其の184:漢(おとこ)たちの熱き心意気「300」

 日本通のアメコミ漫画家フランク・ミラー(かの「シン・シティ」の原作者でもある)。その彼のグラフィック・ノベル(文学的要素が強い大人向けコミック)の実写映画化が「300<スリーハンドレッド>」!100万のペルシャ軍を相手にスパルタ(古代ギリシャ都市国家。「スパルタ教育」の語源)の精鋭300人が挑む歴史大バトル映画!女、子供にゃわからない本当の漢(おとこ)の映画がここにある!!


 紀元前480年8月。ヘロドトスの歴史書にある南下を進めるペルシャの遠征軍とスパルタを中心とするギリシャ連合軍との間で行われた「テルモピュライの戦い」が描かれる。数で圧倒的に不利な状況のなか、スパルタ軍は険しい山が迫る海沿いの土地・テルモピュライ(道幅が狭い)でペルシャ軍を向かえ、3日間に渡って大軍の侵攻を阻止したとされる。


 マヤ文明を舞台としたメル・ギブソン監督作「アポカリプト」同様、欧州で公開されると「史実と異なるデタラメ映画!」等とクレームがつきましたが(リアルに言えばスパルタ軍がパンツはいてるのも嘘。当時は全裸で戦ったわけだが、それは映像にできんだろう:笑)古代史に題材をとった<男の心意気と闘い>を描いた映画としてみれば十分楽しめます。勿論、原作者ミラーも監督ザック・スナイダーダッシュするゾンビが出てくる「ドーン・オブ・ザ・デッド」の人)も「史実に忠実」であることは毛頭意識していない。あくまで「原作に忠実」が目的で制作されているのだから。


 ミラー本人がロバート・ロドリゲスと共同監督した「シン・シティ」もキャラ設定や構図に至るまで「原作に忠実」に映像化されたが(ミラーはかつて「ロボコップ2」ほかで脚本を書いたものの、徹底的に改変されたため大のハリウッド嫌い。そのため「シン・シティ」までは自作の映画化のオファーは全て断っていた)この「300<スリーハンドレッド>」もやり方は全く同じ!原作漫画を最大限意識した映像(構図や色彩)にバーチャルセットでのスタジオ撮影(屋外で撮影さえたのは僅かに1カットのみ)・・・。
 予算ほかの問題もあったのだろうが、製作総指揮を兼ねたミラーはこの方法でしか映画化を承諾しなかったであろうし、この「シン・シティ方式」が今作でも有効だったことは完成した作品を観れば一目瞭然であろう。


 ウルトラ軍事国家のスパルタ人役には大勢のムキムキ俳優(主にイギリス系)がキャスティングされていますが、中でも主人公・レオニダス王を演じたジェラルド・バトラー(「オペラ座の怪人」の怪人)は見事な肉体美を披露(筋トレの賜物)しています。もっとも撮影当初はマントにパンツ一丁だけの衣装は相当恥ずかしかったらしいが(笑)。
 そんな彼らが敵をバタバタと倒していくアクションは圧巻の一言!日本映画では余り記憶がない<集団VS集団の戦い>が観られます。スパルタ人は撤退や降伏をよしとしなかったので(最高の名誉は戦場で戦死すること)これぞ本当のリーサル・ウェポン(究極兵器)!ハナから負ける事がわかりながらも死を恐れず、仲間を守りながら笑って敵に挑んでいく!!ジョン・ウーの世界に限りなく近い。これで燃えない男子はいないだろう(笑)。


 ペルシャ軍の<生物兵器>として巨大なサイや象が出てきたり、大勢の人間が入り乱れての大戦闘シーンはちょっと「ロード・オブ・ザ・リング」を想起しますが迫力満点!三隅研次(「子連れ狼」ほか)の映画みたいに手足や首がすぱすぱ飛ぶし、少々エロい場面もあるので(大したことないけど)「R15指定」なのは残念ですが、健全な男子はもぐりこんででも劇場のスクリーンで観賞すべし!