其の303:「スパイダーマン」シリーズ総括!

 先日、ウン十年ぶりに「無敵超人ザンボット3」を3話分ほど再見しましたが・・・やっぱり凄かった!富野喜幸(現:由悠季)が「ガンダム」、「イデオン」以前に監督した知る人ぞ知る大傑作。若い人にも「萌え系」ばかりじゃなくて是非観て欲しいTVアニメだ(DVD出てるよ)^^


 先日、サム・ライミの知る人ぞ知るB級アクション快作「ダークマン」を紹介しましたが、「ダークマン」の発展ともいえる(で世界的大ヒット)「スパイダーマン」3部作を総括しておかないといけません。「バットマン」と今シリーズの大ヒットがあってこそ「アイアンマン」とか「ハルク」他アメコミが競って実写化されたわけで。筆者的には主人公がダークな「バットマン」も好きだけど(この年になると、単なる善人ヒーローって偽善者に見えたりしちゃうのよ)。シュワちゃん抜きでも「ターミネーター4」を作るハリウッドらしく「スパイダーマン」も「4」の製作が決定していますが(「6」まで作るらしい)・・・いいんだか悪いんだか(苦笑)。


 「スパイダーマン」第1作は2002年の公開。冴えない高校生ピーター・パーカー(トビー・マグワイア)が遺伝子操作された蜘蛛に噛まれたことから超人的能力が備わり自ら衣装を手作りして「スパイダーマン」として活躍する「ヒーロー誕生の巻」。幼馴染メリー・ジェーン・ワトソン(キルスティン・ダンスト)との恋あり、伯父さんが殺される悲劇あり。戦う敵はグリーン・ゴブリン(演じるはウィレム・デフォー)!その名の通り、緑の衣装に空飛ぶスケボーと最新武器でスパイダーマンに襲い掛かります。

 少年時代から原作の大ファンだったライミが数いる候補(ジェームズ・キャメロンが長年、映画化したがっていたのは有名)を抑えて監督の座を手にした第1作。スタジオの重役たちに熱烈なプレゼンをしたらしい(笑)。原作を読んだことのないトビー・マグワイアキルスティン・ダンストを自らキャスティングし(=これで観客との親近感増)、自らの「スパイダー愛」を注ぎ込んだ。

 なんといってもスパイダーマンが摩天楼に糸をピュッピュッピュッピュッ飛ばしながら跳躍する映像が素晴らしい(当時はまだ珍しかったCGキャラクター。勿論、お金かかってます)!この「糸」の元が「精子」であることはちょっとしたトリビア(キャメロンは糸出したあと主人公がミルクをごくごく飲むシーンを考えていたそうだ:笑)。跳躍シーンが運動力学的に正しいかどうかは・・・興味のある人は「空想科学読本」でも読んでほしい(笑)。

 「怪人バトル」との視点で観ると、ちょっとゴブリンとの最後のバトルが腰砕け気味なのは・・・ご愛嬌か。9.11により貿易センタービルの姿を消去する必要に迫られるなど少々のトラブルもありつつ無事完成!大ヒットしたから良かったが、もしここで失敗していたら・・・ライミは今頃どうなっていたのだろうか。筆者的にはその昔、日本(東映!)で作られたTVドラマのテーマ曲が流れることを期待したが・・・さすがにそれはなかった(残念:音楽はダニー・エルフマン)。



 キャスト、スタッフまんまで2年後に公開された「スパイダーマン2」は「ヒーローの挫折と再生の巻」!正体を隠して人助けするものの、おかげで大学の授業やバイトは遅刻ばかりで散々な目に遭う主人公(笑)。そのうちスーパー能力もイマイチになり、MJ(ダンストよん)が他の男と婚約した事を知ってヒーロー業(って儲けないけど)を廃業することに・・・。勿論、怪人が登場するんでヒーロー業を復活させることになるんだけどね^^

 今回の敵はドック・オフ(「ショコラ」、「ダ・ヴィンチ・コード」の名優アルフレッド・モリーナ)。背中に機械の手がくっついてるタコ人間状態(笑)!これに加えてピーターの親友にして、前作でグリーン・ゴブリンに変貌した男の息子ハリー(ジェームス・フランコ)が<父の仇>として物語に絡んでくる。
 日本のヒーローものの「怪人」は大抵<改造人間>だったり元々怪物だったりして人間性がない場合が多いのだが(=「仮面ライダー」の「ショッカー」然り)「バットマン」や「スパイダーマン」の怪人は、普通の人間が事故や事件に巻き込まれて変貌するパターンが圧倒的!日本人とアメリカ人の考え方の違いがみられて面白い。

