<其の699>「終戦記念日」に・・・「肉弾」

 梅雨は明けたものの、巨大な台風が猛威をふるっています。皆様、どうぞお気を付けて!!

 本日は「終戦記念日」です。・・・日本人はどんなに年月が経とうとも、戦争の記憶を忘れてはいけないと思います。そこで今回紹介するのは「肉弾」(’68)。「独立愚連隊」シリーズ他で知られる故・岡本喜八監督の代表作の一本。

 

 第2次大戦末期の昭和20年・夏。大学在学中に召集され、軍の幹部候補生となった21歳6か月の"あいつ"(=寺田農)。今、彼は太平洋上を魚雷にくくりつけられたドラム缶の中で敵の船が来るのを待っている・・・。

 先日、広島に新型爆弾が落とされ、ソ連も参戦。"あいつ"ほか若き候補生達は本土決戦に備える<特攻隊員>にされた。一日だけ外出を許された彼は「如何に有意義に過ごすか」を念頭に古本屋へ。そこで店を営む老夫婦(=笠智衆北林谷栄)と知り合った後、その足で焼け跡に密集する女郎屋へと向かった。すると数学の勉強をしている可憐な女子高生(=大谷直子)の姿を目にして・・・。

 

 今作の脚本、監督を担当した岡本喜八(1924年2月生まれ)は「豊橋予備士官学校」の生徒として、敗戦を迎えた経験の持ち主。生年月&豊橋も激しい空襲を受けた地域であるだけに、岡本が自身の分身として、"あいつ"を描いた事は容易に推測できる。

 岡本監督だけに「肉弾」も「東宝作品」・・・と思いきや、今はなき「ATG」作品!かの「一千万映画」ですよ(←これについては以前、当ブログに書いた記憶があるので、昔のやつを探して読んでみて下され^^)。岡本は前年、大作「日本のいちばん長い日」を手掛けているが、「日本の~」で描いた政府や軍部側ではなく、もっと自身の戦争体験を反映させた作品を作るべく、製作費を捻出する為に大ヒットした「日本の~」の監督ギャラ&自宅を抵当に入れて製作をスタートさせたそうだ。

 そんな執念の一作だけに、気合が入りまくった重厚な作風・・・を想像しがちだが、そんなことは全くなし!早いテンポとすさまじい編集で展開される、いつもの<喜八タッチ>。台詞に合わせてインサートされるイラストや同じ台詞を繰り返す"遊び"の部分もあったりすることから・・・脚本を読んだ北林谷栄は戦争を茶化してると思い、一度出演を断ったという(苦笑)。ですから、若い人には構えずに観て欲しいと思う次第。

 主役の寺田農(若い!)は理不尽な状況に翻弄される主人公を好演。学徒動員&特攻隊という戦争ももうほとんど勝ち目なしの土壇場で打ち出されたこれらの方針が、どれだけ日本の将来を担う若人の命を奪ったことか・・・彼らの事を思うと、涙がでてくるわ。

 一方、ヒロインの大谷直子は今作がデビューにして、当時、<リアルJK>ながらヌードも披露!ご本人が後年「脱ぐことは何とも思わなかった」とコメントしているからいいものの・・・今じゃ完全にアウト(笑)!!・・・少々、話が脱線しますが、この当時は東宝以外の各映画会社が「ピンク映画」に走ったものの、東宝は出資してた、この「ATG」がエロ路線を"代行"していたから「肉弾」でも大谷さん以外の女優さんも少々脱いでます!それにしても、もう何度も書いてるけど、関根恵子(現・高橋惠子)といい原田美枝子ほか、10代でバンバン脱がされている・・・。やっぱ60年代、70年代は凄い時代だったなぁ^^。

 「ATG」が低予算の「一千万映画」(といっても今の貨幣価値なら、その何倍かはあるけど)といっても、女郎屋のある焼け跡とかのセットがめちゃリアルで・・・とても低予算には見えない。なんでも東宝のスタッフが休みをとって、手伝いにきたそうでーそんな努力と苦労がこの映画を支えた訳。

 

 今作が高く評価された後の1971年、岡本喜八は「激動の昭和史 沖縄決戦」を監督。これも当ブログで以前書きましたが・・・軍司令部の迷走の結果、約25万人の犠牲を出した沖縄戦の過程を描いた。「肉弾」の劇中でも「(米軍に)沖縄までとられて・・・」という台詞があるので「沖縄決戦」→「日本のいちばん長い日」→「肉弾」と<時系順>で見るのもいいかも。 主人公"あいつ"がどんな結末を迎えるのか、気になる方、是非映画を観てみて下さい^^。

 

 さて、来月頭にはタランティーノの新作を観にいくかー❤