其の371:昭和の匂いプンプン「地球防衛軍」

 忙しすぎて新しい映画を劇場まで観にいくパワーなし(哀)。よって、前回予告した通り東宝特撮映画「地球防衛軍」(’57)をご紹介!超久々に観なおしたら、自称「20世紀少年」の筆者にとって、もろストライクゾーン!昭和の匂いプンプンでいいよ(良くも悪くも)^^。本邦初の宇宙人による<侵略もの>で(→厳密にいえば、前年「空飛ぶ円盤恐怖の襲撃」が公開されてるので、あくまでも「宇宙人が出てくる」という意味で日本初)、巨大ロボット(=モグラ型ロボット、その名も「モゲラ」!)が登場することでも日本初の映画。このブログに書かないわけにはいかない!!


 富士山麓にある、とある村祭りの夜。科学者の渥美(=佐原健二)、天体物理学者の白石(=平田昭彦)らは木々が根元から引火して燃え上がるという奇妙な山火事に遭遇、その騒ぎのなか、白石は行方不明となる。その後、白石が住んでいた富士山麓の村が謎の山崩れによって壊滅。調査に向かった渥美たちの前に突如、巨大ロボットが現れ、街を破壊して歩く!出動した防衛隊は一計を案じ、ようやくその進攻を止めることが出来た。
 富士山麓に渥美、安達博士(=志村喬)ら調査団が赴くと、地中から巨大ドームが出現!一行を内部に招き入れる。ドーム内にいたヒト型の宇宙人たちは「ミステリアン」と名乗り、10万年前、火星と木星の間にあった第五遊星「ミステロイド」に住んでいたものの、核戦争により母星を失い宇宙を放浪の末、地球にやってきたのだと語る。そんな彼らは「半径3キロの土地の譲渡」と「地球人女性との結婚の自由」を要求してきた。
 彼らに疑惑を感じ、要求を拒否した防衛隊は攻撃を仕掛けるものの、ドームから発せられるビームの反撃で全滅に近い被害を受ける。実はミステリアンたちには人類に隠している、大いなる野望があった。安達博士の呼びかけにより各国が協力、「地球防衛軍」が結成される。こうして、ミステリアンと人類の壮絶な戦争が始まった・・・!


 <壮絶な戦争>と書きましたけど、戦闘エリアはあくまで富士山麓周辺限定。また「地球防衛軍」といっても、全世界のあらゆる国から大量の兵器や人員が日本に集結するシーンとかありません!あくまで日米中心による攻撃隊(苦笑)。で、相手の謎の異星人の名称が「ミステリアン」!「X星人」並のわかりやすいネーミング(爆笑)。劇中に名前は出てこないものの、モグラ型土中作業用ロボットだから「モゲラ」って・・・ねぇ(笑)。「世界征服」とか「原水爆」とか、「謎の異星人」とか・・・この辺りが「古き良き昭和」だよね(→誉めてマス)。世界征服を目指す悪の組織もすっかりいなくなっちゃったし^^。

 「ゴジラ」、「ゴジラの逆襲」、「空の大怪獣 ラドン」を経て製作された今作だけに超豪華スタッフが集結!原作に作家・丘美丈二郎、潤色に「ゴジラ」第1作の香山滋。監督は本多猪四郎特技監督には勿論、円谷英二御大!音楽は当然、マエストロ伊福部昭。超兵器の数々のデザインは小松崎茂大画伯だぜ〜、これで燃(萌)えない昭和生まれの少年はいない(笑)。本多は「(今作を)最もスケールの大きい空想科学映画にしたい」と決意表明しており、円谷監督が小松崎の空想科学絵物語のファンだったこともあり、自ら小松崎邸を訪れ、コンセプトデザインの依頼をしたそうだ。
 その結果「クライマックス」はネタばれ防止の為、内容は書きませんけど・・・ロケットやパラボラ型超兵器(懐)が続々登場し(モゲラも2号機が出てくるけど余り活躍を期待せぬように)、空想科学小説の醍醐味を存分に味あわせてくれる(冒頭に今作が数々の<日本初>の映画であることを書いたけど「宇宙人と地球人の結婚問題」について取り上げたのも、この映画が日本初)。但し、リアリティーはあまり気にしないように!大人は細かいこと言っちゃダメ(笑)。

