其の324:ストラーロが魅せる「新・殺しのテクニック」

 PCの調子が悪くて予定より更新が遅れましたわ(汗)。もっともメッチャ忙しかったので時間もなかったけど(苦笑)。以前、告知したように残る2本の「殺しのテクニック」を紹介します。もっとも邦題だけでシリーズでもなんでもないのでどれから観ても問題ありません(笑)!

 
 まずは「続・殺しのテクニック 人間標的」(’66 伊)。前作(?)はある意味「ギャングもの」とも言えるが、今作は「スパイもの」。公開当時はご存知のように東西冷戦の真っ只中。現在も継続中の大ヒットスパイ・アクション映画「007」の真似を「柳の下にどじょうはいっぱい」と考えるイタリア映画界がしないわけがない(まるで一時期の香港映画界^^)!!
 殺人の濡れ衣を着せられたCIAの諜報員(勿論、狙撃の腕はピカイチ)が内部工作によって<死んだこと>にさせられ、別人として復活。ドイツ統一を妨害する組織の潜入を命じられるものの・・・というストーリーである。
 主人公のヘンリー・シルヴァ(「オーシャンズ11」)は別人・・・といっても死んだ男の弟という設定で甦る・・・のだが、髪の色とヘアスタイルが変わったこと以外に外見的変化はない(笑)。製作サイドもそこは考えたもので、高度な手術によって顔の一部や指紋(!)、さらには話し方さえ変えたことになっているが・・・ちと強引。その他の登場人物も・・・あまりメジャーな俳優はいない。
 そうしてギャラを安くあげた分(?)、舞台はニューヨークからドイツ・ハンブルグにまたがるし、お話も二転三転するB級イタリア映画にしては凝った展開。主人公も離陸途中の飛行機から政府要人を狙い撃つというゴルゴ13も真っ青の暗殺テクを披露する。
 ただ・・・正直、演出が粗い!前作の「殺テク」でも指摘したが(=かぶってるスタッフはカメラマンと音楽担当者のみ)、今作でも銃をつきつけられて見張られていた主人公が一度別のシーンに行ったあと・・・もういきなり逃げている(苦笑)。隙をついて銃を奪うとか、そういう<間のカット>を入れないとあかんね。相対的な完成度として筆者的には前作に軍配を挙げます。


 そして「新・殺しのテクニック 次はお前だ!」(’70 伊)。「ギャングもの」、「スパイもの」ときて今回は「サスペンス映画(通称「ジャーロ」)」!!もうホントにホントに・・・いい加減な邦題だよなぁ(苦笑)。
 お話はフランコ・ネロ(=言うまでもなくマカロニ永遠のヒーロー「ジャンゴ」その人!)扮する酔いどれ新聞記者の知り合いが次々と殺されていき容疑をかけられたネロが真犯人を探し出す・・・というもの。犯人が自分の心情を6ミリ(懐)で録音したり、必ず犯行現場に指を切った手袋を置くとか(=これであと何人殺すかを示唆)下手な映画ライターだとブラピの「セブン」の元ネタとか調べもせずに適当書きそうだけど(笑)、生憎原作があるので違います(イギリスの作家、D・M・ディヴァインの「五番目のコード」。・・・知らん)。筆者的にはオチにアガサ・クリスティーの「ABC殺人事件」の影響を感じたが・・・クリスティーもディヴァインも同じ英国だから、まんざら外れていない気がしなくも・・・ない。
 まず、ファーストカットから目を引くのは・・・その映像美と完璧な構図!時には実験的なアングルもあったりしたので「このカメラマンは只者じゃないな・・・」と思い注意して観ていたら、なんと撮影監督にクレジットされているのがヴィットリオ・ストラーロフランシス・フォード・コッポラウォーレン・ベイティベルナルド・ベルトルッチ作品で知られ、アカデミー撮影賞を受賞すること実に3回の天才ストラーロが担当しているんだもの。そりゃ違うよなー!ドーリー(=移動撮影)も完璧。
 担当作品の全シーンにおいて事前に詳細な照明プランを考え、撮影場所(ロケ、セットにかかわらず)を完璧な構図で切り取る彼をベルトルッチは「光の絵筆を持っている」と称したが、今作はストラーロ芸術を堪能できる一作。監督のルイジ・パッツォーニはぶっちゃけ二流だから(ごめんね)、現場はストラーロが仕切ったに違いない(笑)。そんな彼が撮影した<殺人テクニック(=前2作は「狙撃のテク」)>はゾクゾクするぞ(特にクライマックス)。
 そして音楽はマエストロ、エンニオ・モリコーネ(=数年前に彼が東京で行ったコンサートはマジで良かった)!だが、今作の音楽は・・・少々物足りなかったな〜(残念無念)。監督が大したことない人だから、御大も手を抜いたかもしれん(違うか!?)。
 ネロ(注:「フランダースの犬」ではない)も口ひげを蓄え、プレイボーイながら別れた女房に酔った勢いで言い寄ったりもする哀愁あふれる男を好演^^。ネロ以外にメジャーな俳優が出ていないのが惜しまれるが、一見犯人と思われる男たちは一癖も二癖もありそうなメンバー。で、観客の予想通り(?)その彼らが集まり8ミリでブルーフィルム撮って喜んだりする変態ぶりで、期待に応えてくれる(爆笑)!真犯人は・・・ミステリー好きなら、観ている内になんとなく分かるでしょう(筆者は分かった)^^。フリッツ・ラングの「M」やヒッチコックの「サイコ」の後続ではあるけれど、後に一大ブームを迎えるサイコスリラー初期の1本と定義してもいいと思う。
 
 
 どんなに監督が優秀でもカメラマンが下手では話にもならないが、脚本や監督の演出が並であってもカメラマンがうまければ映画として(そこそこは)成立する事を今回、再認識した次第。勿論、撮影に加えてホンや監督が良ければそれに越したことはあるまい。・・・当たり前だ!


 <蛇足>ようやく6月に公開される新劇場版「エヴァ」第2作目だけど・・・本当にアスカの名字は変更されているのだろうか!?すげ〜気になる(観るけどね)!!