其の352:楳図!うめず!ウメズ!「おろち」

 またまた更新があいてしまいました(忙しいのよ、察して:汗)。で、今回は<Jホラー>・・・です。季節感全く関係なし(苦笑)。
 筆者は20世紀日本製少年なので、勿論漫画やアニメに幼少時から接してきたわけなのですが<心の中の生涯漫画ベスト10>に必ずランクインするのが楳図かずお御大の「漂流教室」だ。これはホントに凄かった。この他にも先生の「まことちゃん」ではゲラゲラ笑い(グワシ!)、「へび少女」や「のろいの館」のタマミ(→「赤んぼ少女」として、こちらも映画化された)には心底震え慄いた。そんなわけで楳図漫画は外せない。先生の作品は映像化されたものも多いのだが・・・あまり成功してないねぇ。そんな中映画化された「おろち(注:怪獣ヤマタノオロチではありません)」はグー!原作漫画も30年ぐらい前に読んでいたのだけど、いや〜映画も面白かった^^。某監督の「漂流教室」は酷評した楳図先生だが(以前、渋谷でお見かけしたことがある。あの赤白衣装まんまだった)今作は先生も大絶賛!


 あてどなく世をさまよい、人間の心の闇を見つめてきた不老不死の謎の美少女おろち(=ドラマ「太陽と海の教室」の谷村美月)。そんな彼女が新たに目にとめたのは大女優・門前葵(=木村佳乃)。おろちが家政婦として潜り込んでみると、女主人の葵と、彼女の子供である二人の美しい姉妹が暮らしていた。この門前家には<ある秘密>があった。門前の血を引く女性は29歳を過ぎるころ突然、その美ぼうが崩れ、果ては化け物のように醜くなる家系なのだ。そんなある日、葵にもその兆候が現れ彼女は女優を引退、そして20年近い歳月が過ぎたー。
 ひょんなことから、成長した妹(=NHKの朝ドラ「こころ」の中越典子)の勧めで再び屋敷で働くことになったおろちは母の跡を継いで女優となった姉(=木村佳乃2役)と再会する。だが妹がおろちを屋敷に招いたのには理由があった・・・。


 主人公の「おろち」は不老不死&超能力を持つ謎の美少女(漫画は宇多田ヒカルの母・藤圭子似)。で、漫画も映画も基本的には狂言回しの役割を担う楳図版「超人ロック」的な存在(但し「光の剣」は出ない)。楳図御大原作の映画化とあって、日本を代表する<ホラーな人々(どんな形容詞だ)>が今作に集結した。
 原作のエピソード「姉妹」、「血」の2つの話を1つにまとめて脚色したのが「リング」シリーズを当てた<Jホラー>の立役者のひとり、高橋洋。そもそも「姉妹」のエピソードは映画「何がジェーンに起こったか?」が元ネタと思われるが(ちなみに漫画だと顔が崩れ始めるのは18歳)、違和感なく融合していて巧い脚本だと思う。


 監督は「リング0 バースデイ」、「予言」の鶴田法男。「おろち」の前年には「ドリーム・クルーズ」で海外進出も果たしている御方。ほぼ全編、門前家の屋敷(古びた洋館!)が舞台となるので(→セットには高価な調度品が多数集められたため、とりわけ気を使ったそうな)ゆったりとしたドリー(移動撮影)を多用しつつ、本編の肝にあたる●●シーン(→ネタバレ防止)ではジャンプカットを使用。それまでゆったりと展開していた分、いきなりのジャンプなので登場人物たちの<焦り>が強調されて巧い演出だと思った。尺詰めるためになんでもジャンプさせる某ハリウッド監督より、よほどキチンと考えて使ってる(笑)。室内外も色調を変えるなど、徹頭徹尾<楳図ワールド>を再現&構築することに気が使われていて「Good Job」!


 主演の谷村美月は、監督から「おろちは人間ではないので、まばたきしないように」と注文され大変だったそうだが(ひとり芝居で長回しも多いし)、歌唱シーン(→何故歌うのかは見てのお楽しみ♪)もあるのでファンは要チェック!谷村もいいけど、筆者がより目をみはったのが木村佳乃(=「ドリーム・クルーズ」にも出演しているので鶴田と2度目のお仕事)と中越典子の<壮絶喧嘩バトル>!中越がリハーサル終わりで木村に「本番では本気で殴ってください」と伝え、マジでガチンコ!!髪をつかんで引き回すわ、殴り倒すわ・・・。美醜の問題は女性の永遠のテーマだとは思うが・・・う〜ん、女性同士の戦いは恐ろしい!<清純派>中越はキスシーンもこなすし(相手役、山本太郎は残念ながらミスキャストだ)木村はゲロさえも吐く渾身の演技!2人の演技力が今作で格段に上がったと思ったのは・・・筆者だけか??最後の最後には<大どんでん返し>があるので気を抜かずに観ましょう^^。「帝都物語」の嶋田久作加藤保憲!)の執事も不気味でいいゾ。


 
 それにしても楳図先生の休筆期間は・・・長いっすなぁ。あのしょこたんも先生を「神!」と崇めているから若い世代も楳図漫画を知っているようだし、住居問題も落ち着いたと思うのでそろそろ新作を書いて欲しいものだ。勿論、これまでの同様、美少女が恐怖に顔を歪めて「ぎゃ〜〜っ!!」と叫ぶシーンがあるやつを。


 
 <どうでもいい追記>悩んだ末、絶賛公開中の超大作映画「沈まぬ太陽」を観にいった。読んでいる原作小説(→文庫本5冊!)もようやく5巻目に突入!読破した暁には、新ネタとして更新予定。それにしてもこれが全て事実なら、某航空会社は酷いところだねぇ!これじゃ破綻するわ。