<其の719>最後(!?)の「ランボー」&鈴木清順「野獣の青春」

 約3か月ぶりに映画館に行って「ランボー ラスト・ブラッド」(’19)を観て来ました。筆者は「ロッキー」、「ランボー」の<リアル世代>でもあるので・・・観るしかないでしょ(笑)!前作の終わり方でも良かったけどねぇ・・・。1作目の原題が「ファースト・ブラッド」だったので・・・5作目にして、最初にリンクさせた形(邦題は英語の原題まんま)。同じシリーズ物でも、「ロッキー」が<陽>なら、「ランボー」は<陰>なキャラである事も筆者のポイント高し。

 故郷で“疑似家族”を作って平穏に過ごしていたランボー(=シルベスター・スタローン)の“養子縁組した娘”が、メキシコの人身売買組織に捕らわれた事から、ランボーが組織をぶっ潰す内容なのだけど・・・以前スタさんは「4作目のランボーはメキシコの麻薬カルテルと戦う話」・・・を構想していたのを、実際にはミャンマー政府軍に変更してバトルした訳だが<メキシコの組織>というアイデアは捨ててなかったのね^^。この為、リーアム・ニーソン主演作「96時間」の1作目にちょい似ちゃった感&かつて旧ソ連軍とも闘ったランボーの敵としては、大分スケールダウンした感もなくはない。でもスタさんは共同脚本も担当・・・本人がいいなら、いっか(笑)。

 クライマックス、自宅周辺に敵をおびき寄せて戦う大バトルは凄まじい(ここのアイデアは「ホーム・アローン」シリーズからきたらしい)!爆破シーンはCGじゃなくてマジでやったそうだし(ちなみに今作はアメリカとメキシコが舞台になっているものの、実際のロケはブルガリアとスペイン領カナリア諸島)。数々の罠を仕掛けて次々と敵を仕留めていく様子は圧巻だが・・・個人的には弓矢だけではなく、マシンガンを乱射するランボーの雄姿も観たかったな~。

 アクション映画の完成度としては中の上・・・ですかね。なんでも映画の冒頭部分はアメリカ本国版ではカットされているそうで、そこのところは全部観られた日本公開版で良かったわ^^!一説にはスタさんはもう1本ぐらいアイデアあるらしいので「ロッキー」に倣って「ランボー ザ・ファイナル」とか作るかもしれない(苦笑)。

 スタさんがどれだけ関与するのかは不明だけど、刑事もの「コブラ」とSFアクション「デモリションマン」のリメイクも企画されているとかいないとか・・・。それよかスタさん主演で「エクスペンダブルズ4」の製作を希望する!!

 

 ついつい「ランボー愛」が炸裂して長くなってしまった(苦笑)。もう1本は鈴木清順監督作「野獣の青春」(’63)。ハードボイルドの大家・大藪晴彦の小説「人狩り」を宍戸錠主演で鈴木清順が演出。一般的には今作で“清順美学が開花した”と評価されているから(ご本人的にはハナからやっていたことで大して意識してなかったようで)ーこのブログでも書かないとしょうがない(笑)。生前、宍戸錠が自作ベスト3に挙げた1作でもある(他は「ろくでなし稼業」、「拳銃は俺のパスポート」)。

 

 お話は宍戸錠演じるジョー(まんまやんけ)が、対立する2つのヤクザ組織の渦中に入り、双方を煽って壊滅させる・・・というハードボイルド活劇の典型的なパターン。これで一番有名な邦画は黒澤明の「用心棒」(’61)だろう。この点はさすがに清順監督も意識したと推測できるけど・・・このよくあるプロット(といいつつも今作では主人公の正体や最後のオチを捻ってある)に清順監督は様々なアイデアをぶち込んだ。

 今作は<カラー作品>なんだけど、冒頭の過去のシーンは<パートカラー>になってる。<パートカラー>で有名なのは、またまた黒澤の「天国と地獄」で、今作と同じ年の公開なんだけど、「天国~」が3月公開で、「野獣~」は4月の公開だから・・・これは意識したのでなく、偶然の一致と思いたい^^。

 なにより今作で目を引くのが数々の美術設定。主人公が最初に接触する組が経営するキャバレーの壁はマジックミラーになってるし、もう片方の組があるのは映画館のスクリーン裏!また、当時実際にあったのかどうかは生まれていないのでよく知らないけど各テーブルに固定電話が置かれた「テレフォン喫茶」とか出てくる(しかも電話は赤と白の紅白カラーで塗装)。あるヤクザのマンションには戦闘機のプラモデルが大量に吊り下げられていたり(プラモおたくか^^)、見た目紳士の組長(=演じるのは「ウルトラマン」に出てた小林昭二!)が家の中で情婦をズボンのベルトで痛めつけるシーンでは、外では突如黄色い砂塵が巻き起こる(何故?)!いや~・・・この訳の分からなさこそ「清順美学」(笑)。クライマックスの大銃撃戦もロングショットで処理してるし。普通はアクション映画最大の見せ場だから、細かくカット割ってドンパチと人が死ぬとこ撮るもんだけど・・・この判断もある意味凄い!筆者がプロデューサーで、現場にいたら・・・怒るかも(笑)。

 主人公以外のキャラ設定も常に酒飲んでるアル中っぽいヤクザの幹部や「酒と女が嫌い」な組員に、親の出自の話になるとブチ切れるオカマちっくなヤクザ(=演じるのは川地民夫)とか超クセが強い面々!よくあるストーリーラインでも、上手にアレンジすればいくらでも面白くなるというのが今作最大の特徴かも。若い映画作家さん達には是非参考にして頂ければ^^。

 

 公開するにあたって「映倫」から大分、エロとグロのシーンは削除を言われたそうなので、ラストの“あるシークエンス”も丸々カットされたとの事だが(残念:その意味では先述の銃撃戦も一部カットされたのかもしれないネ)、そこは観客も想像できる部分なので、大きなマイナスにはなってないし、映画が面白い事に変わりない。鈴木清順監督の快作にして怪作^^。

 

 いまや映画を観るには、観客はマスク着用必須。劇場では検温や席を空ける、チケットは直接手にとらない等々、<コロナ対策>バッチリとっていたけど・・・町には老若男女問わず、マスクしていない人がちょいちょいいらっしゃる。都内の感染者数は依然高いままー。「感染者0」の日は当分来ないだろうな~・・・。