其の349:草食系男子はどう観る?「蘇える金狼」

 今年は太宰治松本清張の生誕100年ということで、ごく一部で盛り上がっているようですが(笑)松田優作の没後20年目でもある!そこで「伝説のアクションスター」松田優作のハードボイルドにしてバイオレンス+ピカレスクロマンの「蘇える金狼」(’79)を久々に再見(勿論、同名リメイク作や某局の連ドラじゃないよ)!歌舞伎でいえば「白浪もの」だけど・・・ツッコミどころは多々あるけど、優作自身はやっぱ凄いわ!彼の鍛えあげられたしなやかな肉体の躍動感が観ている間は細かいことを全部吹き飛ばす!!蛇足だが柳沢きみおはこれをヒントに「特命係長只野仁」を書いたのでは、と筆者は勝手に睨んでる^^。


 ある日の早朝ー。銀行の現金輸送車が襲われ1億円が強奪された。その犯人:朝倉哲也(=優作)は、昼は地味なサラリーマンだが、夜はボクシングジムで身体を鍛える<2つの顔を持つ男>。首尾よく大金を掴んだものの、紙幣のナンバーが全て控えられていることを知り、ヤクザから強引に悪徳市会議員の名を聞きだし、激しいバトルの末に現金1億円分をヘロインに代えることに成功する。
 その頃、朝倉が勤める大手企業の社長以下、幹部一同は総会屋(千葉真一!)からスキャンダルをネタにゆすられていた。それを知った朝倉は幹部の愛人(風吹ジュン)を手なずけ、自らの野望実現に邁進していくのだがー!?


 原作は故・大藪春彦大先生の代表作のひとつ。翌80年に公開された、これまた大藪原作、優作主演の「野獣死すべし」は原作が大幅に脚色されたが、今作は比較的原作に忠実である(時代設定とかは違うけど)。<昼と夜、2つの顔を持つ男>の設定は「必殺」シリーズの中村主水シュワちゃんの「トゥルーライズ」ほか良くあるパターンだが(「只野仁」もこのクチ)、イケメン優作は分厚い眼鏡にダサい髪型(→ヅラかぶってる)で平凡なサラリーマンを巧みに演じている。
 ところが一歩外に出ると度胸満点、頭脳明晰にしてマーシャル・アーツの達人<朝倉哲也>に一変(でも住んでる家の内装はヘン:笑)!一言で言えば<ストイックで孤独なアウトロー>って感じ。優作が今作に備えて、ハワイで射撃練習(=もち実弾)したのは今では有名な「優作伝説」のひとつだ。


 朝倉は「マカロニウエスタン」の主人公同様<大金を得るため(→それで何がやりたいかはマカロニ同様、不明)>暴力団にヘロインの元締めを聞き出した挙句、結果皆殺しにする、ぶっちゃけ・・・かなりのワルなんだけど(笑)映画には更に上をいくワルの政治家や会社の金を食い物にして、バレそうになると殺し屋まで平気で雇う幹部たちと<巨悪>がゴロゴロ出てくるので(こいつらこそ真の「銭ゲバ」)、つい<下流>の我々としては彼を応援してしまうわけ^^。


 いま現在の観点で観ると・・・優作が強引にヘロインの取引を迫る政治家は和服着て、異常に髭の長い老人。どう好意的に見ても一昔前のベタベタな大物政治家像(笑:こういうルックスは「影の総理大臣」とかだよな)。で、単なる一市会議員のくせに私兵はいるわ、取引場所には素人相手にマシンガンまで用意して待ち受けてる(爆笑)!
 それを見越してた優作は黒いつなぎスタイルで(→漫画の「ドーベルマン刑事」と酷似)「ランボー」の如くひとりひとり倒していく。中でも彼がさかさ吊りになって敵を射殺する場面は「レオン」より早い!!スタローンやリュック・ベッソンは今作を見ていないだろうけど(笑)このバトルシーン(=ロケ地は横須賀沖の「猿島」)は「遊戯」シリーズでも優作と組んだ監督・村川透の功績だろう。


 役者陣もいい人たちが出てます。コミカルな演技を見せる千葉真一(今作では腕っぷしは全然強くない)を筆頭に、ワルの会社社長に佐藤慶、幹部たちに成田三樹夫小池朝雄・・・怖い顔の人たちばっか(笑)。ドラマ「探偵物語」ではないので、成田三樹夫も優作に「工藤ちゃ〜ん」とはいいません(笑)。そして片言の日本語を操る怪しすぎる探偵には岸田森!「怪優」の面目躍如っす^^。

 女優ではー風吹ジュンは今でこそすっかりオバちゃんだけど(失礼!)ヤク煙草吸いながら優作と一晩中ヤリまくるシーンにファンは多い(=乳出しあり)。村川監督はにっかつロマンポルノ「白い指の戯れ」撮った人だから、ベッドシーンもお手のもの♪但し、優作が朝飯食いながらバックでヤルところは今ではギャグだろう(笑)。ちなみにこういうことやって警察にバレると、●尾や●●ピー同様、大変なことになるので良い子のみんなは真似しないでね!


 このブログ的おたく話をすると、音楽担当の故ケーシー・ランキンは、かのロックバンド「SHOGUN」のメンバーとして知られているが、筆者的にはアニメ「超時空世紀オーガス(=「超時空要塞マクロス」の後番組)」のオープニング&エンディング歌ってた人として認識している(笑)。


 
 今作の予告編で使われている優作の台詞は「気をつけろよ、刺すような毒気がなけりゃ、男稼業もおしまいさ」(劇中にこの台詞はない)・・・。優作はどう見ても<肉食系男子>だけど、一方のガツガツしない若い<草食系男子>はこの映画をどう観るんでしょうねぇ?
 ちなみに筆者はもういい年こいてるので・・・すっかり草食系だ(苦笑)。