其の454:アルトマン印のニューシネマ「バード★シット」

 ディープな映画紹介が続いていますが(笑)・・・今回もまたまた未DVD化作品「BIRD★SHT バード★シット」を(そうはいいつつ、近々TSUTAYAの“復刻シネマライブラリー”でソフトが出るそうな)^^。名匠ロバート・アルトマン、1970年度の作品デス。幻のアルトマン作品、彼のファンだけでなくアメリカン・ニューシネマファンは必見だ!


 アメリカ・テキサス州ヒューストンの屋内野球場(アストロドーム)。ここに隠れ住むブルースター・マクラウド(=バッド・コート)は、鳥のように空を飛ぶ研究に没頭する青年。そんな彼を応援するのが背中に翼の跡を持つ“守護天使”ともいうべき謎の女性ルイーズ(=サリー・ケラーマン)と食料品を運んでくるホープ(=ジェニファー・ソールト)の2人。そんなある日、ブルースターが運転手を務めていた、かのライト兄弟の兄にして守銭奴の老人エイブラハム・ライト(=ステイシー・キーチ)が謎の死を遂げる。その身体には“鳥のフン”と思われるものがついていた・・・。以降、ブルースターが車を拝借しようとして見つかったアストロドームの案内嬢スザンヌ(=シェリー・デュヴァル)との恋愛模様と、ブルースター接触した人が次々と鳥のフンを付けて死んでいる連続殺人事件&捜査する警察が絡み、予想外のクライマックスにもつれ込む!!


 上記のあらすじを読むと「青春ミステリーか!?」と思われそうだが、アルトマンらしいブラック且つシュールなコメディーです。ちなみに今作の原題は「Brewster McCloud」。即ち主人公の名前なんだけど、邦題の「BIRD★SHT」は“鳥のフン”の意味。これは映画観ないと意味わからんな〜(笑)。

 1967年に書かれたものの、宙に浮いていた脚本(→執筆したドーラン・ウィリアム・キャノンが自らの演出を希望したものの、スタジオ側がそれを却下した)を、前作「M★A★S★H マッシュ(カンヌでグランプリ獲得)」で勢いにのるアルトマンが監督することになったのが今作。彼は脚本を改変&スタジオは一切干渉しない、という約束を取り付けて撮影をスタートさせた。

 「スタジオは製作に一切干渉しない」ということで・・・まぁ、アルトマンは色々遊んでますわ^^!アメリカ国家の歌唱に合せてタイトルが出たと思ったら、歌い直すことになって、また出し直す“編集ギャグ”に始まり、鳥類学者の講義が劇中何度も入ってくるんだけど(それは時にナレーションの役割も果たす)最後の方には、その先生が鳥そっくりになったりするベタな笑いも^^。あらすじに書いたように一風変わった青春映画でもありつつ、ミステリーの要素もあれば、カーチェイスもあったりして、彼がジャンルに捉われずイケイケどんどん、好き放題に撮ってる様子が目に浮かんでくる(筆者には)。

 冒頭、国家斉唱が行われ&主人公ブルースターが隠れ住む“屋内野球場”は・・・内側から見ると屋根部分が<鳥の羽根>に酷似!勿論、言うまでもなくこれは“70年代冒頭のアメリカのメタファー”。その中で自由に空を飛ぶことを夢見る若者(まさに現代のイカロス)・・・“時代背景”を考えると様々な意味と狙いが隠されていることが分かるだろう。

 主人公ブルースター・マクラウドを演じるのは、このブログに過去何度も出てきた“カルト映画出演王”バッド・コート(→この回で彼の出演作はほぼ網羅した)。顔は童顔なんだけど、胸毛もギャランドゥもしっかりあり(笑)!彼のそのボディを見て腐女子ホープが悶えるシーンは・・・アルトマンがバッドの身体を見て急遽現場で付け加えたような気がしないでもない(笑)。前作「マッシュ」でも女性の裸はギャグとして出てきたけど、その裸にされてた女性が、実はルイーズ役のサリー・ケラーマン!今作では唐突に噴水で水浴びしてて乳を出す。ラス・メイヤーの映画か(笑)!主人公を支える彼女だが、ブルースタースザンヌと結ばれたことを知って去っていく時の寂しげな表情は・・・忘れがたい印象を観客に残す。
 またキューブリックの「シャイニング」で狂ったジャック・ニコルソンに襲われる妻役で有名なシェリー・デュヴァルはこれが映画デビュー作。以後、「ギャンブラー」(’71)、「ボウイ&キーチ」(’74)、「ナッシュビル」(’75)ほか連続してアルトマン作品に出演、「アルトマン組」のひとりとなる。

 
 ラストは・・・作劇としては文字通り<予想された展開>に進むわけなんだが・・・最後の最後にアルトマンはフェリーニの某有名作をパロる(タイトル書くとネタばれするんで書かないけど)!けれどもバッド・コートの扱いだけは・・・(ああ、オチ書きて〜)。それまでの謎や伏線は回収されないんで賛否両論あるだろうけど、この終わり方こそニューシネマ(それで察してくれ)!!それは当時のアメリカ・・・引いては世界中の青年たち全てに共通する姿だったと思う。単なるイミフの作品では決してない。


 

 <どうでもいい追記>今作を観たのを最後にまたひとつ年を食ってしまった(完全アラフォー)!“知る人ぞ知る映画”が続いているから次こそは<超有名作>でも書こうかしら。サリー・ケラーマンも出てる「絞殺魔」とか(笑:どこが超有名作やねん)