其の363:日本の医療を考えよう「ジェネラル・ルージュの凱旋」

 さて、今年は黒澤明生誕100年ということで、黒澤映画について書こうと思ったけどやめて(笑)、映画「ジェネラル・ルージュの凱旋」を^^。映画的には「チーム・バチスタの栄光」第2弾となるけれど、前作観ていなくても大丈夫!・・・それにしても新年から「怪獣映画」、「SFアクション」に「ミステリー」・・・筆者の趣味がもろに出てるわ(苦笑)。


 東城大学付属病院の窓際医師・田口(前作と同様、竹内結子)は「バチスタ事件」を解決した功績で院内の倫理委員会長にされていた。そんなある日、彼女の元に救命救急の速水センター長(堺雅人)と医療メーカーの癒着を告発する内部文書が届く。速水は院内で“ジェネラル・ルージュ(血まみれ将軍)”と仇名される天才医師だった。田口が調査を開始すると、告発された医療メーカーの支店長が飛び降り自殺してしまう!と、そこに厚生労働省の役人・白鳥(これまた前作に続いて阿部寛)が骨折で運ばれてきた。なんと彼も同じ文面の告発文書を持っていた・・・。さて、事件の真相は?!


 原作は現役医師にして作家の海堂尊氏による同名小説(→当初、海堂氏は覆面作家だったんだけど、いつのまにやらCX「とくダネ!」のコメンテーターに。で、ブログの内容を受けて名誉毀損で訴えられ、昨日敗訴)。<田口・白鳥>シリーズの小説的には「バチスタ」の後、「ナイチンゲールの沈黙」があって「ジェネラル〜」と続いているので「なんで順に映画化しないんだろう?」と思っていたんだけど、なんでも当初「ナイチンゲール〜」の中に「ジェネラル〜」の要素が含まれていて海堂氏は上下2冊で出版しようと思っていたらしんだけど、編集者の意見を受けて内容をそれぞれ分けたそうな。よって映画化に際しては同じ時系列で起こる「ナイチンゲール〜」をオミットして脚色(小説にない殺人要素も追加)したのが今作だ。

 救命救急センター長・速水にかけられた疑惑を、田口と白鳥コンビが探っていくのは前作と同じ。竹内結子の<のほほん演技>も、阿部ちゃんの「いかにもお役人」という東大出をハナにかけたタカビー演技も相変わらずで笑わせてくれる^^。そしてタイトルロールの“ジェネラル・ルージュ(血まみれ将軍)”と呼ばれる堺雅人は、役が役だけにいつもの笑みが怖い!で、常にチュッパチャプスをくわえているから更に怖い(笑)。メインの3人はそれぞれ個性的な役に徹していて好感が持てます。

 でもね、今作は<医療ミステリー>というより、社会問題としてよく取り上げられる<病院の現在(いま)>を描くことがメインなのだ。救命救急の厳しい現状、病院経営の実態、ドクターヘリの必要性・・・(現役医師の海堂氏だからこそリアルに書ける内容だ)。そんな、ともすればお堅い内容(例えばテレビでマジ・ドキュメンタリーとしてストレートにやっても一部の人しか見ないだろう)を<ミステリー>という形式を借りて<エンターテイメント>に仕上げているのが素晴らしい!!純粋に<ミステリー>として観ちゃうと前作の方が面白いけど、いまの日本映画には、こういう現実の問題を訴える作品がないとダメ。その点でも今作の存在意義は大きい。民主党の議員先生方に是非観て欲しいね!

 共同脚本・監督は中村義洋。この人、いつのまにやら伊坂幸太郎小説の<御用達監督>みたいになっちゃったけど(→まもなく公開される新作は、かの伊坂作品「ゴールデンスランバー」の映画化。主演:堺雅人、共演:竹内結子!)これまでの諸作品同様、安定した作り。若い人やCM出身監督がやりがちな<トリッキーな映像>や<目新しい表現>は皆無だけど、的確な構図&テンポのよい編集で、上映時間2時間3分をまったくダレずに見せきる。そしてクライマックスは・・・少々ご都合主義っぽい流れだけど(=ネタばれ防止につき書きません)、ちょっと感動的でよいよ^^。原作は「ジェネラル〜」の後「イノセント・ゲリラの祝祭」があるので、こちらの映画化も是非してほしいね。


 <どうでもいい追記>「アバター」がゴールデングローブ賞の2冠(作品、監督)に輝いたが・・・解せん!「いつか観た映画」の寄せ集めがそんなに高く評価されていいの??あれ宇宙人じゃなかったら、人種差別だと思うんだけど、アメリカ人はそうは思わないのかもしれんね・・・(う〜ん、ここで文句いってもしゃーない)。