 2作目の見所は中盤の「列車バトル」!ドック・オフによって制御不能になった暴走列車を如何にスパイダーマンが停止させるか・・・なのですが、この場面のスピード感、緊迫感は映像でしか表現できないだろう。このシーンの撮影だけで1ヶ月かかったそうだが(邦画じゃありえない)、なんと脚本にはなかった場面(驚)!!カット割りを含めてひとり考えていたライミが「絵コンテ」と「アニマティックス(=簡単なCGで作成する動く絵コンテ)」を作らせてスタッフと意思統一、撮影に臨んだという。凄いぞ、ライミ!

 製作開始当初はギャラの件でモメたマグワイアを降ろす動き(=結局、何とかおさまったが。にしても1作目をきっかけに交際したキルスティンと、この時点で破局していたりとマグワイアも結構ヤルことヤッてますな)があったりと色々あった「2」ですが、前作以上の評価を勝ち得ることとなった。筆者も「2」が一番好きかもしれない^^

 

 そして3年ぶりに公開された第3弾「スパイダーマン3」(’07)。製作費に映画史上最高の3億ドルがかけられた「大団円の巻」!「1」とリンクする部分が多いので、いきなり「3」から観るのはやめましょう^^

 正式につきあい始めたピーターとMJ。スパイダーマンニューヨーク市民の人気者となった彼はルンルン気分(死語)なものの、かたやブロードウェイの舞台に立ったMJは演技を酷評されてブルー。そんな中、ハリーは父の仇として自ら「ニュー・ゴブリン」に変身してピーターをつけ狙うわ、素粒子実験に巻き込まれた脱獄囚が「サンドマン(砂男)」になって現金輸送車を襲撃するわでヒーロー稼業は相変わらず。そんなある日、警察から「伯父殺しの真犯人」を教わったピーターの心に怒りと憎しみが燃え上がる。そんな彼に宇宙から来た不定形生物「ヴェノム」の影が忍び寄る・・・。

 ポスターで御馴染みの「黒いスパイダーマン」は、ヴェノムがスパイダーマンの衣装に寄生した姿なんですね^^この生物に取り付かれると「怒り」の感情が増幅されるので、ピーターが暗黒面(ダークサイド)に落ちた姿がみられます(何故かフェロモン出まくりでモテモテになるピーター。で、調子こいて踊りながら街を歩くと:爆笑)。

 敵キャラ3人に加えて「ピーターとMJ、ハリーの三角関係」、「伯父殺しの真相」そして原作ファンには御馴染みの女性キャラ:グウェン・ステーシー(扮するのはブライス・ダラス・ハワード)がようやく登場。多彩な要素を巧く取り入れてさばいています。当初は複雑なドラマなので2部作にしようとも考えられたそうだが・・・1本にまとまって良かった良かった(危うく「ハリー・ポッター」最終章の2部作みたいになるところだったぜい)^^
 原作ではピーターはMJだけでなくグウェンと交際していたりと重要な役なんだけど(=「1」でも出演が検討された)ライミの好みで「MJ一筋」に変えられた(笑)。「1」のラストなんて原作ではMJじゃなくて、本当はグウェンの役なんだけど・・・まぁ、いいか。

 今作で終了の予定だったので、随所に散りばめられた戦いはシチュエーションも凝ってるし、迫力あり(カメラワークも流麗でライミが監督として成長した証)。特にラストは怪人4人が集まっての大バトルを展開!「サンドマン」なんて巨大化して「キングコング」そっくりになり、若干「ハムナプトラ」っぽいけど(笑)。
 勿論、全てのことに<決着>がつけられますが・・・いかようにも続きは作れますからねぇ(原作では「3」に出てきた大学の先生も後に「トカゲ怪人リザード」になる)。非常にクオリティーの高いシリーズだし(アメコミ映画の「ボーン」シリーズといった趣)トビーもキルスティンも「ライミが監督なら4に出る」と発言しているので、どうせやるなら「4」の監督も是非ライミで宜しく!勿論、レギュラーとして毎回チラリと顔を出してる原作者スタン・リー(「超人ハルク」や「キャプテン・アメリカ」、「デアデビル」もこの御仁)とライミの盟友ブルース・キャンベルも引き続きね^^