其の385:恐怖の人食い怪獣「サンダ対ガイラ」

 東宝特撮数多かれど、コアな特撮ファンの一番人気がこの「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」(’66)!タイトルでお分かりのように前回紹介した「フランケンシュタイン対地底怪獣<バラゴン>」の姉妹作であり、またまた日米合作。1966(昭和41)年といえばビートルズが来日、「ウルトラマン」の放送が始まるなど、当時の日本の子供から青少年たち(→いまやオッサンオバサン^^)に多大な影響を与えた一年になったわけだが、そんな中公開された今作は数少ない<異色SFホラー怪獣映画>として、日本映画史に燦然と輝く一本である(マニアの心の中に、ね)。


 夜ー。三浦半島沖を航行する漁船が、突如大ダコに襲撃された。すると同じく海から現れた<怪獣>によって大ダコは退治されたものの、船の乗組員たちは更なる被害に!唯一生き残った船員の目撃証言によれば、どうやら怪獣はあの「フランケンシュタイン」らしいー。数年前「フランケンシュタイン」を育てていた京都生物化学研究室のスチュワート博士(=ラス・タンブリン)や助手の戸川アケミ(=水野久美様)、間宮(=いつものメンバー・佐原健二^^)らは彼の無実を信じて調査開始。だが<怪獣>が上陸、羽田空港で人間を襲ったため、自衛隊は<メーサー殺獣光線車>で攻撃開始!あわや怪獣が攻撃によって絶命しかけた、その時!もう1体の<怪獣>が登場!!なんとフランケンシュタインは2体いたのだ・・・!!果たして、この物語の顛末や如何に!?


 未見の方の為に説明しますと、要は前作(といっても世界観は一緒ながら、独立した作品となっている。フランケンシュタインの造形も前と全然違うし)でバラゴンと戦ったフランケンシュタインの<クローン(→いつ細胞分裂したのか不明だが)>で、水野久美たち人間に面倒みてもらっていたのが「サンダ(後に逃亡して山へ)」で、「サンダ」の肉片から分裂して海で成長したのが「ガイラ」という割り振り。で、この<海彦>ガイラが暴れまくる中、<山彦>サンダがなんとか止めようと努力する・・・ある意味、日本昔話の怪獣版と考えてもいいだろう(企画自体はアメリカ側からの提案らしいが)。

 今作の何よりの特徴は<ガイラが人間を食べる>シーンがあること!冒頭の漁船員たちは暗示されるだけだが、羽田空港ではガイラがおねーちゃん捕まえてパックンチョ!で、余分な服を口からペッと捨てる!!・・・「ゴジラ」や「ラドン」その他、怪獣というのはそれまで言うなれば<化学兵器や天災の象徴>だったわけだが、この人を食べるガイラは・・・リアルに怖い!!当時の少年たちが震え上がり、トラウマと化したのもご理解頂けよう。現在の筆者ならガイラの口から生首とかが吐き出されない限りは大丈夫だが(笑)。

 <日米合作>とあって、前作同様、主演はアメリカ人!ラス・タンブリンは「ウエスト・サイド物語」や「たたり」に出演した青春スターと資料にはあるがー筆者は両方観てるけどー覚えてないなぁ(苦笑)。この人、劇中もあまりやる気がありそうに観えないんだけど、実際もやる気がなかったらしい(→当時のアメリカ人から見れば、所詮日本人なんぞ見下していただろうしねぇ。皆の輪にも入らず、演技も合せないわで相手役の水野久美様がヒスを起こしたという説も)。その割には、久美様のバストをしっかと腕で押えるシーンもあるので、この仕事は相当おいしかったに違いない(怒)。ちなみに「マタンゴ」で土屋嘉男氏は久美様のお尻をしっかと握っている・・・。俳優というのは、本当にいい仕事だなぁ(あくまで男目線での意見デス)^^!

 スタッフは・・・まぁ、いつものメンバーなんで割愛(笑)。前作同様、サンダもガイラも身長25〜30メートルという設定のため、「ゴジラ」映画よりも縮尺の小さいリアルなミニチュアセットが造られた。加えて、映像的にも新技術が開発されており「羽田空港」での逃げまどう群集との合成シーンは以前に比べて格段に向上している。前作で失敗した「大ダコとの格闘」は、今回冒頭で仕切り直してのチャレンジ(ちなみに極悪ガイラの中身は「ゴジラ」の中島春雄先生が担当し、イーモンのサンダをリード)!大ダコが大暴れする映画を作って見たいと長年思っていた(→結果、それが「ゴジラ」になった)円谷英二御大にとっても夢が叶っただろう^^。

 マニア人気が高いのが<メーサー殺獣光線車(→「殺人」でないところがミソ)>。当初、脚本(馬渕薫)になかったものの、本多猪四郎監督が加筆しての登場だが、これまでの超兵器と違ってすげー強力なの(デザイン的には「地球防衛軍」のマーカライトの発展系)!ゴジラ辺りになら放射能吹きかけられて爆発するのがパターンなんだけど(笑)、今回は寸前までガイラを痛めつける!!このミニチュア、自走式だったので追突したり、途中で止まったりとかなりのNGが出て撮影は大変だったようだが、迫力満点!苦労した甲斐は十分にあっただろう。

 
 ラストはねぇ・・・ちょっとご都合主義っぽいオチが残念ではある(あんなにタイミングよく●●●●の●●はないだろう)。あと、今作で「フランケンシュタイン」シリーズが終わったことも残念!「海外版」とは多々、カットが異なっているのでファンはこれまた見比べるのも一興^^。そこで提案!<シリーズ第3弾>として数百体に分裂したフランケンが世界各地で人類を食いまくるなんていうのはどうだ?オチをどうするかは全然考えてないけど(笑)。


 <どうでもいい追記>
①先日、知り合いが脚本を担当していることを知って某B級映画の試写会に行った(久々に行ったなぁ、試写会)。内容は「和製キル・ビル」という感じで悪くはなかったが・・・ちょいちょい「こうすればいいのに」という部分を感じた。知り合いの映画を観ると、どうも批評する基準が高くなっていけない。
②劇作家つかこうへい氏、死去・・・。井上ひさし氏に次いでつか氏までー。日本の演劇界には頑張ってほしい、と思うのみ。合掌・・・。