 俳優陣は「ラドン」の主役・佐原健二に、「ゴジラ」ほか東宝特撮の顔(で、大抵科学者役)の平田昭彦大先生に、黒澤映画の常連にして「ゴジラ」ほか特撮にも顔を出す志村喬・・・と、これで宝田明とかまで出てくれば完全にいつものメンバー(笑)。加えて女優も、河内桃子(→平田と「ゴジラ」でも共演)に白川由美(→二谷英明の妻にしてリーの母。最近・・・観ないねぇ)も「ラドン」のほか、ちょいちょい東宝特撮に顔を出している<常連>で固められている(というか昔は「五社協定」があったから致し方なし)。中でも白川はモゲラ襲撃のさなか、風呂に入っていたりするので今観ると笑える(今作に感銘を受けたという「平成ゴジラシリーズ」の川北紘一特技監督も、ムック本「東宝特撮総進撃」のインタビュー内で白川の入浴場面について「あんな非常時にのんびり入浴しているのは疑問だけど(笑)」とツッこんでる)。

 そして忘れちゃいけない「ミステリアン」!「熱に弱い」ということで常にマントを羽織り、階級によって色分けされた巨大マスクとサングラスを着用しているんだけど・・・今観ると・・・安〜い「戦隊ヒーロー」にしか見えない(爆笑)!そんな<ミステリアンの統領>役を演じたのが「七人の侍」で映画デビューした土屋嘉男(土屋氏によると、衣装のマスクはアイスクリームの容器の改造、マントはガラス繊維で出来ていたそうな)。
 本多、円谷両監督と懇意にしていた土屋氏は当初、科学者役をオファーされたものの、台本を読んで興味を覚えたミステリアン役をやりたいと申し出た。すると会社や本多監督から「マスクで顔がみえないから」と言われると「俳優は顔が見える見えないなんて問題ではない」と男気を発揮、本多を感激させたというほほえましいエピソードがある。宇宙人役だけに役作り(?)には苦労したそうだが(=ベタな宇宙人の翻訳声「ワ・レ・ワ・レ・ハ〜」を最初に発したのは土屋氏)こうして彼曰く「私は日本で最初に宇宙人を演じた男になった」。生活臭が全くないのに異常に人間(ってゆーか日本人)くさい宇宙人の姿を是非、これ読んでる方々には自身の目で確認して頂きたいところだが・・・近年映画に出てくる宇宙人は大抵まっ裸だから、逆に服着てる宇宙人は新鮮かもしれない(今頃、フォローしても遅いか^^)。


 公開当時の「宇宙ブーム(=実際、この年に世界初の人工衛星スプートニク1号が打ち上げられた為、今作のラストに急遽その設定が追加された)」や「米ソ冷戦による原水爆の恐怖」等の社会背景も反映されている「地球防衛軍」。懐かしい&ほほえましい気持ちでお楽しみいただきたい・・・と思う。平成生まれの若者たちには分からないかもしれないけど(苦笑)。
 余談だが「宇宙人が居住権を要求する」という設定は、その後「宇宙戦艦ヤマト」のガミラス星人や「宇宙戦士バルディオス」のS−1(エスワン)星人ほかでも繰り返し描かれているテーマ。近日日本でも公開される異色作「第9地区」も今作をヒントにしたような気がしないでもない(事実、アメリカでも上映されてるけど・・・多分違う^^)。



 <どうでもいい追記>一部劇場で2週間限定公開されたオリジナル・アニメ「機動戦士ガンダムUCユニコーン)」のDVD第1巻(全6巻予定)が・・・発売はされているものの、レンタル日が未定になってしまった!何故!?早く観たいからレンタル解禁してくれ〜(←ソフト、買う気なし)!!!