其の213:マカロニウエスタン<応用編>

 <応用編>等とたいそうなタイトルをつけましたが、単にマカロニウエスタンのキャラクター&とんでも銃器についての考察が今回の内容です(笑)。マカロニからスターになったのはクリント・イーストウッドフランコ・ネロ、そしてジュリアーノ・ジェンマが有名でしょう(ナスターシャ・キンスキーの父親、クラウス・キンスキーとか若い時のバート・レイノルズにあの仲代達矢大先生、「ビートルズ」のリンゴ・スターまでマカロニに出ているんだけどね)^^
 
 クリント・イーストウッドがイタリアに渡って出演した「荒野の用心棒」で世界的大スターとなったのは周知の事実ですが、この時の役に名前はありません(「夕陽のガンマン」、「続 夕陽のガンマン/地獄の決斗」ではそれぞれ名前あるんだけど、アメリカでは何故か「名無しの男」で統一)。ポンチョを着た彼のスチール写真は映画ファンなら1回ぐらいは観たことがあるでしょう^^
  
 三池崇史の「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」の「ジャンゴ」とは、フランコ・ネロ(「ダイ・ハード2」にも終盤出てましたね)が「続 荒野の用心棒」で演じた役名がオリジナル!全身黒づくめの衣装で馬にも乗らず、棺桶引いて歩いてる。で、その棺桶にはガトリング砲(通称「マカロニ機関銃」)が入ってて一気にならず者たちを倒すと(笑:残酷描写も満載で、おかげでイギリスでは長い間上映禁止だったそうな)。
 今作の大ヒットで「ジャンゴ」の名はひとり歩きする事となり(=それで観客に続編だと勘違いさせる)、ネロ主演作は勿論、トーマス・ミリアンほか実際には役名違うのに数多くの映画のタイトルに「ジャンゴ」の文字が躍るようになったわけ。三池もその便乗者のひとりですな(笑)。

 そして「荒野の1ドル銀貨」で人気者となったのがジュリアーノ・ジェンマ。元体操選手という事で、その抜群の運動神経を生かしてほとんど曲芸のようなガンプレイを披露していますが(笑)、「金」や「復讐」といった人間の欲望ギラギラがメインのマカロニウエスタンには・・・ちょっとジェンマは似合わない気がする。そういう理由もあって筆者はあまりジェンマ出演作は観ていないので、これ以上のコメントは差し控えます(笑)。


 「ジャンゴ」以外で<マカロニ有名キャラクターの名前>といえば「夕陽のガンマン」&「続 夕陽〜」でイーストウッドと共演したリー・ヴァン・クリーフ扮する「西部悪人伝」の「サバタ」ですね(クリーフはジェンマに「怒りの荒野」でガンマン10か条を伝授したお師匠様)!紳士風凄腕ガンマンのサバタは人気を博し、シリーズ化されました(タイトルにサバタの名称はないけど)。
ところがアメリカ向けにサバタ・シリーズ第2弾として宣伝された「大西部無頼列伝」では何故かサバタをユル・ブリンナー(「荒野の七人」、「王様と私」)が演じている!ここ間違えないように。

 
 更にコアな一部の映画ファン&マカロニファンの間で知られている名前が「サルタナ」(「サルマタ」ではない)。4本ほどシリーズがあるのですが(他の役者が演じた作品もあるらしい)全て日本未公開!!ところが近年、シリーズ4作目だけではありますがDVDが発売されました。「さすらいのマカロニ野郎」ことSくんのおかげで筆者も初めてサルタナ・シリーズを観賞する事が出来ました^^
 タイトルは「サルタナがやって来る 虐殺の一匹狼」。サバタ同様、紳士風謎の凄腕ガンマン・サルタナ(演ずるのはジャンニ・ガルコ)が悪徳保安官、ならず者の一味ほか大勢を向こうに回して(理由はまた「金」なんだけど)大活躍する一大娯楽作でした。で、これに出てくる<銃器>の凄いこと!!


 
 前回の「基本編」でも書きましたがー大半のマカロニにリアリティーや正確な時代考証を求めてはいけません(笑)。面白ければ「なんでもあり」・・・です。さすがにこのジャンルの始祖セルジオ・レオーネの監督作はとんでもないデタラメさはなく、銃器にしてもかなり正確なんですが(本場アメリカでも時代考証を無視して南北戦争ものにコルト・ピースメーカー出したりしてる)先の「西部悪人伝」(凄いタイトルだ)で主人公が持つのは小型銃ながらグリップにも銃身が仕込まれている、ある意味卑怯な銃(笑)。さらに彼の仲間はバンジョーに銃を仕込んでいるのだから・・・いやはや(笑:当時、人気を誇った「007」ほか一連のスパイ映画に出てきた秘密道具の影響らしい)。

 「サルタナがやって来る」だと主人公は銃や爆弾を仕込んだ「からくり人形」のほか、大砲や機関銃を搭載した「オルガン(楽器のオルガンよ!)」を弾いて敵を殲滅する(笑:こういうのに影響されて「子連れ狼」の乳母車にも機関銃があるんだけどね)。このシリーズ4作目を監督したのはアンソニー・アスコット(アメリカ向け変名。本当の名前はジュリアーノ・カルニメオというバリバリのイタリア人)。この御仁、「荒野の無頼漢」という作品では主人公が「ミシン(縫い物するあの機械よ!)」に仕込んだ銃<通称ミシンガン>で敵をバッタバッタとなぎ倒す(爆笑:一時期の香港映画並のでたらめさ。何故かロシアのコサック兵まで出るし)!!痛快さ、ここに極めり(笑)。


 はやりの要素は素早く取り入れ、なんでもありの精神で作り上げた娯楽作。それが「マカロニウエスタン」で御座います。あやや主演の「スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ」より100倍は面白いので(筆者はなんでも観るのよ)騙されたと思って是非一度ご観賞あれ(次回は最終回として「マカロニウエスタン 番外編」!「メキシコ革命」を舞台にした作品を紹介します)