<其の713>自宅にこもって「空の大怪獣ラドン」を観直す

 初の緊急事態宣言の中、東京は今日も新型コロナウイルス感染者数を更新。明日なにが起こるか、段々分からんようになってきました・・・(溜息)。

 

 嘆いていても仕方ないので、久しぶりに「空の大怪獣ラドン」(’56)をDVDで観直してみました。嫌な現実を忘れるには大フィクション映画に限る!・・・これ、東宝の怪獣映画<初のカラー作品>なんだよね(忘れてた)!その事自体が日本映画史に記録される事でもあるので、我がブログでも取り上げる次第^^。

 若い人は知らないと思うけど、今作の「ラドン」や「モスラ」(’61)はそもそも其々“単体”で作られた映画なのですよ。後にゴジラと共演するようになるけど、最初からゴジラの相手ではないので、ご注意あれ(あと「ラドン温泉」とは何の関係もなし)。今作がアメリカで公開された時、何故「ラドン」が「ロダン」という名称に変わったのかは・・・筆者は知りましぇ~ん(興味ある人は自分で調べてちょんまげ)。

 

 九州・阿蘇近郊の炭鉱ー。坑道内で原因不明の出水事故が起こった直後、炭鉱夫らが鋭利な刃物のようなもので相次いで惨殺される。炭鉱技師の河村(=佐原健二)の友人で行方不明の炭鉱夫・五郎が犯人と疑われた為、五郎の妹で河村の恋人キヨ(=白川由美)は心を痛めていた。そんな中、2人の前に巨大な古代トンボの幼虫・メガヌロンが現れた。このメガヌロンが鎌のような鋭い前足で炭鉱夫たちを殺していたのだ。警官の拳銃では役に立たず、河村は警察が要請した自衛隊と共にメガヌロンが逃げ込んだ坑道へ。ところが自衛隊による機関銃の衝撃で落盤が発生、河村は行方不明に。ほどなく阿蘇地震が発生、調査団が現地に駆けつけると陥没して出来た崖下で河村を発見する。だが彼は全ての記憶を失っていて、入院生活を余儀なくされた。

 その頃、航空自衛隊に謎の超音速飛行物体が報告され、確認に向かった戦闘機が全て叩き落されてしまう。一方、阿蘇でデートしていたカップルが行方不明に。彼らが遺したカメラには、鳥の翼を彷彿させる巨大な影が映っていた。それは太古の翼竜プテラノドンのものと酷似していた・・・!

 

 上記が前半までのざっくりした粗筋。連続殺人事件が起きるほか、前半は謎が相次いて起こるミステリー(!?)仕立てになっていて、ラドン(←プテラノドンから命名)が登場するとお約束の人間対怪獣の大攻防戦となる。最初に怪獣が姿を見せず、登場してからは人間との壮絶な戦い・・・という展開は2年前に作られた大ヒット作「ゴジラ」1作目からのナイスな作劇^^。スピルバーグも「ジョーズ」や「ジュラシック・パーク」で真似してる。

 書くまでもないと思うが、スタッフは監督・本多猪四郎特技監督円谷英二、音楽・伊福部昭・・・という「ゴジラ」からまんまのゴールデントリオ。中でも円谷監督はラドン飛行の空撮シーンの他、阿蘇噴火シーンの火口から流れる溶岩は、リアリティーを求めて製鉄所から借りてきた溶鉱炉の溶鉄を流したという。カラー作品(当時は“総天然色”といっていた)なので、溶岩の色や鮮度等を忠実に再現する為の工夫なのだがー溶鉄を使用したスタジオ内部はめっちゃめちゃ暑くなったそうな(そりゃそうだ)。

 俳優陣は後年「マタンゴ」にも出る佐原健二と、若き日の白川由美!勿論、二谷英明と結婚する前よ❤彼女は怪獣映画出演のイメージがあまりない女優さんだったけど、今作ではあまり台詞が・・・なかったなぁ(苦笑)。恐竜に詳しい博士は勿論というか当然、「ゴジラ」でお馴染の平田昭彦!彼は完璧なキャスティング^^。

 さて、このラドン、実は雄と雌の計2匹いるんだけど(時たま見えるピアノ線はご愛嬌🎵)途中までそれが分かりづらいとか、いくら怪獣を最初に見たからといって一般人の主人公が最後まで自衛隊の幹部達と作戦を見守るとか(苦笑)、いま観るとつっこむところも多々あるけれど、福岡に現れたラドン自衛隊・戦車部隊とバトルを繰り広げるシーンは本当に素晴らしい!ラドンの羽ばたきで起こる衝撃波で、ビルの看板(超緻密)や民家の屋根瓦が一枚一枚はがれていくのよ(驚)!!この特殊美術の出来栄えは・・・流石、円谷監督率いる特撮スタッフ!素晴らしいの一語に尽きる。それまでのつっこみはこのシーンで帳消し^^。当時、長崎の佐世保に出来たばかりだった「西海橋」がラドンによって倒壊するシーンは、後のゴジラシリーズ(特に「平成ゴジラ」)のパターンー“新しく出来たところにゴジラが現れて壊す”のルーツといえよう。

 オチはいつも通り書かないので、どうなって映画が終わるのかはご自身の目でご確認下さい。

 

 今作がなければ空飛ぶ怪獣ーモスラや筆者の大好きなキングギドラも生まれなかったかもしれない。それだけでも「空の大怪獣ラドン」は重要な映画だ。・・・筆者にとっては(笑)。

 

 外出を自粛して自宅で映画を観る方が増えていると思いますが・・・このブログは誰もが知るメジャー作、普通の映画に飽きた方にこそ読んで頂いて、作品選びの一助になればこんなに嬉しい事はありません。 皆で頑張って、この国難を乗り切りましょう!!