其の327:ウー的歴史大作「レッドクリフPart2」

 大雨の中、「プラダを着た悪魔」のアン・ハサウェイ主演作「レイチェルの結婚」を観賞。キャッチコピーに「家族の運命を変えたあの出来事。人生最良の日に明かされた秘密とはー」とあるので、最低でも<本当は主人公は養女だった!>とか、あるいは<家族が宇宙人に憑依されていた!>とかそのテのミステリーかSFかと思ったらそうじゃなかった(笑)。
 お話はアン・ハサウェイ扮する主人公がお姉さんのレイチェルの結婚式に出席するため実家に帰宅するところからスタート。家族や集まった人々との会話の中から、実は様々な事情を抱えていることが浮かび上がっていく・・・というもの。全編、手持ちカメラやビデオカメラで撮影されているため(手ぶれやピンボケあり)「レイチェルさんの結婚式前後を記録したドキュメンタリー」的な味わい。
 製作・監督は「羊たちの沈黙」、「フィラデルフィア」のジョナサン・デミ。彼はかのロジャー・コーマンの下、女囚映画で監督デビューを果たしたわけだが(笑)今回、そのコーマン(=日本的には連呼するとヤバい)がパーティー客のひとりに扮してビデオカメラ撮影してる。義理固いなぁ、デミ(ムーアじゃないよ)^^。
 公開始まったばかりだし、ネタバレになるので詳しくは書けないけれど、これは深〜い「人間映画」!大きな事件はないけれど観客ひとりひとりの心に迫る秀作。
 アン・ハサウェイは近年、デビュー当初の「お姫様キャラ」のイメージを払拭しようと様々なジャンルの映画に出ていますが、今作でも大いに奮闘。「尿検査」に「駅弁ファック」、さらには「脇毛剃り」まで披露(どれもカット短いけど)。暇で下手な映画観るのなら、是非これを観て欲しいね^^


 そして「レイチェル〜」の後、はしごして観たのが(我ながら、よ〜やるわ)ジョン・ウー御大がご存知「三国志」中の「赤壁の戦い」をピンポイントで描いた「レッドクリフPart2 ー未来への最終決戦ー」(→いつの間にかサブタイトル付いた)。ようやくタイトル通りの「赤壁の戦い」が描かれる後編。前作を観て「ここで終わっちゃうの!?」と驚愕した人も多かったそうだが、2部作なんだから<前ふり>で終わるのは筆者的には超想定内。そして肝心のシリーズ完結篇には・・・凄いバトルが待っていた(喜)!!ちなみに、またまた冒頭分かりやす〜い解説がつくから(もち日本のみ)前作観てなくても大丈夫^^
 お話は長江の対岸に布陣した「魏」軍の間で疫病が発生したところからスタート。曹操はなんと病死した兵士の遺体を船で「呉」+劉備(=まだこの時点で「蜀」という国は成立していないのよ)の連合軍サイドに送りつけることで敵方にも病気を流行させるバイオテロを敢行!その為、戦力の低下を恐れた劉備軍は同盟を解消して移動するも孔明金城武)だけは呉軍に残り、「10万本の矢を3日以内に集めた」り、「風向きが変わるタイミングを予知した」りして、いざ決戦ー!!
 前作からし孔明周瑜トニー・レオン)がマブダチになったり、後年の「北伐」の陣形を再現するなど、伝えられている話や史実に脚色を加えている「レッドクリフ」。今作でも「苦肉の計(苦肉の策とは違うので注意)」がなかったり、呉の孫権の妹が密偵になってたり・・・とまたまた実際のお話とは微妙に異なるのだが、その分、いざ「火攻め」が始まるとド迫力の<火焔地獄>が魏の兵士に襲いかかる。「これぞ映画!」
 この「赤壁の戦い」、かの横山光輝の漫画でも意外にあっさり書かれていたし、横山版のTVアニメやそれ以外の作品でも赤壁で<魏の大船団が炎上して終了>というものが多いのだが、今作では炎上(これは凄かった)に続き、曹操が陸に築いた本陣での陸戦をも再現!「プライベート・ライアン」の<ノルマンディー上陸作戦>を彷彿させるハイパー・ジェノサイドに突入、完全に史実を逸脱してウー印満載の脳内「三国志」に突入していく!!
 ちょっと説明しないと分かりにくいのであえて書きますが、今作ではなんと撤退した劉備軍は戦闘開始後、陸戦に参戦(→これは嘘。「三国志演義」では孔明の指示で曹操の逃避行ルートに関羽が待ち構えていたりする)!燃えさかる敵の城内で周瑜趙雲が背中をあわせて戦うのは「狼 男たちの挽歌・最終章」ほかで観られたものだし、周瑜曹操が互いに刀をつきつけあうポーズは・・・刀を銃に変えたら、いつものジョン・ウーポーズ(→これに対してウーは「ちょっとしたファンサービス」とコメント)!先述の「一度は逃げた劉備たちが再び戻ってくる」のは「男たちの挽歌」のチョウ・ユンファのイメージだそうだ。ウーのファンである筆者はつい「やってる!やってる!」とニヤニヤしてしまった。で、趙雲の重力完全無視のスーパーマンぶりに大笑いしたのだが・・・笑ってるのは劇場で筆者だけ(苦笑:ここ欧米人なら絶対笑うとこなんだが)。トレードマークの「白い鳩」も前作同様、健在(笑)。
 前作は「普通の出来」で「壮大な前ふり」と評した筆者だが、今作は超重量級スペクタクル&アクションが観られて面白かった^^。戦いを締める周瑜の台詞(あえて伏せます)には、ウーがリスペクトしていると公言する「七人の侍」の志村喬の<某名台詞>の影響を感じたがー調べてみたところ先の戦闘シーンは「七人〜」のオマージュなんだと。筆者の推理もまんざらではない(自画自賛)。
 日本人の大学教授でウーに依頼されて監修した先生も「服装や甲冑といった時代考証の点から見ても、これまでに作られた三国志映画の中で最高の出来」と誉めていらっしゃったが、筆者的にはもう少し関羽張飛(字は益徳※「〜演義」では翼徳)の活躍も見たかったし、最後の最後、字幕スーパーだけでいいから「この戦いの後、彼らはどうなったか」を付けてほしかったと思う。史実よりも<友情や勇気>をテーマにした映画ゆえの措置だろうが・・・(筆者は知ってるからいいけど)。「赤壁」後、どうなったかは各自で調べてみてください^^。いつも書いてるけど、そういう「学校では教えてくれないこと」を学ぶ姿勢が大事だと思うので。

 <蛇足>この「レッドクリフ」の販促ツールとして「キューピー人形」と「三国志キャラ」が合体したフィギュア(しかも携帯ストラップ)が数種類作られたそうだが、先日あるルートから限定1000個のみ製造されたジョン・ウーとキューピー人形が合体した通称「ウー・ピー」携帯ストラップ(爆笑)を頂いた。それほど興味はなかったんだけど・・・先方から「激レアですよ!」と言われたので、現在大事に保管中。将来、高値がつくのかどうか楽しみだ(でも売らんけど)♪