其の321:伊版ゴルゴ13?「殺しのテクニック」

 このブログでこれまでマカロニウエスタンをさんざん紹介してきましたが、勿論イタリアでウエスタンばかり作られていたわけではありません。1966年公開の映画「殺しのテクニック」は、現代(=60年代当時)を舞台に孤高の殺し屋を描いたアクション作!「殺しのテクニック(略すと「殺テク」)」という邦題からは<華麗な狙撃テクニックの数々>が観られそうな感じですが、それは期待しないように!むしろ地味ですから(笑)。また、DVDのジャケットには「レオン、ダーティハリー男たちの挽歌の原点!」と書かれていますがーそういった要素はあるけれどーかなりオーバーなキャッチコピーだな(苦笑)。

 
 天才的スナイパー、クリント(=「特攻大作戦」、「ガルシアの首」のロバート・ウェッバー)は長きに渡る暗殺稼業から足を洗うべく最後と決めた仕事(無論「暗殺」だ)を終え、依頼主のギャングの元へ向かった。ところがその席でボスから大金を提示され「次の仕事」を頼まれる。FBIに逮捕され、組織の全容を告白してフランスに逃亡した裏切り者セキを殺してほしいというのだ。クリントは依頼を断るが、セキの一味は先手を打って彼を急襲!その結果、クリントの兄が巻き添えを食って死んでしまう。復讐を誓った彼はニューヨークから一路パリへ。セキは整形手術を受け、以前とはまるで顔が違うという。ボスが半ば強引に相棒としてコンビを組ませたトニー(=フランコ・ネロ!!)と共に関係者を当たってゆくクリントだったが・・・!?

 アクション映画ではありますが、セキの正体を探る「ユージュアル・サスペクツ」的ミステリーはあるし(観客は主人公の視点でことの真相を見守ることとなる)、殺し屋集団とのドンパチは勿論、お色気担当の「謎の女(お約束)」も出てくるので娯楽作の要素は全てあり。普通、殺し屋とか暗殺者って「ゴルゴ13」のように無口なイメージ(=なんせモデルは高倉健さんだし)だけれど、クリントはアメリカ人だけに結構しゃべる(笑)。そして主人公の行動原理となる<復讐>そして時折見せる主人公の<ガンさばき>は当時隆盛を誇った「マカロニ」テイスト!さすがイタリア映画、「売れる」要素はなんでも入れる^^

 
 主人公に扮するロバート・ウェッバーは、狙撃ポイントに到着すると淡々と銃を組み立て、弾を込め、アイパッチをして照準に目を凝らしターゲットを狙い撃つ!その一連の動作が決まっていて、いかにもプロっぽくてグッド!
 そして彼とコンビを組む若き殺し屋トニー役のフランコ・ネロ!この1966年、ネロ(「フランダースの犬」じゃないよ)は代表作となる「続 荒野の用心棒」でジャンゴを演じている。無精ひげ生やしているジャンゴと違って今作では、ひげはないし黒ブチ眼鏡なんぞかけてるものだから・・・一瞬、ネロと分からなかった!おまけに女好きだし、強いのか弱いのかよく分からん役(苦笑)。マカロニのイメージで彼を観ると驚くことうけあい。

 
 監督・脚本はこれが長編デビューとなるフランク・シャノン。これは<変名>で、本名はフランコ・プロスペリ!誰がどう聞いてもイタリア人(笑)。今作では先述のネロも「フランコ」ではなく「フランク」とクレジットされている。この当時のイタリア映画人は世界配給されるような作品の場合は何故かアメリカ人を装っていた。「荒野の用心棒」でもセルジオ・レオーネエンニオ・モリコーネ両巨頭すらアメリカ的名前に変えてるし。あいにくシャノンは今作は評判良かったけど・・・後の作品は大半がB級C級クラス。書いても分かる人いないと思うのでやめときます。
 但し、編集マンとしてルキノ・ヴィスコンティ監督作「若者のすべて」、「山猫」等を手掛けたお方が参加していたりとなかなかあなどれない布陣でもある。劇音はクール・ジャズが使用されているが・・・こんなに渋い作品でいいんだか悪いんだか(苦笑)。

 
 クリントとトニーが行くさきざきで関係者が殺されていたり、2人が襲われたりして観ていて飽きはしないのだけど少々説明不足の箇所や飛躍し過ぎている点も多々ある。「謎のヒロイン」は最初いかにも<敵の情婦>っていう感じなんだけど、主人公を誘惑してその隙を突いて殺すのかと思ったら、そうでもなかったり中途半端な設定だし、終盤、主人公が敵のアジトを再訪した後では、いきなり次のシーンでカー・チェイスやってる!で、相手の車が予想通り崖に落ちるんだけど、その途中で爆発してしまい思わず「なんでやねん!」と突っ込んでしまった(苦笑)。おそらく<いきなりのカー・チェイス>は尺の問題かテンポを上げる為かどちらかの理由で行われたのだろうが・・・唐突過ぎるよなぁ。主人公が車を発進させて、ふとバックミラーを覘くと後ろに車がついてきていて・・・とカットを畳み掛けて初めてサスペンスが醸し出されるわけで。この辺りは惜しまれる。もっともイタリア映画だけにハナから撮ってないかもしれんが(笑)。


 今作がヒットした為「続・殺しのテクニック 人間標的」(’67)、「新・殺しのテクニック 次はお前だ!」(’70)などという作品もあり、一見<シリーズもの>と考えがちですがハッキリ言ってスタッフ、キャストとも何の継続性もありません。ホントに昔の日本の配給会社はムチャクチャな邦題をつけてたよな〜(笑)。当初は3本まとめて今作を紹介しようと考えていたのだけれど(特に「新〜」は主人公がネロで、音楽はモリコーネ御大♪)なんせ忙しいもんで、そこまで手が回らなかった。邦題だけで内容関係ないからゴメンして。「続」と「新」はまた後日、暇が出来たら取り上げますんで、それまで首を長くしてお待ち下さい^^