけど)。「マタンゴ」公開時の同時上映は「ハワイの若大将」(爆笑:ちょっとは組み合わせ考えようよ)。


 ボンボン育ちで会社社長の笠井(=土屋嘉男)に、そこの社員・作田(=小泉博)、笠井が目をかける歌手・関口麻美(=水野久美)に大学助教授の村井(=久保明)、その恋人・相馬明子(=八代美紀)、そして推理作家の吉田(=太刀川寛)に臨時雇いの漁師のせがれ・小山(=佐原健二)の男女7人は豪華ヨットで太平洋へと繰り出した。ところが暴風雨に遭って一行は遭難、ようやく無人島に漂着する。そこはカビと不気味なキノコに覆われた南海の孤島だった。海岸に乗り上げていた難破船を発見したものの、そこには僅かな食料はあったものの生存者はなく、航海日誌には「船員が日々消えていった」ことと「島のキノコ<マタンゴ>を食べるな」との警告が残されていた。やがて食料をきっかけにメンバー同士が対立。そんな極限状態の中、寝泊りしていた難破船に身体がキノコで覆われた怪人が現れる!実はマタンゴを食べると、全身キノコの人間に変貌してしまうのだ!!果たして7人の運命は!?

 東宝からの依頼を受けて「SFマガジン」の初代編集長・福島正実がイギリスの海洋怪奇作家ウィリアム・ホープ・ホジソンの短編小説「闇の声」をベースに脚色したプロットを提案、映画化に至ったのが今作(→ちょいちょいアイデアを出したSFショートショートの大家・星新一先生の名も同時クレジット。ちなみに<マタンゴ>とは、福島が毒きのこ「ママタンゴ」をもじった造語である)。こうして監督・本多猪四郎特技監督円谷英二マタンゴデザインに「地球防衛軍」の小松崎茂画伯(本篇スタッフロールにはノンクレジット)、マタンゴ造形に「ゴジラ」シリーズで御馴染みの彫刻家・利光貞三先生(これまたノンクレジット)という<東宝特撮黄金メンバー(にしていつものスタッフ)>が集結した。

 このブログで過去幾度も取り上げた東宝特撮映画は正直、第1作目の「ゴジラ」を除いては公開当時「お子様向け」とおぼしき作品群だったけれど(→いまでは特撮オタク研究用)今作は大マジの「大人向け」!その証拠に水野久美と太刀川寛のキスシーンもある。出演俳優達によれば、本多猪四郎監督は「いつもより現場で楽しそうだった」そうで(笑)、作品からもスタッフがノリにのって作っている雰囲気が感じられる(といってもホラーなんだけどさ)^^。その分、従来の怪獣映画のノリを期待して観にいった子供たちや加山雄三観に行った女子たちがブッ飛んだ、と(笑)。

 「ゴジラ」シリーズのキャラクターたちは基本的に<善人>が多いと思うのだが、今作に出てくるメンバー(→スタッフ同様、キャストもいつものメンバーだけど)は嫌な奴率高し(苦笑)。遭難後、当初は協力し合うものの、飢餓が進むと、やがて食料&女性を奪い合う「アナタハン事件」状態に。一説によると、脚本担当の木村武はキャラクターたちの<モデル>として、ヨットのオーナーでボンボンのヘタレなバカ息子・笠井はコクドの堤義明、新進の推理作家(でもかなりの小心者)は大藪春彦、ヨットの「船長」で、しまいには●●する作田には堀江謙一・・・と、当時六本木で騒いでいた連中に「酷い目に遭わせてやれ」と思って書いたそうだ。この気持ち、分からなくもない(笑)。

 「無人島」シーンは八丈島や伊豆・大島でオープン撮影を行い(→合成シーンのため、珍しく本多&円谷両巨匠も同じ現場でお仕事♪)、「マタンゴが群生するジャングル」は通常のセットに加え、ミニチュアも製作された。マタンゴの気ぐるみには当時の新素材・発泡スチロールを使用。不気味なキノコのモコモコ感が素晴らしい!勿論、軽量化も進んだので役者さんたちも大分ラクになっただろう。余談だが、難破船に現れる身体をきのこに侵食された怪人役を、のちの「死神博士」こと天本英世が演じている(ほとんどメイクで分からないけど)^^。

 今作の素晴らしい点はいくつもあるが、そのテーマ性(=人間の生きる意味や存在について考察。人間の欲やエゴを容赦なく暴き出す)やストーリーの面白さ(=果たして生き残れるのは誰か?)に加え、なによりも突出しているのが水野久美の存在!もう〜むちゃむちゃ妖艶な悪女(笑)。彼女をめぐって野郎共が喧嘩すると「みんな、私が欲しいのよ!」とのたまい化粧し始めるわ、「これ美味しいわよ〜」とマタンゴを持って男を誘ったりもする(→ちなみに劇中食するキノコは当時、成城駅前にあった某和菓子店が発注を受けて餅を使って制作。本当にうまかったそうな)。今作を見て<大人の女性>に目覚めた青少年が多かったそうだが・・・その気持ち、よく分かります!今風に言えば「水野久美萌え」か(笑)。さすが「ヴァンプ女優」と呼ばれただけのことはある(死語)。

 
 冒頭の文章とリンクするが、未だに洋画では「ヴァンパイア映画」や「ゾンビもの」が製作されているのに、日本ではこのテの類の映画が近年一切ないのが残念!この「マタンゴ」という素晴らしいキャラを活かして、なにか作られてもいいものだが・・・例えば日本中にキノコ人間が増殖していって、自衛隊が戦うとかさ。そのうち、井口昇監督あたりがやりそうな気がしないでもない(笑)。


 <どうでもいい追記3連発>
 1:かのタランティーノがマジで「キル・ビル」の第3弾を作るらしい(→2部作より10年後の設定)。2014年の公開を目指すらしいが・・・「キル・ビル」自体の出来も・・・ねぇ(苦笑)。人類滅亡前に間に合えばいいけど(笑)。
 2:先日、女性スタッフが「ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲」の仲里依紗を見て「胸が凄い!」と騒いでいた(笑)。三池崇史監督作品では「ヤッターマン」のドロンジョ深キョン)に続く<巨乳+ボンテージ>!さすが三池は<おっぱい>が娯楽映画の重要な要素であることをよく分かっている(笑)。
 3:映画「おっぱいバレー」が公開されたとき「その内、似たようなタイトルのVシネマが出てきそうだな〜」と思ってたら「おっぱいプロレス」というVシネがレンタル店にあった(やっぱり:笑)!筆者も対抗して腐女子ショタコン向けに「ぽこ●んバスケ」とか作ろうかしら(笑)?。勿論、あくまで<ビジネス上での話>であって、個人的には全く観たくない!!